〈2ショット写真入手〉積水ハウス55憶円詐欺「地面師」もハマったモラレス容疑者(30)。共犯の男は親戚? 元夫の父親は「連続強盗犯」の仲間? 絡み合うフィリピン犯罪者ネットワーク〈足立区・床下夫婦遺体〉

東京都足立区の民家の床下に住民の50代夫婦の死体を遺棄した死体遺棄容疑で警視庁に逮捕されたフィリピン国籍のモラレス・ヘイゼル・アン・バギシャ容疑者(30)がかつて働いていた東京・浅草のフィリピンパブに、積水ハウスから架空の土地取引代金55億円余りを騙し取った地面師グループの首魁、カミンスカス(旧姓・小山)操受刑囚(64)=詐欺罪などで服役中=が通いつめていたことがわかった。また、同店のオーナーは昨年、「連続強盗団」として全国を震撼させた一連の事件で実行役に犯行資金を提供した疑いで強盗致傷などの容疑の共犯として逮捕された男(65・後に不起訴)だったことも判明した。
♯2で詳しく報じたように、モラレス容疑者は2017年ごろ浅草の「G」というフィリピンパブで「アヤ」という源氏名で働き、売上ナンバーワンになるなど人気ホステスとして知られていた。カミンスカス受刑囚の友人A氏は、記者がショートカットのモラレス容疑者の画像を見せると、こう証言した。「この写真は『アヤ』で間違いないよ。アヤは小山(カミンスカス)のおかげでGでもナンバーワンになれたんだから。小山はショートカットが好きで、アヤもそのために一時期は髪を短くしていた。小山は他にも何人もGに女がいて、その子たちは『小山ガールズ』と呼ばれていた。彼女たちは特徴に共通点があるから、見たらすぐにわかったよ」
カミンスカス受刑囚(左)とモラレス容疑者
「小山ガールズ」は全員がショートカットで、お揃いのネックレスを装着していたという。A氏が続ける。「小山がGで使った金はハンパなくて、総額2億円はくだらないと思う。小山が1週間も店にいけば1か月分の売り上げがまかなえたみたいだし、クリスマスともなればシャンパン120本入れてドンチャン騒ぎしてたね。そんなときは店のシャンパンがあっという間になくなって、店の連中が浅草中の酒屋やクラブを走り回ってシャンパンをかき集めていたのを覚えている」さらにこのGのオーナーは、千葉県大網白里市のリサイクルショップに男らが押し入り、店主に暴行を加えた強盗致傷・建造物侵入事件の共犯として昨年4月に逮捕された男だった(後に不起訴処分)。A氏はこのオーナーとモラレス容疑者との関係も熟知していた。「たしかアヤは店のオーナーの息子と偽装結婚していたよ。それで在留資格を得て日本に入国してたんだよ。まあ、子どもまで作っていたから偽装じゃなくて本当のオンナだったのかもしれないけど、そのあたりは俺もわかんないね。小山にしても、アヤに入れ込んでいた時期もあったけど、しょせんは遊びなわけだから、ちょっと冷めたら次の『小山ガールズ』のオンナに手を付けてたしね」また、A氏はモラレス容疑者が当時から金銭トラブルを抱えていたことも知っていた。モラレス容疑者は同僚や客から借金をした挙句、店の関係者と裁判沙汰になり、音信不通になって一時期、フィリピンに帰国していたという。
連続強盗団幹部の今村磨人被告
「誰と裁判をしていたのかまでは俺もよくわからないけど、多分、店の関係者じゃないかな。来日したときに約束していた金をくれなかったとかなんとか、よく愚痴ってたからね。ただ、アヤがフィリピンに帰ってから後のことはよくわからない。でもGは結局、小山のせいで警察に目を付けられて摘発されて、女の子も何人か捕まって強制送還された。そのときにはアヤはもういなかったから、後でまた日本に戻ってこれたんだろうな。アヤは小山と付き合ったことで金銭感覚がマヒして、金の使い方も元に戻らなかったんじゃないかな。一度、銀座で小山とアヤと3人でメシを食う機会があったんだけど、そのときもカルティエで買い物していたし、相当金もらっていたと思うよ」
積水ハウスがJ R山手線五反田駅近くの旅館の土地購入代金として、地面師グループに55億5000万円を騙し取られたのは2017年6月1日のことだ。それからほどなく浅草のフィリピンパブで、カミンスカス受刑囚が帝王のように振る舞い出したのを、地面師グループのメンバーも苦々しく思っていたようだ。グループの関係者だったB氏が取材に応えた。「小山といえばグループみんなから『宇宙人』と呼ばれるくらい発想がぶっ飛んでいて、リスクを顧みず突っ込んでいけるタイプだった。正直言って、積水ハウスの事件は小山なしには成立しなかっただろうし、その意味では彼の“手柄”といえるだろう。アイツは浅草のGには毎晩のように通って、50万、100万円とキャッシュで払ってた。だから俺は『お前、派手にやりすぎだ』と何度か注意してたんだ。ヤツはモラレスだけでなく店のママからも『会長ぉ』『会長さぁん』って呼ばれてたから『お前、いつから会長になったんだよ』って突っこんでやったけどな」
カミンスカス受刑囚(左)とモラレス容疑者
Gではアヤが“小山会長”にしなだれかかる様子がたびたび見られていた。地面師グループのメンバーのほとんどは銀座のクラブを愛用していたが、小山受刑囚は浅草をホームグラウンドとしていたという。「小山はなぜか浅草のGが好きで本当に毎晩通ってた。ヤツは明らかにガラが悪いから、自分でも銀座の雰囲気が肌に合わねーと思ったんじゃない? それにフィリピンの女はもてはやしてくれるし、それが居心地よかったんだと思う。小山はGのホステス3人くらいに浅草にマンション買って住まわせてたから、モラレスもそこに住んでたはずだよ」小山受刑囚が後に得た「カミンスカス」という名は、2018年に入籍したリトアニア人女性の姓で、外国人女性が好きなことはみんなが知っていたという。
また、今回の死体遺棄事件の共犯たるデラ・クルース・ブライアン・ジェファーソン・リシン容疑者(34)は、「アヤ」と親戚関係の可能性が浮上した。Gの元同僚が語る。「共犯の男性は直接知り合いではありませんが、SNSにアップされた写真やコメントを見ると2人は親戚だというようなことも書かれています。彼はYouTubeで『私はブライアンです。日本には出稼ぎにきました。ここに来る前は川口というところにいました。ここは新しく引っ越してきたところで、茨城というところです。ほら、部屋も広いでしょ? 外はこんな感じです』といったふうに自分のことを紹介しています」
デラ・クルース容疑者(本人SNSより)
モラレス容疑者とカミンスカス受刑者の関係についても、元同僚は詳しかった。「最初は月に1回ぐらいのペースでしたが、お店に来る回数が増えてからは信じられないお金の使い方をするようになりました。それこそ毎日のように来るようになって、この子も指名、あの子も指名と一度に5~6人の女の子を指名するようになりましたから。髪の毛が短い女の子が好きだと言って、指名する子にはクロムハーツのネックレスをプレゼントしていましたけど、他のお客さんが『形が違う、ニセモノだよ』と言っていました」はたして「アヤ」と「小山会長」は恋愛関係にあったのだろうか。「小山会長はいっぱいお金は使ってたけど。アヤが彼を好きだったということはないと思います。私もだけど、アヤもどちらかというと仕事のためにお酒を飲んでる感じに見えました。これは噂ですが、アヤがお金を欲していたのは恋人のため、男のためじゃないかってみんな言っています。フィリピン人はホストとかは行かないから、ホストではないと思います。でも何のためであっても事件を起こすのはいけないこと。悲しいことです」(元同僚)カミンスカス受刑者は逃亡先のフィリピン・マニラで捕縛され2019年1月、日本に送還。懲役11年の実刑判決が確定し、受刑中だ。フィリピンの収容施設から闇バイトで人を集め、強盗を指示した男が注目されるようになったのは昨年の1月。その1年後、今度は両事件関係者と接点を持つフィリピン人の女が、凶悪事件の容疑者として逮捕された。それぞれの事件に関連性はあるのか、それとも単なる偶然の巡り合わせなのか。千住署に特別捜査本部を設置した警視庁の捜査の行方が注目を集めそうだ。
モラレス容疑者(本人SNSより)
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班