対話とは互いの立場や意見の違いを理解し、そのずれを埋めていく目的で行うものだ。その先には解決への道筋が用意されていなければならない。 玉城デニー知事は、昨年12月の就任後に初来県した林芳正官房長官と会談した。 官房長官は沖縄基地負担軽減担当相を兼ねている。玉城知事と官房長官の公式会談は、昨年5月30日の松野博一氏以来だ。 名護市辺野古の新基地建設を巡り政府は昨年12月、代執行の強権を発動した。国と県の関係はかつてないほど厳しい局面にある。 会談で玉城知事は埋め立て工事の中止や問題解決に向けて対話の場を設けるよう求めたが、林官房長官はこれには応じなかった。 一方、玉城知事が普天間飛行場の危険性除去について「負担軽減推進会議」の早期開催を求めたことには、作業部会の開催方針を伝えたという。 推進会議(本会議)は2014年2月、当時の仲井真弘多知事らの要請で初回会合が開かれた。官房長官、防衛相、外相、沖縄担当相と知事、宜野湾市長が出席。以降これまでに5回開催されたが、19年を最後に4年以上開かれていない。 今回、林官房長官が開催方針を示した作業部会は、本会議の前段となる準備会合の位置付けだ。これまでに計13回開かれてきたが、本会議開催が見通せない中、実質的な負担軽減策を示せていない。■ ■ そもそも推進会議は、県や市が求める普天間の5年以内の運用停止と早期の危険性除去について話し合う場だった。 仲井真県政時代には3度開かれたものの、新基地建設に反対する翁長雄志知事の当選後は2年半近く中断された。対米交渉の跡も見えないまま19年2月とされた普天間の運用停止の期限を迎えた経緯がある。 その後、玉城県政下で開かれた会議では、新たな期限の設定を議論することを確認したが、政府は期限設定を困難視した。 歩み寄る姿勢が見えない中の作業部会開催方針は、沖縄と向き合っているという体裁を整え、世論の批判をかわす狙いがあるのではないかとみられても仕方ない。 新基地建設の工期は9年3カ月で、米軍への引き渡しにはそれから約3年かかるとされる。推進会議は、その間の普天間の危険性除去をどうするのかという議論を集中的にすべきだ。■ ■ 今回、宜野湾市役所屋上から普天間飛行場を視察した林官房長官は「市民生活に大きな影響を与えていると実感した」と述べた。 普天間移設の原点は、市街地の中心にあり「世界一危険」とされる飛行場の危険性除去にある。それをどう進めていくのか。解決策を見いだすための対話が必要だ。 政府は、普天間の負担軽減に向けた具体的な工程やスケジュールを提示すべきだ。期日を切り、県民の目に見える形の負担軽減策こそが求められる。