東北大生の宮崎翔太郎さんが被災地の現状伝えるスマホゲーム「12RPG」を製作…東日本大震災から13年・未来へ

東北大工学部2年の宮崎翔太郎さん(20)は福島第一原子力発電所事故の影響を受けた被災12市町村をテーマに、スマートフォンゲーム「12RPG」を製作した。実在する施設などを用い、被災地の現状に目を向けてもらう狙いだ。製作するまでに至った経緯や復興への思いを明かした。
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2011年の東日本大震災当時は小学1年生だった宮崎さん。地元・山口県で過ごしていたこともあり、震災のことは全く分かっていなかった。初めて現状を知ったのは東北大に入学して3か月後の22年7月だった。
同大学OBが福島県浪江町に連れて行ってくれ、現地の方に案内してもらった。「復興はなんとなく終わっているのかな」という感覚で行った被災地は、荒れ果てたまま。「悲惨な状況が多々あって、あんまり復興していないと正直に思った」。目の当たりにした光景とともに「昔のコミュニティーが戻ったらいいな」というガイドさんの言葉に心を強く揺さぶられた。
「自分はボランティアとかの気質は持っていないと思っていたなかで、何かできることがあるかなと考えていた」。数週間悩んだ末に、誰もが楽しみながら学べるゲームに着目。プログラミングなどの知識は一切なかったがインターネットを駆使して独学で作り始め、それと同時に仲間も募った。「チラシを作成して学校の掲示板に貼ったり、他の学校のサークルにも配った」。秋田公立美術大や早大などの学生も加わり最大9人で開発していった。
ほぼ毎日ゲームのことを考え、1週間で40~50時間を割いて約1年半かけて完成させた「12RPG」は2月29日に正式リリース。何度も町へ足を運び、マップの形や現地の人の話を聞きながら現存の施設もトレースさせた。ゲーム内では記憶を失った主人公「カクゾウ」を操り、邪魔な木などの物を取り除いて町に活気をあふれさせていく。その他にもガチャガチャで特産物を集めるなど、コレクション要素もあるという。
リリース直後は浪江町だけだが、これからアップデートを重ねて福島原子力被災12市町村(ほか田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、葛尾村、飯舘村)を順次追加する予定だ。「地方創生ゲームのなかでもあまり堅くない感じで作っている。操作性もシンプルで誰でも楽しめるようなストーリーにしている。被災地を知るきっかけとして気軽に遊んでほしい」。思いを込めたゲームで被災地の更なる復興に貢献していく。(山崎 賢人)