「生後間もない赤ちゃんの遺体が焼かれ一部が炭化していた」逮捕・起訴された母はバツイチの“ホス狂”…借金、トンズラ、ウソで固めた半生…〈沼津・乳児遺体遺棄から7カ月〉

今年5月、静岡県沼津市の海岸で生後間もない女児の焼かれた遺体が見つかった事件で、静岡地検沼津支部は12月7日、殺人などの疑いで逮捕された父親を不起訴処分とした。いっぽうで、女児の母親は殺人や死体損壊などの罪で起訴されている。事件から7カ月、現場をあらためて取材した。
事件は5月27日の早朝、一部炭化している乳児の遺体を見つけた釣り人の通報で発覚した。司法解剖の結果によると、死産であった可能性は低く、顔や体の一部が燃やされていたという。遺体の発見時、現場からは煙があがり、火はまだくすぶった状態だった。地元の釣り人は事件当時、こう証言した。「釣り人が冬場とかの寒い時期に、流木やらを小さく燃やして暖をとることを”野焼き”というのですが、事件のあった27日はそんなに寒くなかったし、野焼きにしてはやたら大きい火だったので違和感はありました。白い煙も少しファーっと上がっていて、野焼きの残り火でボヤにでもなったのかなと思ってたんです」
遺体遺棄現場付近の海岸(撮影/集英社オンライン)
6月2日、死体損壊と死体遺棄の疑いで逮捕されたのは、同市に隣接する函南町生まれの住所不定、無職、浅沼かんな容疑者(当時24)と、乳児の父親の男性A(当時21)。Aは12月7日、不起訴となったが、浅沼容疑者は殺人や死体遺棄の疑いで起訴された。浅沼被告は、高校卒業後すぐに結婚して娘を出産。しかし離婚を機に沼津市内で一人暮らしを始め、単身で生活の拠点を大阪に移してからはホスト遊びにハマって周囲に”金の無心”をしていた。これについては集英社オンラインが♯1、♯2、♯3、♯4で報じてきた。借りた金は返さず、大阪にも居場所を失い、実家からも縁を切られた浅沼被告は、大阪時代の担当ホストだったAとともに、地元に近い沼津のネットカフェに居つくようになった。この店内の一室で赤ちゃんを産み、その2日後に海岸で火をつけたとみられている。同店のスタッフが当時の様子を振り返りながら安堵の息を漏らす。「2人がいた期間は半年以上とかなり長いのですが、私はレジ担当なので、5月にそういう事件があったと知ったときはバイトのみんなで『怖いね』と話していました。なかには『ここ(ネットカフェ)なくなるんじゃないの?』と心配してる子もいましたが、とくに客足に影響することはなく、今では誰も気にしている人はいません」
浅沼被告(本人SNSより)
沼津市内で飲食店を営む男性は当時をこう振り返る。「自分は近所のアパートに部屋を借りているのですが、僕の前の借主がかんなだったみたいで2年ほど前まで住んでいたようです。今年の2月に、大阪のホストが売り掛け(ツケ払い)の回収のためにウチに来たんですよ。だから管理会社に問い合わせたら、どうやらあの子、家賃を何カ月も滞納してて、ある日いきなり”蒸発”したらしくて。結局、お金は保証人のお母さんがすべて払ったそうですけど、なんて親不孝なヤツなんだと呆れました。この店にもかんなの同級生が来るのでいろいろ話は聞きましたが、『ただの陰キャ』『とにかく地味だった』と話してましたね」
おとなしかった浅沼被告
男性が言うように、浅沼被告を知る人たちは、異口同音に同じような印象をもらした。中学校時代は吹奏楽部に所属していて、目立たずに大人しく、彼氏がいた様子も誰一人として見たことなかったという。しかしいっぽうで、大阪時代の浅沼被告は自分を“盛る”ことに腐心していたようだ。ホスト繋がりで過去に友人関係にあったという20代の女性は、浅沼被告の印象についてこう語った。「高校時代にかなりヤンチャしていて、沼津のヤンキーグループに所属して『保険証を偽造して居酒屋に飲みに行ってた』とか『ドンキで万引きしまくっていた』とか、犯罪自慢が多かった。ドンキではiPhoneフィルムやケースのほかに、化粧品や靴も盗んでいたらしく『靴なんて店内で履いちゃえば絶対にバレないよ~』と言われたときは思わず引いちゃいましたね。あと『高校時代は彼氏が途絶えたことはない』とか『ヤンキーの先輩とばかり付き合ってた』とかモテ自慢も多かったですね。実家についても『両親は静岡で大きな会社を経営している』とよく話していました」
“盛る”ことが多かった浅沼被告(本人SNSより)
お酒が入るとうれしそうに”ホス狂アピール”もしていたという浅沼被告だが、いったい何で生計を立てていたのだろうか。「私と出会ったころは『今は脱毛サロンで店長やってるよ~』と言ってましたが、その前は一時期、梅田のホテヘルで働いていたそうです。でも、彼女を知っているホストがその脱毛サロンに確認しにいくと、どうやら3カ月だけバイトしていただけで店長というのはウソでした。あと、彼女は沼津にいたころからパパ活をしていたそうで、『(浅沼容疑者が住むマンションに)今日泊まりに行ってもいい?』と聞いても『ごめん、今日はパパが来るからダメ』と返信がくることも多かった。彼女はパパ活の定期のお客さんもいて、その人に家の鍵を借りているから『こっそり忍びこんで金目のモノを売り払おう。そのお金で一緒に東京に行こうよ!』と誘われたときはドン引きしましたね」
浅沼被告は大阪でパパ活相手の家に転がりこんでいた
浅沼被告の実家は静岡県東部にある家賃4万円代の2DKのアパートだ。幼いころに両親が離婚し、実母と義父のもとで育てられていた浅沼被告は、「義父が家族に乱暴しているのが気持ち悪いから実家を飛び出してきた」「私だけ(義父に)理不尽なことで怒られてきた」などと周囲に話していたという。
沼津警察署(撮影/集英社オンライン)
しかし同町の近隣住民に話を聞いても、そのような”ウワサ”は聞こえてこなかった。浅沼被告の母親と付き合いがあった近隣住民はこう語る。「以前まではかんなちゃんのお母さんと道ばたで会うと『こんにちは~』とか『今日暑いですね~』なんて気軽に話してましたけど、事件のあとはまったく見かけなくなりましたね。あそこまでニュースになったし、周りを気にして出歩きづらいんじゃないでしょうか。それこそかんなちゃんが小学生のころは、よく家族で一緒に車でお出かけする姿も見ていましたし、家族仲はいいんだろうなと思っていたんです。菓子折りを持っていったときは、『わざわざこんなモノまでありがとうございます~』と優しく対応してくれましたし。夫婦どちらも40代くらいの人で、元ヤンみたいな雰囲気も一切なく、大人しそうな人たちですよ」12月17日、自宅前で浅沼被告の義父に声をかけたのだが、Aが不起訴になったことには「まったく知らなかったです」と驚きつつも、それ以外については「すみません、その件については話せません」と答えるのみだった。師走の夜、浅沼被告は一人なにを考えているのか――。