「屋根を瓦にしているから起きた災害と言われても否定できない」 何トンという瓦が屋根の一番高い所に 倒壊相次いだ古い住宅の共通点は? 能登半島地震

2024年1月1日午後4時10分。元旦の能登半島を襲った「令和6年能登半島地震」。マグニチュード7.6を記録したこの地震は、石川県・富山県両県に甚大な被害をもたらし、多くの家屋が倒壊しました。瓦屋根の家屋が多いこの地域は今、どうなっているのか現地を取材しました。
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震度7を観測した、石川県輪島市。瓦屋根の家が密集する黒島地区でも多くの家が倒壊しています。能登の瓦業者、中町利之さんによると、今回の地震では耐震補強がされていない古い瓦屋根の木造住宅が、とりわけ大きな被害を受けているといいます。
(中町かわら店・中町利之さん)「もっともっと軽い瓦があればいいんですけど、ないんだろうな…(瓦は)やっぱり重たいです」
CBC
50年以上前に建てられたままという住居兼納屋の建物は、瓦の大半がはがれています。屋根に雨漏り防止のブルーシートを張る応急修理には現在補助金が出されていて、中町さんはその作業を請け負っていました。足場を作る時間も費用もかけられない中、知り合いの業者に手伝ってもらい、はしご一つで屋根に上ってブルーシートを張っていきます。被災地一帯で不足しているブルーシートは、中町さんがSNSで呼びかけ、全国から届けてもらいました。
一軒の屋根を修繕するのに、3人がかりで4時間かかりました。あくまで応急処置ですが、雨風はしのげます。
(輪島市に住む・中前みよ子さん)「(本格的にどのような補修をするか)年なので金銭面を考えながら進めていきたい」この地震災害で、長年「瓦」を扱ってきた中町さんも一つの現実を突きつけられています。
(中町かわら店・中町利之さん)「ガルバリウム鋼板屋根は(瓦と比べて)軽いんですよ。見た感じ、他の家と比べても破損していない。瓦は1枚が2キログラムくらい。それが何千枚とのるわけなんです。ただ置いてあるだけの何トンという瓦が、屋根の一番高い所にあるんです」
強い揺れに対する、古い瓦屋根の危険性を見せつけた今回の地震。今は軽量なものや耐震性を上げた工法もありますが、中町さんからはこんな言葉が。
(中町かわら店・中町利之さん)「屋根を瓦にしているから起きた甚大な災害と言われても否定できない」
CBC
石川県七尾市の避難所には、家に住めなくなった約200人が身を寄せています。毎日、この避難所を訪れているのが、同じ市内に住む小梶崇さんです。自宅は無事でしたが、避難所内にある子ども支援のブースに3人の子どもを預けるところから1日が始まります。
(ボランティアで避難所を運営・小梶崇さん)「子ども支援カタリバ(運営団体)のおかげで、保育園と小学校はずっとお休みなので、預かってもらえると親も動けるので、すごく助かっている」
この避難所を運営するボランティアリーダーを務める小梶さんは、様々なアイデアで避難生活を少しでも快適にしようと工夫しています。例えば、仮設トイレ。仮設トイレで水を流すには常にタンクに水をためておく必要がありますが、前はボランティアがやっていたこの作業を避難者自らに任せるようにしました。
(小梶崇さん)「(以前は)ここに職員がずっと一日張り付いていた。トイレを使ったあと職員で(水をくんでいた)。これに人が取られるのはダメだし、みんなで協力しようとトイレの自治を始めた」
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地元でフィットネスクラブを経営する小梶さん。300人ほどの会員がいたプールは天井がはがれ、地下の配水管も故障。復旧のめどはたっていません。それでも、先週からは子ども向けに体操教室を再開させました。
(小梶崇さん)「ここだけ見たら日常に戻ってきたんかなと」避難生活でありながらも、教室に戻ってきた子どもは生き生きとした表情を見せます。
(七尾市に住む・葛西晴子さん)「学校が避難所になっていて、習い事も始まっていないのでここが始まるということで安心」子どもはできるようになった倒立を小梶さんの前でやってみせると、誇らしげな笑顔を浮かべます。
(小梶崇さん)「彼女らも一歩勇気出してやっているんで。こっちも勇気出してやらないと、できることが増えたってことは。がんばろう」
CBC
小梶さんは、フィットネスクラブで得た知見を避難所暮らしの人々への支援にも活かしています。避難所での暮らしが3週間を超える中で、高齢者も出来るだけ体を動かすべきだと考え、地元のエアロビック連盟と協力し、週に2回避難所で運動教室を開いています。時折、冗談でお年寄りを和ませながら、体操を行う小梶さん。参加者の顔にも、笑顔が浮かびます。
(小梶崇さん)「(断水で)あと2か月まだここにいらっしゃる可能性が高いと考えると、2か月体を動かさないと高齢者の転倒のリスクや、エコノミークラス症候群のリスクがもっと高まる。ただの運動教室ではなく、誰かと会話する、避難者同士のコミュニケーションで、メンタルのケアにつながる。引き続き、これを定期的に続けることが大事」
暖房が復旧している避難所では、桜の枝が季節外れの花を咲かせていました。復興の道筋がまだ見えない能登。そこには懸命に避難生活を乗り切ろうとする人々の姿がありました。
CBCテレビ「チャント!」1月24日放送より