北朝鮮による日本海へのミサイル発射が相次いでいる。
18日夕に大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発が、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下。20日朝には短距離弾道ミサイル2発がそれぞれEEZの外側に落とされた。
ミサイル発射は米韓両国が3月に予定している大規模な合同軍事演習に反発したものとみられる。北朝鮮外務省は「実行するなら、持続的で前例のない強力な対応に直面する」との談話を発表していた。
特に、昨年11月に続くEEZ内への落下は、付近で操業する漁業関係者の命を危険にさらし深刻だ。
威嚇の範囲を超える暴挙であり、国連安全保障理事会の決議にも違反している。断じて許されるものではない。
20日の2発は「超大型放射砲(多連装ロケット砲)」だった。北朝鮮が韓国全域を攻撃でき、戦術核搭載を可能とする兵器である。
北朝鮮の報道は、米韓が19日にB1B戦略爆撃機などを動員した合同空中訓練を行ったことに対し、「軍事的緊張を高めている」と非難。2発の発射が訓練に反発したものだったと示唆した。
北朝鮮政府も発射後に異例の談話を表明し、今後、日本列島上空を越え太平洋に向けた弾道ミサイル発射を警告している。
大規模な合同軍事演習や、日米韓の軍事的圧力が、北朝鮮を刺激しているのは明らかだ。
軍事に軍事で対抗する状況がエスカレートしている。
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事態を受け、岸田文雄首相は、国連安保理の招集を呼びかけた。日本時間の21日午前に緊急会合が開かれる予定だ。
しかし、国際社会は北朝鮮に対して一致した対応を取れない状況が続いている。
昨年、米国が安保理に提案した新たな制裁決議は、ロシアと中国が拒否権を行使し否決された。
大国の不協和音が、北朝鮮の強硬姿勢につながっている恐れがある。
北朝鮮、韓国、日本、中国、米国、ロシアの6カ国が参加して北朝鮮の核問題を外交的に解決するための枠組み「6カ国協議」も2008年を最後に開かれていない。
その間に北朝鮮は着々と核やミサイルの性能を強化してきた。
朝鮮労働党の金正恩(キムジョンウン)総書記は昨年末、戦術核兵器を大量生産し、核弾頭の保有量を「幾何級数的」に増やすと表明した。
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北朝鮮への対抗姿勢を強める韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は、米国の核の傘だけでなく、自前の核保有の可能性についても言及する。
世界の核依存度は高まり、危機は深まるばかりである。
もはや、互いに軍事的対抗を強めるだけでは、状況改善は極めて難しい。
打開するには、閉ざされてしまった北朝鮮との対話の道を再び探るほかにはないだろう。日米韓の緊密な連携はそのためにあるべきだ。
まずは、北朝鮮に影響力がある中国との対話を始めることが重要だ。