《最近の日本のネットで「境界知能」という言葉が流行っているのはどうかと思う。知能が高い人が低い人にマウンティングしている構図だが、知能の多様性を考えたとき、単純な序列ではないし、高い知能の方がやるべきことは他にあると思う》
1月8日、Xでこう警鐘を鳴らしたのは脳科学者の茂木健一郎氏(61)。ポスト内で指摘した「境界知能」とは一般的に、知能指数(IQ)において「平均的」と「障がい」とされる部分の境目を指す(IQ71以上85未満)。日本人口の約14%を占めるといい、その人数は約1700万人にのぼると言われている。
茂木氏は「『境界知能』という言葉の流行に対する分析と対策」として、5つのポストを連投。冒頭の主張に続けて、“知能の高い人”についてこう推し量った。
《高い知能の方が、いらだって「境界知能」と言いたい気持ちの背後には、ネット上で議論していて論理が通じないとか、思考が稚拙という苛立ちがあるのだろう。一方で、考えが通じない人の側にも、人間的に、そして感性的にすぐれた点はたくさんある》
そんな茂木氏の私見に噛み付いたのは、実業家のホリエモンこと堀江貴文氏(51)。同日に茂木氏のポストを引用し、こう反論したのだった。
《クソリプがなんで発生するのかを可視化しただけなんですけどね。人間性とか別に関係ない話です。明らかなミスリードでも鷹揚に構えろとでも言うんですかね? 運動能力とかと違って外見や仕草は変わらないので扱いが難しいですよね》
堀江氏は「境界知能」という言葉について、《たぶん一番流行らせてるの私なんですが》と前置き。その上で、《これ可視化しないと多くのインフルエンサーとかが境界知能のクソリプに精神病んでしまったりするんですよ。そう言う人がいることを理解すれば少しは鷹揚になれますが。仕方ないんだな、と》と指摘した。
つまり見当外れや不快なコメントに対抗するため、「境界知能」であるユーザーを可視化する必要があるとの主張だ。
さらに堀江氏は、実業家の田端信太郎氏(49)が《境界知能と言うのやめても、実際に頭が弱くて生活に困っている人が、いなくなるわけではない》と綴った投稿をリポスト。田端氏は《 問題を解決するためには、対象を認識し、ラベルを貼るしかない。それは「難しいことを考えるのが苦手な人」とか優しく言っても、問題は何も変わらんわね》と、“区別”する必要性を訴えていた。
いっぽうの茂木氏は一連のポストのなかで、《ネット上で意見の対立があって、その一部の要因が「境界知能」と呼ばれることにあるように見えたとしても、それも人間界の多様性の一つとしておおらかに受け止めたらいいのではないかと思う》と提案。
別のポストでは、《たまたま高い知能を持っている人は、「境界知能」の人たちに対してマウンティングするよりは、その高い知能を活かして人類に貢献するようなことをする方が有意義なのではないかと思う》と呼びかけている。
協調を訴える茂木氏に対して、真っ向から反論した堀江氏。とはいえ、堀江氏が憤る“クソリプ”を送るユーザーが、必ずしも「境界知能」に該当するかどうかは判然としない。両者の異なる考え方に、Xでは様々な意見が寄せられている。
《知能の多様性ってなんだろ。正直ピンとこない》《境界知能で苦しんでる本人や、そういった子を持つ親もいるようなので、クソリプと境界知能を結びつけてしまうことで、その苦しみを助長させてしまう可能性があることには一定の配慮が必要かと思います》《堀江さんや茂木さんでもXのようなバーチャルな世界を気にしているのに驚きました。私達とステージが違うのに》