お味噌汁や冷奴など、日頃なにげなく口にしているかつお節。実は、いくつかの種類があることをご存じでしょうか。
かつお節の種類と上手な選び方について、江戸時代から続くかつお節の老舗「株式会社にんべん(以下にんべん)」に問い合わせたところ、それぞれの特長を知ることで料理の味わいをグッと引き立てられることが分かりました。
「かつお節は製造工程の違いで『荒節(あらぶし)』と『枯節(かれぶし)』の2種類に分かれる」と、にんべんの担当者さん。
「かつおの身を煮て、燻製と休憩を幾度も繰り返したものを『荒節』、荒節の表面を削ってカビ付けと天日干しをほどこしたものを『枯節』と呼びます。
荒節には燻しの香ばしさとかつおのしっかりとした旨みが、枯節はすっきりとした上品な香りとまろやかな旨みが感じられるのが、味わいの特長です。
また、枯節のなかでもカビ付けと天日干しの回数を増やして仕上げたものは『本枯節』や『本枯かつお節』と呼ばれ、かつお節の最上級品として位置付けられています」
削り節になってしまうと見分けがつきにくくなる両者ですが、誰でも簡単に見分ける方法があるとのこと。それが、品物に記載されている食品一括表示です。
「原材料名に注目すると、荒節には『かつおのふし』、枯節には『かつおのかれぶし』と表示があります。
本枯節については『カビ付け回数や熟成期間などは各メーカーがそれぞれ定めている』のが実情ですが、本枯節の場合にはパッケージに『本枯節』または『本枯かつお節』などの記載があることがほとんどです」
※写真はイメージ
かつお節選びで、もう1つ注目したいのが削りかたの違いです。
たとえば「花かつお」などでお馴染みの「花削り」は、身の繊維に沿って大工道具のかんなの要領で削られるため、一片が長く大きくなります。そのため、出汁取りのときに扱いやすいのが特長です。
同じく、繊維に沿ってスリットの入った刃で削る「細削り」や「糸削り」は、パックなどの小分け包装が容易で、小鉢などの繊細な盛り付けに向いているそうです。
一方、身の繊維に対して垂直に削る方法もあります。
「にんべんではこれを『ソフト削り』と呼んでいます。繊維を断ち切る方向に薄く削るため口溶けがよく、トッピングに最適です。メーカーによっては『横削り』や『帯削り』と呼ぶこともあるようです」
また、一度削ったかつお節をさらに細かく砕いた「砕片削り」は、かつお節が毛羽立つような構造になるので調味料などをしっかりキャッチするのが特長。「汁持ち」がよく、おにぎりの具などに最適なのだそう。
「まるでジャーキーのような厚みが印象的な『厚削り』は、濃い出汁をとるのに適している削り節です。薄削りに比べて嵩張らないのがいいところで、しっかりと煮出すことで旨みの強い出汁を取ることができます」
「厚削り」は寸胴鍋で多めの出汁をとるのに適しているため、そば屋さんなどの飲食店で使われることが多いようですが、もちろん、ご家庭で愛用される人もいます。厚削りの上手な使い方はにんべんの公式サイトをチェックしてみてください。
料理によって多少の向き不向きはあるものの、「基本的にかつお節の使い方は自由だ」というのがにんべんの担当者さんの意見です。
淡くて上品なお吸い物には枯節、しっかりとした味付けの煮物には荒節といった選び方が主流とされていますが、家庭の味に正解はありません。味の好みに合わせて、まずはお気に入りの種類を見つけてみてはいかがでしょうか。
[文・構成/grape編集部]