今年4月、人気ラーメンチェーン「夢を語れ 埼玉」の店主が、X(当時Twitter)で「不味い」「もう二度と行かない」などと酷評した利用客に対し、「クソ素人」などと罵倒して炎上。その後、グループ本部より屋号をはく奪された店主は、現在、「道の途中」と名前を変え、同じ場所でラーメンづくりと向き合っている。世間を騒がせた店主のその後を取材し、今にいたる思いや来年の抱負を聞いた。
「あの一件でいろんな方にご迷惑をおかけしてしまったので……。またラーメンと一から向き合いたいという思いで『道の途中』という名前にしました」そう語るのは、「夢を語れ 埼玉」の元店主で現「道の途中」店主の男性。「夢を語れ」グループといえば、元お笑い芸人の西岡津世志氏が代表を務め、国内のみならず海外にも展開する人気ラーメンチェーンだ。
「夢を語れ 埼玉」は「道の途中」と改名し、現在も営業中
「夢を語れ 埼玉」の元店主は今年4月21日ごろ、利用客の「不味い」「もう二度と行かない」というツイートに対し、《コールの時に「にんにくなし」って言われた時点で、クソ素人が来たなと思ってたんですけど案の定だったので、そもそもこういう輩が入って来ない店を目指したいです》《もちろんもう二度と来ないでください!お残しに募金を頂いてるのですが、不快だったので声もかけず、ありがとうございましたも意識的に省略しました》などとリプライし、真っ向から応戦。これがネットで大きな注目を集めると、店主に非難が殺到。24日には《この度は私の不適切な発言により該当される方に限らず関心を寄せてくださるたくさんの方に不快な思いをさせたことをお詫び申し上げます》と謝罪するも、事態は収まらず。「夢を語れ」グループから翌26日の営業をもって屋号を外すよう言われ、「夢を語れ 埼玉」としての営業を終了させられていた。同グループ本部は、当時の取材にこう答えていた。「当グループ店主の不適切な発言により、不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありませんでした。店主には来店してくださってるお客さまに対する考え方が間違ってると指摘し、指導と厳重注意をしております。これまでもSNSでの発言をふくめ再三注意していたこともあり、『夢を語れ』の屋号は外させ、グループから除名といたしました。今後は、当グループの全店主に接客態度をはじめ研修・指導を徹底いたします」
「道の途中」の定番メニュー「ラーメン」(900円)
炎上後も同店にたびたび足を運んでいるという近隣住民はこう語る。「あの一件のあと、店名が『道の途中』に変わりましたが、店主の態度もかなり変わりましたね。それまで不愛想だったのに、店から出るときも『ありがとうございます。またよろしくお願いします』と声をかけてくるようになりましたよ」炎上のきっかけとなったSNSとの付き合い方も見直したようで、店の公式Xのプロフィール欄には「営業情報だけ発信します」「エゴサ(エゴサーチ)出来ない身体になりました」などと記載されている。しかし、「本当に反省しているのか」と首をひねるのは別の近隣住民だ。
「騒動前には店舗ドア付近に『来店を歓迎しない人』として『Googleに1つ星の評価をしがちな人』『テロリスト』『SNSやブログ等にネガティブな感想を投稿しがちな人』などと書かれた張り紙が貼ってありましたが、炎上後にはがされました。しかし、現在はそれが復活したうえに、『SOS しくじっただけ先生』という、例の炎上をネタにしているような張り紙も追加されて、見ていて心配になりますね」
「来店を(それほど)歓迎しない人」の張り紙が復活
12月某日、閉店間際の店を訪れると他に客はいなかった。記者が声をかけると、冒頭のような反省の弁と新店名の由来を語ってくれた。――あの一件から7ヶ月が経ちましたが、客足は戻りましたか?「いや、全然です……。出前館の取り扱いも始めたのですが、以前の売り上げには到底およびません。幸いなことに、常連の方たちからは『がんばってね』と声をかけてもらえていて、それを励みにがんばっています」――店の前には「SOS しくじっただけ先生」という貼り紙もありますが、これはどういった意図で貼ったのですか?「まぁ、あの一件でいろいろとやらかしてしまったので……。だったら、せめて自虐でもして前を向くしかないのかなと思って貼りました。おかげさまで、あの炎上をきっかけにYouTuberの方たちには来てもらえるようになりましたが、客足はなかなか戻ってこず……という感じで」
この張り紙には自虐の意味が込められているという
――店のXのプロフィール欄には「営業情報だけ発信します」「エゴサできない身体になりました」などと記されています。これは戒めで書かれたのですか?「そうですね。もともとXがきっかけで、あの騒動が起きて炎上したので……。そうした失敗は二度と繰り返さないためにも、今は店の告知しかしていませんし、メディアの取材もすべてお断りさせてもらってます」――来年の抱負について教えてください。「うーん……やっぱり来年こそ、以前のようにお店を繁盛させたいですね。そのために努力あるのみです。あと、来年2月にさいたま市で行なわれるフルマラソンにも出場する予定なので、そこにも力を入れていきたい」一度は転倒したラーメン道という険しき道。今の思いを忘れずに、フルマラソンのように一歩一歩ゴールを目指して進むしかないだろう。