「ロシアの航空兵力は限界」→NOっぽいぞ? 航空ショーで示した同国の「まだイケる」感とは

ロシアはウクライナ侵攻で思うように戦果を挙げられず、兵力の低下も伝えられていますが、力はまだあるようです。アクロバット・チーム「ロシアン・ナイツ」のドバイ航空ショーへの参加や、出展の様子から観測できました。
2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻で、ロシアは戦果を思うように挙げられておらず、苦戦しているとの見立てが報道されています。ただ、まだ航空兵力を誇示する力は残っていそうです。2023年11月に実施されたドバイ航空ショーで、筆者はそれを強く感じることができました。今回、そのポイントを紹介したいと思います。
「ロシアの航空兵力は限界」→NOっぽいぞ? 航空ショーで示し…の画像はこちら >> 「ロシアン・ナイツ」による展示飛行の様子(清水次郎撮影)。
海外の航空ショーへのアクロバット・チームの参加は親善の意味だけでなく、軍の操縦技量や兵力を誇示するものでもあります。ロシアは、ドバイ航空ショーが開かれたUAE(アラブ首長国連邦)と友好が保たれており、チーム派遣や出展がしやすい環境にありました。
こうしたことから、ドバイ航空ショーでは露空軍の展示飛行チーム「ロシアン・ナイツ」が航空ショーに参加。このほかにUAE空軍の「アル・フルサン」と伊空軍の「フレッチェ・トリコローリ」、中国の「八一飛行表演隊」も参加し、他国の展示飛行チームと、ロシアン・ナイツの飛びようを観察・比較できました。
ロシアン・ナイツを除く3チームの飛行は、カラフルなスモークを引き見事でした。フレッチェ・トリコローリのMB-339練習機は8機編隊で会場上空を縦横無尽かつ器用に、そして迫力たっぷりに飛び、八一飛行表演隊は、練習機に比べて大きく推力も高く、その分機動性に余裕があるJ-10戦闘機を使うため、フレッチェ・トリコローリとアル・フルサンよりも重厚な印象を受けました。
対し、6機で構成されたロシアン・ナイツは編隊の形をひし形と矢形の2つしか見せず、それらを繰り返すのみ。スモークも用いず、大柄なSu-35S戦闘機を使うこともあわせて終始、緩慢な印象を受けました。
ただし、これは国力の低下で訓練時間が減ったため、とは言えません。
というのも、ロシアン・ナイツの演技はチーム結成数年後の1990年代後半に見た時とほぼ同じだったからです。旧ソ連を想像させる“素っ気なさ”は、国力の低下による飛行時間の減少は関係せず、どちらかというと演出センスの違いと理解できました。
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「アル・フルサン」による展示飛行。ロシアン・ナイツのものよりはるかに華やかであることがわかる(清水次郎撮影)。
加えて、パビリオン(屋内展示場)内とその外の展示から、ロシアの余力を感じることができました。
パビリオン前には、IL-86-400M輸送機や消防用キットを備えたKa-32A11Mヘリが並び、Ka-52攻撃ヘリのデモ飛行もありました。ロシア国外では初公開となったX-69ステルス巡航ミサイルも置かれていました。パビリオン内でもバイキング中距離対空ミサイルシステムの模型や訓練用標的や滞空攻撃型の無人機が展示され、他国のメーカーや軍関係者が大勢訪れていました。
とはいえ、ロシアのパビリオンが設けられたのは会場の端。ショー期間中の契約成立もなかったと伝えられています。
これだけなら同国は力を誇示したとしても、空振りに終わったと言えるでしょう。しかし、会場のもう一方の端には、A-10攻撃機やKC-46A輸送機など米空軍機が展示されていました。主催国UAEは両国の展示物をできるだけ離すことで、米・露へ均等に配慮を示したのです。もし、ロシアに余力がなければ、UAEは米国も端に置くことまでしなかったでしょう。ここからもロシアがまだ力を失っていないと推測できました。
しかし、これはあくまでもショーのみでの観測です。ウクライナでの戦闘が消耗戦の様相を呈していることも合わせると、ロシアの出方や今後の戦局にまだまだ警戒が必要でしょう。