〈札幌すすきの首切断事件ついに起訴〉「ホテルに入った途端、女装家は男になった」一家総出の復讐か? サイコパスか? 皮が剥がれた首をもてあそぶ娘、その様子を撮影したのは…

札幌・すすきののホテルで昨年7月、恵庭市在住の会社員男性Aさん(当時62歳)の首なし遺体が見つかった事件で札幌地検は3月6日、札幌市厚別区、無職、田村瑠奈(30)を殺人や死体損壊などの罪、父親の田村修(61)を殺人ほう助や死体損壊ほう助などの罪、母親の田村浩子(60)を死体損壊ほう助の罪でそれぞれ起訴した。
親子3人は犯行の計画段階から共謀していたとして同じ容疑で逮捕、送検され、刑事責任能力を問うために先月28日まで鑑定留置されていた。地検は一家全員に十分な刑事責任能力があると判断したうえで、起訴のタイミングを勾留期限いっぱいの6日まで伸ばし、父親と母親の犯行への関与を絞り込んで内容を精査、起訴に踏み切ったとみられる。起訴状などによると瑠奈被告は昨年7月1日夜から2日未明にかけ、札幌市中央区のホテルの浴室でAさんの首を刃物で刺すなどして殺害、所持していたノコギリで首を切断して損壊して遺体を遺棄し、一部を持ち帰った。両親は犯行の共犯として関わったとされ、精神科医の父親は犯行後に車で現場近くまで迎えに行くなど逃走も手伝っていた。瑠奈被告は切断した頭部を自宅に持ち帰って保存、北海道警が家宅捜索で押収していた。
田村瑠奈被告(知人提供)
集英社オンラインは昨夏の事件発生当初から現地入りして総力取材、首を切断して持ち去るという猟奇的殺人の動機が「不同意性交」に端を発した「復讐」だったことを突き止め、詳報してきた。エリート精神科医の父と元美術館学芸員の母が、女装癖のある男から性加害を受けた娘の仇讐を完遂した構図だ。事件を簡単に振り返ろう。Aさんは妻子ある身だったが「性的に奔放」で、昨年7月1日夜、すすきので行われたディスコイベントに女装して参加。その後、同日午後11時ごろに若い女性とみられる同伴者と犯行現場のホテルにチェックイン、同伴者は2日未明に「先にひとりで帰るので解錠してください」とフロントに電話をかけ、堂々と退室した。チェックアウト時刻を過ぎた同日午後、不審に思ったホテル従業員が室内を調べたところ、浴室でAさんを発見して通報、駆けつけた札幌中央署員がAさんの首なし遺体を確認し、道警捜査1課が同署に捜査本部を設置した。この「同伴者」を瑠奈被告と特定するまで、捜査本部はAさんの「性的嗜好」に引っ張られて右往左往した。事件担当デスクが解説する。
界隈のクラブでは有名人だったAさん(関係者提供)
「道警は事件を認知した当初、Aさんが女装姿でイベントに参加していたことから、同性愛者もしくは性的少数者の犯行の可能性を重視して交友関係の絞り込みを徹底したものの、容疑者が浮上しなかった。そのため発生1週間後に現場周辺のクラブや飲食店での聞き込みなどを再度徹底したところ、Aさんが女装したうえで性的少数者を装って若い女性のナンパを繰り返し、苦情が続出してクラブを出入り禁止になるなど、界隈のトラブルメーカーだったことがわかった。なかでも深刻なトラブルに発展していたのが瑠奈被告に対する性的暴行疑惑だったのです」
捜査本部は、ホテル周辺の防犯カメラの分析などから父親の修被告も犯行に加わっていたことを炙り出し、犯行前に父娘でノコギリやロープなど、犯行に使用した「復讐グッズ」を購入していたことも判明。母親も含めて計画段階から一家全員が共謀して一連の犯行を行ったとして強制捜査に踏み切り、Aさんの「頭部」を含めた犯罪の証拠を家宅捜索で多数押収、一家全員を同じ容疑で逮捕していた。捜査の進展と呼応するように、取材でもAさんの女装愛好家としての「戦略的」な側面が次々に明らかになった。Aさんは特殊な趣味を持つ人たちが集う、すすきのの老舗会員バー「B」では「ともちゃん」の愛称で知られる常連だった。その「B」にAさんが出入りできるように紹介した同好の士は当時、こう証言した。「最初にAさんと出会ったのは、北海道伊達市の北湯沢にある混浴温泉です。ここは家族連れや普通のカップルも来る川沿いの温泉なのですが、実は我々の“界隈”のなかでも有名なスポットでした。男女カップルや単独で来た男性客が、女性の裸を鑑賞して、双方でその反応を楽しむ文化があったのです」
界隈では“ともちゃん”と呼ばれていたAさん
混浴を覗き見することを趣味人たちは“ワニ”と呼称していたが、そのうちAさんはワニだけでは満足できず、紹介制だった「B」への憧れを語り始める。そして、前述の同好の士の紹介で出入りできるようになると、若い女性へのアプローチを重ねて、トラブルメーカーとしても知られるようになっていった。これが自らの命を落とすきっかけになったのだが、瑠奈被告の祖父は当時、こう証言していた。
田村被告の自宅 撮影/集英社オンライン
「瑠奈は結婚もしたことないし、男大っ嫌いなんさ。私が知る限り男に対して家族以外に気を許してるのを見たことないからな。そういう特殊な性格を持った子なんだ。そうだよ、瑠奈はレイプされてるんだよ、あの男に。女装で女の格好してたから瑠奈は女だと思ってたの。それで2人でいいところあるから行こうって言われてラブホテルに入って、入った途端に相手は男になったわけさ。出会ったのはカラオケなのかディスコなのかそういうところだと聞いています」
娘の一大事に父と母は警察に通報して事件化することはなく、Aさんを呼び出して「話し合いをした」という。祖父は、こうも証言していた。「俺は2人に『なんでそのときに警察に言わなかったんだ』と厳しく言ったんだけど『本人がもうやらん、二度と姿を現さんって言うから表に出さず自分たちで処理した』と。修も奥さんも決着がついたと思って安心してたんだろう」しかし、Aさんは約束を反故にして、再度瑠奈被告に連絡を取ってきた。祖父はこう続けた。「瑠奈が会いに行ったのは、正直殺すつもりだったんだと思う。修と浩子さんが被害者に話をつけて2度と現れないと言ったのに現れたから。レイプ自体はそりゃあ許せない。けど殺すのは別問題だろ」祖父が慮った「別問題」は、一家にとっては「別」ではなかったのだろう。瑠奈被告はAさん殺害後、Aさんのスマホを工具で破壊している。だが、復讐だけでは到底理解ができないのは事件後の、常軌を逸した一家の行動だ
田村修被告
「Aさんの首はノコギリで切断され、田村家の自宅の浴槽にポリ袋にいれて放置されていた。押収されたハンディカメラには瑠奈被告が頭部をもてあそぶ様子が残されていた。顔の一部は皮が剥れており、この際、瑠奈被告の両手がうつりこんでいる。その様子は修被告が撮影したとみられている」(社会部記者)性加害で心を殺された娘とその両親が辿った壮絶な「復讐」の過程は今後、法廷で明かされていくだろう。