トイレの備蓄を忘れないで 理想の数は「人数×5回×7日間分」 能登半島地震では便器にあふれた大便を手ですくうことも

災害があっても必ず行くことになるのがトイレ。水洗トイレが使えなくても我慢せず健康に過ごすためにどう備えればいのでしょうか。
能登半島地震で改めて注目された、災害時のトイレ問題。被災地には「使用不可」と書かれたトイレがあちこちに。火災があった輪島の朝市通り付近の公衆トイレ。水洗トイレが使えなくなってしまったにもかかわらず用を足し続け、排せつ物があふれてしまっていました。
避難所にあるトイレも、劣悪な環境に置かれていました。(穴水町で避難している女性)「どうしても水が流れないと、あふれてしまって大変だった」(輪島市内に住む女性)「大便をしたくても便器にあふれていて、しようと思っても止まってしまう。ビニール手袋で(大便を)すくって出していた」“衛生状態”や“臭い”から、トイレに行きたいと思っていても行くのをためらってしまう人も。
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(穴水町で避難している女性)「出さないというわけにはいかないし、尿はこらえられないが大便は長いこと行かなかった」災害時のトイレ問題が恐ろしいのは、水分を控えたり、トイレを我慢したりすることで「健康への影響」が懸念されるからです。
能登半島地震で医療支援を行った医師は、こう話します。(名古屋大学病院・山本尚範医師)「我慢していると菌が尿道を通って逆流してくる。ぼうこう炎など尿路感染症になってしまうことがある。脱水になるので、心筋梗塞や脳卒中、脳梗塞など血管が詰まるような病気が起きやすくなる」今後40年のうちに、90%もの高い確率で発生が予想される南海トラフ巨大地震。全国で最大950万人もの人が避難する想定で、多くの人がトイレを使えなくなることが予想されます。
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水洗トイレを搭載する「トイレトレーラー」も、道路が寸断した場合などは遠方からの派遣ができないこともあり、個人の備えがより重要に。しかし、名古屋の街で聞いてみると…(30代女性)「トイレの備え…なかなか買わない。難しい、考えていない」(40代男性)「能登半島地震を見て、必要かなとは思うがまだそこまで考えていない」(40代女性)「あんまりトイレを備蓄するというイメージがない」
災害時の備えについて街で聞いたところ、食料や水を備えている人は8割以上でしたが、トイレを備えている人は3割ほどでした。
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備蓄がなかなか進まない背景を専門家はこう指摘します。(日本トイレ研究所・加藤篤代表理事)「“排せつ”というのは、会話に出てこない。話題にならないことは、災害時の備えに思い至らない。ここに落とし穴がある」NPO法人「日本トイレ研究所」の加藤篤代表理事。20年ほど前から様々な災害で被災地に入り、トイレ支援や調査活動を行っています。
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その加藤さんが災害時に快適な状態を保つカギだと考えているのが「携帯トイレの備蓄」です。
「携帯トイレ」とは、便座を覆うように取り付けた袋の中に用を足し、吸収シートなどで固めるもの。あとは、口を結んで捨てるだけ。水で流せなくなった水洗トイレも、詰まらせてしまうことはありません。(日本トイレ研究所・加藤代表理事)「(災害が起きたら)まず携帯トイレを取り付ける。なぜかというと、3時間以内に4割の人がトイレに行く。いろいろやっている間にトイレに行ってしまう。そうすると便器が大小便であふれることになり、水がない中で対応できなくなる」
加藤さんらが行った調査では、2016年に発生した熊本地震の際に発災後の3時間以内にトイレに行きたくなった人は4割。6時間以内では7割以上にのぼりました。
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「携帯トイレ」は、水や食料よりも早く必要になるとも言えます。便器からあふれてからでは遅いのです。
(日本トイレ研究所・加藤代表理事)「人数×5回(排せつ回数目安)×最低でも3日間。できれば7日間」7日分を備えておくのが理想とのこと。4人家族なら「4人×5回×7日分=140回」。段ボール1箱分くらいです。
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(日本トイレ研究所・加藤代表理事)「トイレは支援も遅れる。水や食料は気付くが、トイレは忘れられがち。これくらいあると安心」ただ、この「携帯トイレ」は、臭いを完全に防ぐことはできません。
今回の地震を機に、さらにトイレを快適にさせる商品に注目が集まっています。
(日本セイフティー・外山ゆう子さん)「水を使わないで、排せつ物を一回一回フィルムの中にくるんで個別包装して、臭いも菌も漏らさない。自動で密封してくれるトイレ」もともと介護用に開発された、この簡易トイレ「ラップポン」。
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ボタンを押すと、排泄物が入ったフィルムを熱で圧着。1回ごとに自動で密封できるんです。刺激臭のあるアンモニアを混ぜた水300ミリリットルを尿に見立て、凝固剤を入れたうえで、実験してみると…(牧野恵美記者)「尿特有のアンモニア臭がする状態です」飛び散った尿も閉じ込めます。(牧野記者)「密封されているので臭いも全く感じません。尿も固まっていますね」水が使えない能登半島地震の被災地に約650台搬入された、この「ラップポン」。
輪島市にある、こちらの介護施設では、地震が起きてから13日目に設置されました。ラップポンが来るまでは、川からバケツで水をくんでトイレを使っていたといいます。(もんぜん楓の家・岡山人美施設長)「座面以外は袋が全体を覆ってくれているので臭いがしない。水がなくても大丈夫。電気さえあればOKなので、とても便利」
先ほどの電動式のものは約20万円と、値が張りますが…手動で密封できる、約3万円のタイプも販売されています。
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忘れがちですが、実は重要な「トイレの備え」。選択肢も増える中「備蓄の落とし穴」のままにはしておけません。