[社説]ウクライナ侵攻1年 戦争終わらせる道探れ

ロシアによるウクライナ侵攻から24日で1年になる。戦争終結の気配はどこにもない。
プーチン大統領は21日の年次報告演説で「戦争を始めたのは西側」だと主張し、「ロシアはそれを止めようとして軍事力を行使している」と侵攻を正当化した。
国内向けの典型的な戦争プロパガンダである。
情報統制が徹底される中でロシア国内では、現状を「ロシア対欧米」の祖国防衛戦争だと位置付ける見方が広がりつつあるという。
だが、ロシアの軍事侵攻が国連憲章に違反する行為であることは明らかだ。
東部・南部4州の一方的な併合宣言についても、国連総会の緊急特別会合で、併合を無効とする決議が143カ国の賛成で採択されている。
この戦争は極端なまでに非対称的だ。
ロシア軍は、病院や学校、教会、集合住宅など、本来避けなければならない一般市民の生活基盤を破壊し尽くし、犠牲者は増え続けている。
両親を失い、理不尽にも家庭の幸福を奪われてしまった少年。結婚したばかりの夫をミサイル攻撃で亡くした妻。深刻な電力不足で市民は真冬に暗闇の中で寒さに耐えている。
1万数千人ともいわれるウクライナの子どもたちがロシアに連れ去られたことも明らかになっている。国際人道法では強制的な集団移送は戦争犯罪に当たる。
終わりの見えない戦争を終わらせるには、どうすればいいのか。どの国も出口戦略を示しきれないでいる。
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米国のバイデン大統領は20日ウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問し追加の軍事支援を行うと表明した。

ウクライナは欧米からの武器供与を前提に、徹底抗戦の構えを崩していない。
兵士の士気は高く、多くの国民がそれを支持し、戦争の勝利を望んでいる。
一方のロシアは、米国との新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を打ち出し、核をちらつかせて欧米を揺さぶる。核軍縮は遠のくばかりだ。
ウクライナにとって、ロシアによる東部・南部4州併合を追認する形で停戦に応じることは、到底できない。
交渉によって停戦を実現するためには、譲歩や妥協が必要になるが、戦闘の行く末が見えない現段階の交渉には双方とも消極的だ。
だが、住民犠牲の絶えない理不尽な戦争がいつまでも続いていいわけがない。
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停戦が実現せずウクライナが負けて戦争が終わるというケースは、なんとしても避けたい。
そのためにも、ウクライナにとどまっている人や避難してきた人々への生活支援を継続することが欠かせない。
日本はG7広島サミット(先進7カ国首脳会議)の議長国で、今後2年は国連安保理の非常任理事国でもある。
「国際政治の軍事化」(藤原帰一東大名誉教授)を助長するのではなく、被爆国の立ち位置にふさわしい新たな平和構想を打ち出す時だ。