死者の「精子採取」が裁判で認められ物議 高齢女性が亡夫との子を求め…

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オーストラリアの裁判所が、死亡した夫の精子採取を求めていた妻に対し、許可する判決を下した。『ABC News』『The Guardian』などが伝えている。

2023年12月17日朝、西オーストラリア州在住の女性(62、以下妻)は、夫(61)が亡くなっているのを発見。死因は明かされていないが、「急死」だった。
夫妻は、39年連れ添ったおしどり夫婦として知られていた。しかし娘(当時29)は2013年に釣り旅行に出かけた際の事故で死亡、息子(当時30)は2019年に交通事故に遭って死亡したと伝えられている。
娘と息子を亡くして以来、夫妻は再び子供を持ちたいと考えていた。そこで妊娠の可能性を探るため病院で検査を受けたが、妻の妊娠はほぼ不可能という結果に。一方、夫の精子は体外受精に適した状態ということが分かった。

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結果を受けて夫の精子を使った代理出産を模索していたところ、妻のいとこである20代の女性が、代理母になると申し出てくれた。卵子についても、いとこから提供を受ける予定だったとみられる。
ところが、夫妻の前に法律の壁が立ちはだかった。その女性はフィリピン在住なのだが、同国内で代理出産する場合、依頼者の夫妻が同国に一定期間住む必要がある。夫妻はその条件を満たしていなかったそうだ。
そうこうしているうちに夫が急死。夫の精子で代理出産を予定していた妻には、切羽詰まる事態になってしまった。妻は病院の担当者に亡き夫の精子採取をお願いするも、拒否されたようだ。

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夫妻の住む西オーストラリア州では、精子などを含む遺体の一部採取は、医学目的に限るという規定がある。他にも死者の精子を利用した妊活自体が、法的に禁止されている事情もある。
夫が死亡した日の夕方、妻は夫の精子採取の許可を求め、緊急案件として裁判所に申し立てを行った。翌日に審理が開かれ、裁判官は「亡き夫が拒否するとは思えない」として精子採取を許可した。
続けて、「本件は精子採取に限り認めるが、利用を許可するものではありません」と説明し、採取した精子を使うためには新たな訴訟を提起して、法改正を求める必要があるとした。

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夫妻のニュースが報じられると、ネット上では「子供を2人とも亡くして夫も死去。すべてを失った女性が夫の子だけでも、と願う気持ちは痛いほどわかる」「子供が欲しいなら叶えられるべき。頑張ってほしい」などと、妻に同情的な声が集まった。
一方で、「60代で子育ては普通に厳しい」「女性が健康でいる保証はない。父親もいない。子供がかわいそう」「一人になりたくない女性のエゴ。死者の精子採取を規制するのはある意味妥当で、認められるべきではない」といった、批判的な声もあがっている。