経済同友会の規制改革委員会から、「なんちゃってライドシェアで終わらせないために」という刺激的な副題付きの意見書がでました。手渡されたのは河野担当相。デジタル改革で国交省を揺さぶります。
国土交通省物流・自動車局は、日本初となる仮称「自家用活用事業」制度についての議論を2024年2月7日から開始。この議論に先立ち経済同友会の間下直晃氏を委員長とする規制改革委員会は、日本版ライドシェアの本格導入に向けて「なんちゃってライドシェアで終わらせないために」という刺激的な副題付きの意見書を河野太郎デジタル担当相に手渡しました。
「なんちゃってライドシェアで終わらせるな」という“意見書”で…の画像はこちら >>タクシー運転手不足を背景に、日本版ライドシェアの議論が進む。写真はイメージ(画像:写真AC)。
2020年に配車アプリを利用したライドシェアを国内に速やかに導入すべきと提言した経済同友会・規制改革委員会は、旅客運送の中でもタクシー業界の規制改革が進まないことに危機感を募らせます。
「自家用旅客有償運送の活用拡大や公共の福祉の解釈変更といった短期的な対応だけでは、そもそもライドシェアと呼べるレベルの制度にはならない。これを制度化するための新法を制定すべきである」
ライドシェアの運用には配車アプリが必須と主張することから間下直晃委員長(ブイキューブ取締役会長CEO)は2月1日、河野太郎デジタル担当相に、新法制定を含む意見書を手渡しました。
根本にはタクシー運転手不足があり、必要な時にタクシーが利用できない。タクシー事業者が独占する旅客運送の規制を撤廃し、アプリケーションを作成するソリューション会社など他の事業者にも開放し、高まる交通需要に応えるべきだ、という問題意識があります。
タクシー運転者不足の解消に向けて、国土交通省も動きました。有償で他人を運ぶためには第2種免許を所持していることが必須ですが、自家用車でも有償運送ができる制度があります。それが「自家用旅客有償運送」という制度です。
自家用旅客有償運送は従来、地方自治体やNPO法人が地域住民や観光客のために運営する制度でしたが、運用主体をタクシー会社にも広げて事実上、2種免不要で一般ドライバーのパートタイム運転手を確保することを可能としました。また、自家用旅客有償運送の運賃はガソリン代などの実費に限定され、ボランティア要素が強かったのですが、「タクシー運賃の8割程度」まで引き上げることで実効性を高めました。
国交省はこの制度を拡大し、「自家用車活用事業」として4月からドライバー不足に備えることになりました。同制度を限定的に運用開始し、実施効果を検証しつつ6月から、配車アプリなどを活用するプラットフォーム事業者などタクシー事業者以外がライドシェア事業を行うことを位置付ける「日本版ランドシェア」について立法化も含めて議論する、と公表しています。
しかし、間下委員長は、対応の手ぬるさを指摘します。
「まったく海外と同じにする必要はないですが、(国交省の対応は)タクシーの規制緩和に過ぎず、無理があるんです。このままではタクシー会社が儲かるところでやるだけ、できないところではやらない。ライドシェア新法をちゃんと作らないと中途半端な形で終わる可能性がある。新法を成立させて、配車アプリを統一しないと全国的なライドシェアが機能しない」
規制改革委は、実現のスケジュールについても前倒しを求めています。
「この2月、3月から新法の検討をして、この秋の国会でこれを決めると。来年の4月から実現する。現状の対応から1年遅れでちゃんとしたライドシェアをやっていくことが必要だと考える。現状のままだと、なんちゃってライドシェアになってしまう可能性がたいへん高い」
意見書を受け取った河野太郎デジタル担当相は、配車アプリを使ったライドシェアを後押しします。
「移動の自由が制約されている地域が、全国津々浦々ある。これを解消するためにはなんでもいい。やれるものからどんどんやろう。いろいろな技術が出ているのに規制でサービスができないのはおかしい」
また、規制緩和の進捗の前倒しも求めました。
「今までは行政が考えに考え抜いて、これをやりますだったが、その手法はもう古くて、とりあえずできるものからやって月単位でもいいからやり方を変えようということでやっていきたい」
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「行政の考え抜いてやる手法は古い。月単位でもいいからやり方を変えよう」と話す河野太郎デジタル担当相(中島みなみ撮影)。
交通事故時の法的責任を運営管理主体に負わせることで、先行する海外ライドシェアとの違いを明確にするのが現時点での日本版ライドシェアの考え方です。一般ドライバーがパートタイムとはいえ、プロドライバーと同じ安心・安全を提供できるのか、という慎重論を打破することができるのか。規制改革議論の中身に注目です。