〈クロネコヤマト“委託切り”騒動〉2万5000人超の契約終了から一転、「配置転換の打診」も当事者からは不満続出。「給料が減る」「ヤマトは何がしたいのかさっぱりわからない」

昨年6月、ヤマト運輸が日本郵便との協業を発表したのにともない、2024年度末には2万5000人の個人事業主の“委託切り”が行われるということで、集英社オンラインではその影響や当事者の声を2度にわたって報じてきた。だが、昨年11月からヤマト本社は急に態度を”軟化”させ、契約社員に対して「配置転換」の相談をしているという。現場で働く人々の声を集めた。
去年6月に締結されたヤマト運輸と日本郵便の基本合意書によると、小型荷物配送サービスの「クロネコDM便」は1月末に、「ネコポス」は3月末までに終了することとなった。「クロネコDM便」と「ネコポス」 のサービスはそれぞれ「クロネコゆうメール」「クロネコゆうパケット」というサービスが引き継ぎ、日本郵便の配送網で届けることになる。それにともない、それまでこれらの業務を委託していた「クロネコメイト」と呼ばれる2万5000人の個人事業主と、仕分けなどメール便業務に携わるパート社員(契約社員)数千人が契約を打ち切られることになった。そこで彼らの多くからあがる不満の声をこれまで集英社オンラインでは伝えてきた。
昨年6月にパート社員に配布された通達書(読者提供)
この協業はトラック運転手不足が心配される“2024年問題”を見据えて「持続可能な物流サービス」を推進するためとしているが、都内の営業所で働くクロネコメイトの50代女性は「ただのコストカットに決まってる」と怒りをあらわにする。「そもそも私のようなメイトは営業所の台車や、自前の自転車で配達している人がほとんどだから2024年問題とは関係ないんです。メイトは50~60代の人が多く、契約を切られたら転職するのも難しく、みんな『これからどうしよう……』と不安を口にしています」そんななか、現役のヤマト従業員から新たな情報提供があった。事態の混乱を受けてか、どうやらヤマト運輸が対応を変えているというのだ。首都圏の営業所で正社員ドライバーとして働く40代の男性はこう証言する。
(撮影/集英社オンライン)
「昨年の9月時点では、メイトさんやDM便仕分けのパートさんをすべて切ることになっており、彼らから配置転換の要望があっても聞き入れませんでした。それなのに11月に入って本社の対応が一変。所長自らメイトさんやパートさんに『宅急便の仕分けに移って仕事を続けませんか』と打診するようになったんです。他の営業所でも同じような提案があるようで、うちの支店長は『もしメディアなどで騒ぎが大きくなってなかったらこのような打診はなかっただろうし、ヤマトは何をしたいのかさっぱりわからない』と愚痴をこぼしてましたよ」
首都圏でメール便ドライバーとして働く50代の女性パート社員も同じ打診を受けたという。「11月に支店長に呼ばれて『もしよければ、荷物の仕分けか受付業務に移ってもらえないか』と。理由を聞いても、『上からの指示なので……』と話すのみで支店長もよくわかっていない様子でした。私以外のパート社員もみんな配置転換の相談があったみたいで、一様に驚いていました」これは一見、クロネコメイトやパート社員にとっては朗報に聞こえるが、実はそうでもないらしい。女性ドライバーは続ける。
(撮影/集英社オンライン)
「配置転換にあたって、これまで1日7時間労働のシフトだったのですが、5時間に短縮するのが条件とのことでした。たとえ1日2時間の短縮でも、月給にしたらかなり収入が減ってしまいますし、そもそも仕分けや受付も未経験。またイチから仕事を覚えなくてはいけないのかと思うと憂鬱ですね。支店長も『これからヤマトはどうなるのかね、俺たちもいつ切られるかわからないよ』とため息をついていました」前出の40代の男性ドライバーも「メール便の仕分けは小物荷物なので割合として多い50~60代のパートさんや女性でもこなせたけど、宅急便の仕分けは重い荷物もまわってくるし、負担が大きくなってしまうのでは」と心配する。また、ヤマト運輸は今回の契約終了にともない、個人事業主には1人あたり3~7万円の「謝礼金」、パート社員には、基本給3ヶ月分相当の「慰労金」を支払うとしている。去年10月には、契約終了の対象となった従業員に向けた転職支援サイトを開設したという。しかし、この転職支援サイトは都心に近いエリアなら他社の事務やお弁当の配達といった仕事の斡旋もあるが、市街地から離れた場所に住む前述の50代・女性ドライバーはこう吐き捨てる。
クロネコヤマトの営業所(撮影/集英社オンライン)
「転職サイトは正直言って使いモノになりませんでした。試しにサイトをのぞいてみても、私の住んでいるような田舎じゃDM便やネコポスを請け負った日本郵便の求人ばかり。これじゃなんのための協業で、なんのための委託・パート切りかわからない。しかも、日本郵便の求人はヤマトに比べて労働条件の融通がきかない。だからヤマトを辞める人は謝礼金や慰労金で食いつないで転職活動しなくちゃいけないのに、まさか転職サイトがあそこまで役に立たないとは……」ヤマトを続けるべきか、それとも転職すべきか。契約を切られるクロネコメイトやパート社員は苦渋の選択を迫られている。後編では、ヤマト運輸の正社員の本音に迫った。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班