「誰も輪島をあきらめていない」 能登半島地震に向き合う28歳の輪島塗職人 仲間の作品を被災地から運び…ふるさと愛知で活動

「輪島塗(わじまぬり)」で有名な石川県輪島市の復興を後押ししたいと、いま名古屋で奮闘する輪島塗職人の女性がいます。
「誰も輪島をあきらめていない」 能登半島地震に向き合う28歳…の画像はこちら >>
CBC
桜の柄が浮かび上がる美しい漆黒のおわん、鮮やかな緑や朱のお箸…。石川県輪島市の伝統工芸・輪島塗の作品です。名古屋市西区のギャラリーで2月17日から展示・販売中で、これらは輪島の漆芸(しつげい)作家6人が作ったものなどです。
CBC
CBC
(輪島塗職人 今瀬風韻さん)「こちらは蒔絵という分野の作家さんで、火災のあった朝市通りにお店を構えている。自分の仕事道具や在庫も焼けてしまったものが多い中で、少しですけれども作品を貸してもらった」
CBC
CBC
この展示・販売会を開いたのは、愛知県稲沢市出身の28歳、今瀬風韻(いませ・かざね)さんです。今瀬さんは、地震が起こるまで輪島市で輪島塗の職人として働いていました。(今瀬さん)「お正月から愛知の実家に帰省していたんですけれども、時間が経つにつれて、ただごとではないと分かってきて。最初の1週間はとにかく不安でした」
CBC
能登半島地震では多くの輪島塗の工房も被害を受けました。今瀬さんが働いていた輪島塗の会社「輪島キリモト」は、今瀬さんを含め職人5人をかかえ、火災のひどかった「朝市通り」からは少し離れた場所にありました。しかし、地震の揺れで機械が倒れたり、道具も散乱。会社は壊滅状態に。復旧にはまだ時間がかかります。(今瀬さん)「家がそもそもない陽ともいるし、職人さんの生活ができるようになることがまず第一なので、そこの基盤がしっかりするまでは再開は難しい」
CBC
1月末に輪島を訪れ、状況を目の当たりにした今瀬さん。「一度輪島に1月の下旬に行ったんですけれども、そのときに(職人の)みなさんに声がけして、2日、3日しか滞在時間はなかったが、(作品を)持ってきていただいて借りてきた」
CBC
CBC
稲沢市にある今瀬さんの実家近くの作業場です。他の職人たちの中には避難所生活が続いている人もいて、会社の急ぎの仕事を、今瀬さんはこの作業場で一人、サポートしているのです。
CBC
CBC
(今瀬さん)「これは観葉植物のビニールシートで、応急的に。本当はビニールではない方がいいんですけど」湿度調整は作る過程でとても大事なこと。代用品でなんとか部屋を整えました。
CBC
幼い頃から手先が器用でものづくりが好きだった今瀬さん。母親の営む飲食店で見た、輪島塗のつややかな質感に魅了されたといいます。愛知の高校を卒業すると、輪島塗の職人を多く輩出してきた石川県立輪島漆芸技術研修所に進みました。(今瀬さん)「当時まだ20歳で、後先のこととか生活のこととか考えずに輪島に行って、漆が勉強したいというワクワクした気持ちが一番でしたね」
CBC
その後22歳で、下地を塗る職人として輪島塗の会社に就職。(今瀬さん)「木からだんだん完成していくまでの過程というか、最後に液体の漆を塗って、きれいになると嬉しいですし、やりがいを感じます」
CBC
今回の販売会では、今瀬さんが働く会社「輪島キリモト」の商品も並びます。地震でわずかに傷がついたことで、正規には販売できないものが割安に。
CBC
CBC
(訪れた客)「傷を見ると、みなさん大変な思いをされているので、少しでもお力になれればと思ってきょう購入させていただきました」(訪れた客)「(輪島塗が)なくなるのは惜しいというか、助けることができるといいなと思います」
CBC
このチャリティー販売会は、名古屋市西区の和食店「懐韻(なつね)」のギャラリーコーナーで3月31日まで。売り上げは全額、輪島市の職人のみなさんに届けられます。(今瀬さん)「私が1月末に輪島に行ったとき、誰も下を向いていなかった。輪島をあきらめていなかった。これまで以上に“新しい輪島”になるんじゃないかと思うので、応援してほしい」
CBC
【輪島漆芸作家 チャリティー展示・即売会】 場所:名古屋市西区那古野1-2-11「懐韻(なつね)」ギャラリースペース 期間:3月31日まで(午前11時半~午後5時 ※月・火・水は休み)