若手医師と研修医が数千人辞任し韓国医療が崩壊寸前 手術延期で患者らに影響も

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韓国政府が医学生の受け入れ枠を増やす計画に対し、医師たちの抗議が高まっている。すでに研修医と若手医師の数千人が辞任し、医療システムは混乱に陥っているという。『The Independent』がレポートしている。

韓国では、政府が医学生の受け入れ枠を増やす取り組みを不服とし、若手医師と研修医が次々と辞任。医療システムが混乱状態に陥っているという。
パク・ミンス保健副大臣は記者に対し、これまでに7,813人の研修医が勤務報告をせず、8,800人以上の若手医師が辞職したと明かした。この人数は、研修医労働力全体の71%に相当するのだという。
韓国は主要経済国の中で医師対患者比率が最も低く、最近では政府が現行の年間枠3,000人に2,000人の人員追加を提案していた。これに対し医師らは、街頭で「医療の終わり」と書かれた標語を掲げて抗議活動を起こしている。
ストライキを行う医師たちは、医師育成には時間を要するため、専門分野での実際の不足の解決策にはなり得ないと主張する。また悪環境で低賃金の状況では、医療サービスの質を低下させる可能性があるとも指摘しているのだという。

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医師らの政府に対する反発の始まりは、2020年にさかのぼる。当時、医学部の入学定員を10年間で4,000人増やす提案が公表され、医師らによる抗議とストライキが勃発。政府は計画を廃棄する決定を下した。
2022年のOECD(経済協力開発機構)のデータによると、韓国の医師は世界で最も高い収入を得ており、公立病院の専門医は年間平均で約20万ドル(約2,900万円)を稼いでいるという。
実は政府の政策を反対する医師の中には、医療サービスの質を低下させることだけが理由ではないと指摘する声もある。ソウル国立大学の公衆衛生専門家であるクォン・スンマン教授は、「医師の数が増えれば競争が激しくなり、収入が減るため、医師供給の拡大に反対しているのです」と指摘した。

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世論調査会社の韓国ギャラップは、世論のうち76%が政府の医学部定員拡大計画に肯定的という調査結果を報告した。
しかし現実には、こうしたストライキの犠牲になっているのは、緊急措置を必要とする患者であるという。
脳腫瘍を患うホン・ジェリョンさんは、がんが肺と肝臓に転移しているにもかかわらず、化学療法治療が無期限に延期されたという。また父親が食道がんを患っているチョさんは、「ストライキで手術が延期され、他の病院を当たったがすべて断られた」と『The Korea Times』に語った。
医療機関はこの事態に対し、医師に代わり看護師が患者を管理することなったと報告。改革に反対しながらも、医師が職務に復帰するよう呼びかけているのだという。