「姉は碁は本当に一流。でもプライベートはだいぶ天然…というかポンコツ」囲碁・女流棋聖戦挑戦者決定戦で姉妹対決する上野愛咲美・梨紗がトークで前哨戦? 結婚観、好きな有名人…プライベートな質問をぶつけてみた

囲碁界注目の姉妹、上野愛咲美(あさみ)女流立葵杯・女流名人(22)と上野梨紗二段(17)が、女流棋聖戦挑戦者決定戦で12月14日に姉妹激突する。仲よし姉妹? バチバチのライバル? 互いの性格分析、結婚観などプライベートの話から、ふたりのふだんの関係性に迫る。
――おふたりの幼いころはどんな子どもだったのですか?上野愛咲美(以下、愛咲美) 妹は3歳くらいまで天使でしたよ。よく寝る子で、起きてるときはニコニコしてて。でも、4歳くらいで「イヤ」って言葉を覚えると、「やだやだ」って言っておかしくなっちゃった……(苦笑)。上野梨紗(以下、梨紗) おかしくなったって……(笑)。姉もけっこうやんちゃで落ち着きがなかったと聞いてます。姉が赤ちゃんのときに自転車の前カゴによく乗せられてたらしいんですが、すぐ立ち上がろうとするんですって。あるときなんて、その状態で歩行者に「チリンチリン」と叫んだこともあったみたいで(笑)。
上野愛咲美女流立葵杯・女流名人(左)と上野梨紗二段(右)
――(笑)。梨紗さんにとって愛咲美さんはどんなお姉さんですか?梨紗 囲碁は本当に一流です。でもプライベートはだいぶ天然……というかポンコツです。記憶力がとっても悪かったり、だいぶギャップがありますね。正直、私のほうが頭がいいかなって思います(笑)。愛咲美 妹も方向音痴ですよ。まぁ、確かに梨紗のほうが全体的なスペックは高い気がするけど……。梨紗 今でも姉は経験からいろいろアドバイスをしてくれるけど、基本的には同い年の友達みたいな感じですね。
囲碁以外の習いごとは「公文とバレエです。バレエのおかげで、私生活で健康的になりました」(梨紗) 「私はそのほかに水泳も一瞬だけ習いました」(愛咲美)
愛咲美 妹は基本、ツンツンしてはいるけど、私が手合いに負けたときだけはけっこう優しくて、“癒やしモード”になってくれます。そして、ふだんはかなり冷静できっちりタイプ。たとえば、夏休みの宿題も一日これだけやればいついつまでに終わる、とかしっかり計画できるんですよ。梨紗 反対に、姉は2学期の始業式前日に慌ててやるタイプですね。愛咲美 けっこう性格は違うよね。
――おふたりは実家で同じ部屋だそうですね。イヤではない?愛咲美 問題はそんなにありません。ケンカして険悪になっても、5分後には元に戻ってますから。梨紗 ケンカというか、どっちかの機嫌が悪いだけだからね。――今までで一番怒ったことは?愛咲美 梨紗は毎日怒ってる。「早く帰れ」とか「早く寝ろ」とかって。きっちりしすぎだから。梨紗 お姉ちゃんが自由すぎるんだよ。一緒に研究会に行くときだって、「〇時に出よう」って言っているのに、当たり前のように5分10分すぎちゃう。それで「早くしてよ!」って。愛咲美 そんな早く出る必要はないでしょ。梨紗 電車が遅れたらやばいじゃない。愛咲美 ダッシュすればいいじゃん。梨紗 私はダッシュがしたくないの。愛咲美 一度、梨紗が早めに家を出て、私がダッシュで追いかけたのに、全然待ってくれなかったことがあって、それで怒ったことがあったよね。梨紗 待つわけないだろって、こっちは思いますよね。
――何かほしいものはありますか?愛咲美 物欲がないから、ほしいものを募集中ですね。ただ、囲碁用に高いAIソフトを買ったことがあります。それが今まで一番高い買い物。ふたりで使うのですが、妹はお金を出す気もない。毎回毎回私のおごりで「なんで?」ってなるじゃないですか。それでしょっちゅう言い合いになります。梨紗 でも、ただの言い合いだから、お互い何も思ってないし、遺恨が残るみたいなことはないよね。愛咲美 まぁ、それはそうだけど。――結婚についてイメージしたりとかは?愛咲美・梨紗 えっ、結婚!?
「最近、棋士仲間でフットサルに行ってるんです」(梨紗)、「私もフットサルをやってます。それと棋士仲間10人くらいとバスケもやってます」(愛咲美)
――驚きすぎです(笑)。愛咲美 うーん……まだ予定はないですね。梨紗 きみは絶対予定ないでしょ。愛咲美 いや、あなたもでしょ! あなたこそないでしょ。でも30歳くらいまでにしたいかな。梨紗 じゃあ私は26歳で(笑)。――おふたりは5歳差なので、同じくらいの時期に結婚することになるかも……?愛咲美 それおもしろいね。一緒に結婚しようか。梨紗 えー、いやだ。
――そろそろ年末ですが、NHK紅白歌合戦はご覧になりますか?愛咲美・梨紗 見ます。愛咲美 ただ、全部は見られないので、たとえば20時くらいに誰々が出そうとなったら、それまでに詰碁を何問か解いて、終わったらテレビをつけるって感じですね。詰碁は碁の勉強のなかで時間が区切りやすいので。
「22歳ですが、プライベートでお酒はあまり飲みません。飲むとしても打ち上げでカシオレとか。負けて落ち込んだときにヤケ酒で日本酒を飲むようになるかもしれないけど(笑)」(愛咲美)
――好きな有名人は?愛咲美 神木隆之介さん。あとQuizKnock(伊沢拓司が代表を務めるクイズメディア・YouTuber)の人も好きです。梨紗 私もQuizKnockが好きです。けっこう好きな人が被るんですよね。知的な感じの人が好きです。愛咲美 そうそう。アスリートならサッカーの三苫薫選手。メンタルの保ち方に注目してます。梨紗 サッカー選手ってインタビューで努力しているのが伝わってくるので尊敬できますね。愛咲美 わかる! インタビューを見るのはけっこう好き。藤井聡太さんのインタビューを見るのも好きですね。
)「特に姉のことを誇らしいとは思ってなかったのですが、私が院生のときに姉がタイトルを獲って、『あれ? 私の姉、実はすごいんじゃないか』と思い始めました」(梨紗)
――藤井聡太さんといえば、先日、八冠を達成したことが大きな話題となりました。囲碁界でも井山裕太王座が七冠制覇を2度達成しています。いつかご自身も……という思いはありますか?愛咲美 同門の関(航太郞)くんが「天元」を獲っているから、私もまず七大タイトルを獲りたい……いや、獲ります。梨紗 えー愛咲美 それはそうでしょ。ライバルは同門の関くんと、広瀬(優一七段)くん。一緒に勉強してきたので、負けたくない。そこは男女関係ないですね。梨紗 昔はAIがなかったので、先輩に「これはこうだ」と言われれば、そう思い込んじゃうところがある。でも今はAIやネットがあるから平等に勉強ができて、あまり男女で差がつかないかな。
――2023年を振り返ってみてどうですか?愛咲美 (2連覇中だった)若鯉戦、獲られたの痛かった。しかも同門のライバル、広瀬くんに優勝されて……。梨紗 1回戦で私、広瀬くんと当たったんですよ。トーナメント表を見て「イヤだなあ」と思った。愛咲美 そう思う時点でもう負けてるよね(笑)。梨紗 いやいや、そんなつもりないし。愛咲美 そんなつもりなくても、気持ちが後手になっちゃってるから。
仲がいい棋士は茂呂有紗さん、徐文燕さん。あと、(藤沢)里菜先生、辻華ちゃん」(愛咲美)、「私は徐文燕ちゃんと三島響ちゃん」(梨紗)
――ケンカしないでください(笑)。愛咲美 あ、この程度の言い合いはしょっちゅうですよ(笑)。今年の個人的ニュースでいうと、女流名人と女流立葵杯で、里菜先生に勝てたこと。三番勝負のシリーズで勝てたことがかなり大きいですね(※女流タイトル全制覇達成)。それに関くんと広瀬くんが獲っていた新人王にもなれました。(※囲碁界では女性初の快挙)梨紗 私は女流本因坊の挑戦者になったことです。負けてしまいましたが、手応えは感じました。愛咲美 あと、(上野愛咲美女流立葵杯・女流名人と梨紗二段がともに代表に選ばれていた中国・杭州の)アジア大会の囲碁女子団体で銅メダルを獲得したことがめっちゃニュースです。優勝した中国、準優勝の韓国を相手に手応えを感じました。準決勝(対中国)で(もうひとりの代表の藤沢)里菜先生がAI評価値90%の展開から負けてしまったときは、里菜先生が放心状態になって…。梨紗 でも3連敗は1回もなかったし、金メダル、いけたよね。
――来年の目標をお聞かせください。梨紗 とりあえず三段に昇段することを目指します。愛咲美 そんなのあたりまえのことなんですけど。梨紗 じゃあ勝ち星ランキング1位! それと最多対局も狙ってるし、世界戦がんばりたいですね。愛咲美 私はまず女流棋聖戦をがんばりたいです。そのためにはまず挑戦者決定戦で梨紗に勝たなくてはいけないんですけど。――その姉妹で直接対決する女流棋聖戦挑戦者決定戦については後編でおうかがいします。取材・文/内藤由起子集英社オンライン編集部ニュース班