〈名古屋カラオケ店女性刺殺・同居女性も浴槽で〉逮捕された元No.1出張ホストが開いた店は90分3000円でも客は来ず、連絡手段は履歴の残らない“テレグラム”、施術モニターは元カノで50代…徹底した“ヒモ生活”の内実

名古屋駅近くのカラオケ店でAさん(20)を刺殺、同居していたBさん(30)殺害にも関わったとみられる静岡県出身の自称風俗業、曾我春暉容疑者(25)=昨年暮れに愛知県警がAさんの殺人容疑で送検済み=が立ち上げた出張ホスト店(女性向け風俗店・通称「女風」)「X」の営業内容の詳細が、元従業員の証言でわかった。また、従業員の「研修」と称してホストからマッサージなどを受けるモニターを、殺害された2女性が務めていた可能性も浮上、曾我容疑者が徹底的に「ヒモ」として女性たちをしゃぶり尽くしていた実態も明らかになった。
曾我容疑者は店長を務めていた岐阜県内のラーメン店を1年半ほど前に退職。その後は名古屋を拠点に全国展開している女風「H」に入店、初月に全国1位の売り上げを叩き出した。しかしその大半はAさんやBさんなど、交際関係にあった女性から貢がせる“色恋営業”だったことは、♯2や♯4で詳報した。それを自らの営業手腕と錯覚したのか、曾我容疑者は独立したものの失敗、多額の借金を抱えたことが犯行動機の一因とみられていたが、今回は「X」の元従業員の証言で一連の経緯も明らかになった。「殺人は絶対に犯してはならない過ちであり、真実を話すことが被害者へのせめてもの償いだと思います。それなのに店(X)側、つまり曾我の共同経営者に連絡をしたら自分も被害者のような態度をとったのです。これはもう、報道を通じて真実を伝えなければダメだと思いました」
「H」で一時期、No.1になった曾我容疑者(店舗HPより)
元従業員は証言する理由を明確に説明し、順を追って話を進めていった。「まず『X』は曾我が事実上代表のお店で間違いないです。本人もSNSのアカウントで代表と名乗ってました。前の職場である『H』で入店後すぐ人気が出たもんだから、お店に取り分を回したくなかったようで、3ヶ月で辞めて独立したんです。でも曾我の他に、どこかのホストクラブのオーナーが共同経営者をやっているんですよ。そして不可解なことに、この店では連絡を取る手段がすべて『テレグラム』だったんです。店の人間とのやり取りも、出張先のお客さんの住所の連絡とかもです。テレグラムは履歴の消えるチャットサービスで、犯罪にも使われるツールですし、なんとも怪しい店でした」
事件現場となったカラオケ店(撮影/集英社オンライン)
開店は2023年の6月9日だったという。「立ち上げ当初のスタッフは、曾我、『H』時代の同僚、共同経営者、そして内勤1名の計4人だったようです。僕は募集を見て8月に面接に行き、曾我本人からマッサージの講習を受けました。内容は指圧マッサージ、オイルマッサージ、それから性感マッサージに持っていくまでの流れを実際に女性に施術しながら、4時間ほど説明されました。その講習では自分のほかにもう1人の新人と、施術モニターの女の子がいたんですけど、ちょうど20歳くらいだったので、もしかしたらカラオケで被害に遭ったAさんなのかもしれません。20歳くらいで曾我の言うこと聞く女性なんて限られてますからね」
こうした「講習」を受けた後、何人か施術モニター(無料でプレイをする客)の相手をして、そこで「合格」がもらえるとセラピスト(出張ホスト)としてデビューという流れだったという。「そもそも施術モニターの集まりも悪かった。そのモニターのうちの1人も年齢や写真などの特徴から、浴槽に沈められて殺された女性Bさんと合致しています。私自身、被害女性と2人とも面識があったとすると、これはもうなおさら黙っているわけにはいかないと思ったんです」
自宅の浴槽内で遺体で発見されたBさん(知人提供)
セラピストの出勤方法は、シフトさえ出せば自宅など自由な場所で待機し、連絡を受ければ出張先に向かうシステムだったという。「時給とかは発生しなくて、90分1万5千円、120分2万円の料金体系で、一件こなせば概ね半分が自分に入る仕組みでした。裏オプションとかはなかったとは思います。隠れてやってる人はわからないですけど、『本番行為を行った場合は罰金』という契約書を書かされたんで。客がいないせいか、90分1万5千円のところを3000円に値下げするキャンペーンもやってたんですよ。最初はオープンしたてだから宣伝のためなのかなと思ってましたけど、事件が起きるまでずっとやってたんですよ。その場合、3000円はまるまる自分たちに入れてくれるらしいんですけど、そんなキャンペーンをしてもお客さんは入らなかったですね」
曾我容疑者(本人SNSより)
結局、この元従業員も昨年11月に「デビュー」にこぎつけたものの、実際の稼ぎはゼロだったという。「それから1人もお客さんの相手をしてないので給料は0円ですね。代表の曾我も、『H』時代の同僚も9月くらいからずっと休んでて、SNSの更新もなかったんで、自分だけでなくお店自体にお客さんは全然いなかったです。結局私が曾我と直接会ったのは8月の講習のときの一度だけです。ていねいに教えるいい人って感じでした。でもその後、すぐに病んでいたっていうのも曾我の元カノのCさんが言っていて、9月ごろから連絡が取れなくて心配していたそうです。実は事件のこともCさんからの連絡で知ったんですよ」
そのCさんは50歳ぐらいで、やはり施術モニターも務めていたという。「元カノだから曾我の本名も知っていて、報道ですぐにピンときたみたいです。僕に教えてくれたのが事件発生の翌日で、その瞬間に店のホームページを確認したらもう入れないようになってました。それでテレグラムで内勤スタッフに『代表の件どうなるんですか』って連絡したら『まだわからない、とりあえず取材とかは一切受けないで』と言われました。『代表が逮捕された』と説明があったのは、それからようやく1時間後のことです。事件を教えてくれたCさんは、多分本命とかではなくて色恋営業相手の1人だったんじゃないかとは思います。彼女は事業をしていて、曾我が新しく風俗をやるって聞いて『お互い支え合おう』って話になったそうです。でもその人はかなり精神的に強い人で、『以前付き合ってた人だから』と留置場に着替えや本の差し入れにも行っていて、『これからも寄り添っていく』とも言っていました」
Bさんの暮らしていたマンション(撮影/集英社オンライン)
ちなみにこの元従業員は給料が「ゼロ」だけでなく、受講料として支払った5万円も返ってきていないという。「自分に客がつかないとかじゃなく、店を勝手に閉鎖されてるんで、『お金を返してください』と頼みましたが、受講料だからとか、雇用契約は結んでないからという理由で断られました。もともと経営自体はお客さんがいなくてボロボロだったし、事務所とその隣の部屋を内勤者が住む場所として借りてたんで、曾我が自分で遊びに無駄遣いするというよりその辺が原因でお金に困っていた可能性はありますね」ひょんなことから飛び込んだ「女風」でとんでもない目に遭遇した元従業員だが、意外にも曾我容疑者の今後の行方を「見守りたい」と話す。「同じ店の人間が起こした事件ですし、被害者に会ったことがあるということになれば責任の一端はあると感じています。自分は『殺人犯の仲間』と罵られてもいいと思っているし、定期的に曾我の面会に行って結末まで見守りたいと思ってます。判決が死刑でも無期懲役でも最後まで自殺することなく、罪を償うように促したいと思ってます」
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班