忘年会で揉めがちな『唐揚げにレモン問題』 日本唐揚協会に「誰が始めたのか」を聞いてみた

宴会に出てくる唐揚げに「勝手にレモンをかけるのはどうなの?」といった議論がされることがあります。
現在では当たり前の食べ方である『唐揚げにレモン』ですが、日本で唐揚げにレモンが添えられるようになったのはいつなのでしょうか。
『唐揚げにレモン』の謎について、一般社団法人日本唐揚協会の、やすひさてっぺい会長に取材しました。
――なぜ唐揚げにレモンを添えるというスタイルが広まったのか?
『唐揚げにレモン』の話の前に、唐揚げは最近一般的になった料理ということを知っておいてください。
実は、唐揚げは戦後、それも1970年代以降に一般的になった料理です。
そもそも日本で獣肉を食べる習慣が一般的になったのは明治以降です。江戸時代も『さくら』『ぼたん』などの符丁を使って食べられていましたが、それはイノシシなどの獣肉であって鶏ではありません。
鶏は卵を産んでくれる大事な生き物で、牛や豚よりも肉が食べられない一種の高級品でした。
明治以降には西洋レストランができて、例えば東京では、レストラン『三笠』が1932年に『若鶏の唐揚げ』を提供しましたが、これは高級品。一般的な料理ではなかったのです。
戦後になって、ブロイラーがアメリカ合衆国から入ってきて養鶏が広く行われるようになりますが、それでも唐揚げは一般的な料理ではありませんでした。養鶏が盛んに行われた大分県などは別ですが。
ちなみに、『三笠』が提供した唐揚げが、日本初の『外食メニューとしての鶏の唐揚げ』とされているそうです。
※写真はイメージ
――大分県が唐揚げで有名なのは歴史的な経緯がある?
そうです。養鶏が盛んだったので、鶏を食材として扱うことが一般的になったのです。
もっとも、その大分県でも北部は『唐揚げ』、中央部は『とり天』と違いが生じました。ですので、大分県などの一部地域を除けば、唐揚げは一般的な料理ではありませんでした。
――唐揚げはどうやって一般的になった?
唐揚げが一般的な料理になったのは1970年代中盤以降です。まず、家庭でおなじみの料理になりました。
それには日清製粉の『から揚げ粉』が大きな役割を果たしています。1974年に発売された『から揚げ粉』は画期的な製品でした。
それまでは、醤油やみりんに漬けてから衣を付けていましたが、『から揚げ粉』を付けるだけで揚げられるようになったのです。
漬け込みの手間がなくなったことで、唐揚げは爆発的に普及しました。
家庭で一般的なメニューになり、唐揚げの認知度も飛躍的に向上しました。
唐揚げがお弁当の定番メニューになったのもこの頃からです。唐揚げが家庭で一般的なメニューになって、外食でも唐揚げが提供されることが増えました。
ファミリーレストランでも1970年代から普及を始めました。
『ファミリーレストランすかいらーく』の1号店が登場したのは1970年で、一般家庭の利用が増えたのは1970年代後半になってからといわれています。
――唐揚げにレモンを添えるのはレストラン発?
どこが発祥なのか、もう今となっては分からないのですが、どこかのレストランが唐揚げにレモンを添えて出し、それが広まったのだと考えられます。
家庭でレモンを添えて出すというのは考えにくく、それが全国に広まったとは思えないでしょう。
恐らく、彩りを考えてそのようなスタイルで提供したレストランが発祥だと思います。
いささか後知恵になりますが、唐揚げにレモンは非常によい組み合わせでした。
鶏肉、特に胸肉には、身体的な疲労感を軽減するといわれる、イミダペプチドが多く含まれており、レモンには疲労回復によいとされるクエン酸が含まれています。
唐揚げにレモンというのは、疲労回復にいいコンビだったわけです。
※写真はイメージ
普段当たり前のように食べている唐揚げ。歴史や食べ方を詳しく調べてみると、長い歴史があって面白いものですね。
宴会で唐揚げを食べる際には、本記事で紹介した豆知識を披露すると盛り上がるかもしれませんよ!
【やすひさてっぺい Profile】
一般社団法人日本唐揚協会会長兼理事長。ケーアールジー株式会社代表取締役。
1996年、学生時代にITで起業。WEB制作、アプリ制作、システム開発など多岐にわたる仕事のかたわら、唐揚げの魅力を伝え続け、2023年現在、20万人の会員を有する日本唐揚協会を創設。
唐揚げに関わるコンサルティングやITを活用したコミュニティ構築、協会構築の応援をし続けている。
[文/高橋モータース@dcp・構成/grape編集部]