横浜トリエンナーレのお土産グッズを開発するワークショップが大詰め! プレゼンと審査の結果は?

NTT東日本 神奈川事業部とNTT ArtTechnologyは、横浜トリエンナーレ組織委員会と共同で、「横浜トリエンナーレ オリジナルグッズ開発ワークショップ」を開催している。

第8回横浜トリエンナーレにおける次世代育成プログラムの一環として実施されている本ワークショップ。2月4日にはDAY3となるプレゼンテーション&審査会が行われ、4月中旬よりマリンタワーショップなどで販売する最優秀賞に、チーム「ニョキニョキ」の「野草ガチャ」が選ばれた。

○■横浜トリエンナーレのオリジナルグッズを開発

3月15日から6月9日の期間、「野草:いま、ここで生きてる」を展覧会テーマに掲げて、第8回横浜トリエンナーレが開催される。

文化芸術を通じた教育支援の一環で実施されている本ワークショップでは、魯迅の詩集に由来する第8回横浜トリエンナーレの展覧会テーマを題材に、オリジナルグッズを開発。審査で選ばれた優秀作品を実際に商品化し、公式グッズなどとともに「未来のクリエイターグッズ」として4月中旬以降に販売する。

1月にはワークショップの参加者たちによるディスカッションや、グッズの企画検討を行う DAY1と、実際に試作品の制作作業 を行うDAY2を実施。来場者の思い出となるお土産グッズのアイデアをグループごとに話し合い、試作品を制作してきた。

このほど開催されたDAY3では、各チームがグッズのコンセプト・特徴・価格などをそれぞれ約5分間で紹介するプレゼンと審査が行われた。

審査を務めたのは、横浜トリエンナーレ組織委員会の事務局次長・丸山晶子氏、NDCグラフィックス取締役の中山典科氏、デザイニト代表取締役社長の伊東祥次氏の3名。「野草:いま、ここで生きてる」というテーマをどのように理解・解釈し、グッズに落とし込むかが審査ポイントのひとつになったようだ。

審査結果は以下の通り。なお、発表と審査はDAY2の制作チームを基本とするチーム単位で、1チームで複数のプロトタイプを制作している場合も商品化するグッズは原則1点となっている。

最優秀賞:野草ガチャ(チーム「ニョキニョキ」)
横浜トリエンナーレ組織委員会賞:ハーブのバスソルト“広がる”(チーム「ほっと」)
中山賞:アパレルくさかんむり(チーム「くさかんむり」)
伊東賞:水でつながる“いのち”の時計(チーム「みずいろ」)
特別賞:野草タオル(チーム「おてふき」)

最優秀賞・特別賞および横浜トリエンナーレ組織委員会賞では「トリエンナーレ チケット(フリーパス)」、中山典科賞では「刺繍ラベルビン シグナルフラッグ」、伊東祥次賞では「波佐見焼横浜マリンタワー」が、それぞれ副賞として贈られた。
○■デジタルデータを活用した最新のものづくりを体験

「現代アートの良質な入門編となること」をミッションに掲げ、若い世代に関心を持ってもらうため、今回初めて高校生以下を無料とするなど、さまざまな施策に取り組んでいる横浜トリエンナーレ組織委員会。

この日、発表の審査員も務めた事務局次長の丸山氏は「お土産用のグッズ開発という今回のワークショップは、若い方々にも興味を持っていただけるような、非常に実践的でおもしろい取り組みだと思います」と語った。

高校生以上で公募した本ワークショップには結果として、年齢・性別、国籍もさまざまな約40名が参加した。

「DAY1・DAY2と世代交流のようなかたちで、みなさん活発な議論を通じて積極的に製品づくりをされているなと思いました。『野草:いま、ここで生きてる』というテーマはいろいろな解釈ができる。どんな製品に結実したのか、非常に楽しみしてきました」

また、DAY1で考えられた多様なアイデアやコンセプトをオリジナルグッズとして落とし込む過程で大きく貢献したのが、デジタルデータによってものづくりを行うデジタルファブリケーション機材だ。

「機器はあくまでものづくりの手段なので、何を使うかよりも何を伝えたいのかを先に重視して考えていただきましたが、ものづくりや量産化のハードルは実際かなり下げられたと思います」と、NTT ArtTechnologyの大和田龍夫氏。

本ワークショップでは3Dスキャナーや3Dプリンター、UVプリンター、レーザーカッター、ミシンなどの最新のデジタルファブリケーション機器と、それを使いこなす人材を集め、サポートしてきたという。

「横浜トリエンナーレは都市型のトリエンナーレという特徴もあり、一堂に会した世界のアートを鑑賞することが、どうしても主になると思うんですが、こうした市民参加型の取り組みは今後もぜひ続けていけたらなと思っています。地域の方、市民の方が気軽に参加できて、自分も何か表現してみようと考えるきっかけに、このワークショップがなれば嬉しいです」

ワークショップに参加したチームからは「アイデアを形にするのはエネルギーが必要なことだけど、期限が限られた中で協力・集中して頑張って制作活動ができたことは、非常に良い経験になった」、「デジタルファブリケーション機材を使って、多くのアイデアが形になっていくことは、とても面白かった」、「レーザーカッター、3Dプリンター、UVプリンターなどを初めて使ってみて、新しい世界をすることができたのが嬉しい」など声が寄せられた。
○■店頭では各チームの試作品も展示予定

最優秀賞に輝いた『野草ガチャ』は、野草からインスピレーションを受けたアクリルチャームで、野草を引き抜くというガチャ的な遊び心を感じさせる売り方などが評価されたようだ。プロトタイプ制作では3Dスキャナ・3Dプリンタ、UVプリンターやレーザーカッターを用いており、プレゼン時の希望価格はひとつ200円とのこと。

4月中旬より横浜マリンタワー内のショップなどで販売され、今回制作された各チームの試作品も一緒に展示される予定。審査結果の発表後、丸山氏は次のように講評を寄せた。
「『野草ガチャ』の説明をいただいたときに多様性とおっしゃっていて、トリエンナーレで大事にしているコンセプトをきちんとかたちにしていただき嬉しく思いました。ただ、横浜トリエンナーレのコンセプトの商品化という点では本当にみなさん甲乙つけがたく、審査に時間がかかりました。一点もののアート作品ではなく、グッズとして必要な安全性や再現性など、商品化に向けた具体的な議論したところです」

ワークショップの最終日となるDAY4は3月23日15:00~16:30にオンライン開催。優秀作品の商品化にあたってのリデザイン、価格・数量などを決定する過程を講義形式で学ぶ報告会を予定している。

伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら