防災バッグに「一家の年賀状」 能登半島地震で唯一見直したのは「靴箱」 “防災ママ”に聞く備え

非常時に自宅から持ち出す「防災バッグ」。皆さんは準備していますか?子育て中の「防災ママ」に“備え”を見せてもらおうと、自宅を訪ねました。
愛知県知立市に住む、原田友紀さん。
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「子どもを守れるのは親しかいない」長男の出産を機に“防災ママ”になった原田さんは、知立市や近隣地域に住む女性たちで結成された「防災ママ かきつばた」のメンバー。看護師や防災士、防災備蓄を得意とするママたちが所属する、防災エキスパート集団です。
原田さんは自宅での「在宅避難」を前提に、食料などを備蓄しています。「災害時でも普段食べる美味しい食べ物で、ちょっとでも元気づけられるのが大事」と、非常食というよりも普段使いできるレトルト食品などが中心です。
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もともと2週間分の備蓄をしていましたが、能登半島地震を受けて、水やガスボンベ、非常用トイレを2~3日分買い足しました。(原田さん)「能登半島地震ではライフラインの復旧が遅いと感じました。南海トラフ巨大地震ならもっと遅くなると思い、少しずつ増やしています」今は、1か月分の備蓄を目指しているといいます。
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原田さんには5歳の悠杜(はると)くんと、3歳の唯花(ゆいか)ちゃんの2人の子どもがいます。自宅では普段から、緊急地震速報が出た際を想定して机の下に隠れて身を守ったり、停電した際にランタンをつけて生活する「停電ごっこ」訓練をしたりと、子どもたちも防災への意識が高い!そんな子どもたちのために準備した、防災バッグの中身を見せてもらいました。
原田さんは子ども用の防災バッグを普段使いさせています。その理由について…(原田さん)「日帰りで旅行に行くときになど、そこで災害に遭ったときに対応できるように」
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中身のポイントは、3歳児でも持ち運べる“最低限の量”。自分一人で背負って逃げるためです。そのため、水は入れていないとのこと。気になる中身は…
唯花ちゃん(3歳)の防災バッグの中身
<唯花ちゃんの防災バッグの中身>□着替え□オムツ、吸水ライナー、非常用トイレ□おもちゃ□ハンカチとティッシュ□アルミブランケット(寒さ対策)□カイロ□おやつ□ペンライト□歯ブラシ□個人情報が入ったファイル
3歳の唯花ちゃん、普段オムツは使いませんが、災害時にはストレスで失敗しやすくなるだろうとオムツのほかに吸水ライナーも準備しています。また、避難所では退屈してしまうので、おもちゃを持っていきたいところですが…(原田さん)「避難所は静かなので、子どもの声でも敏感になる人もいる」音が出ず静かに遊べるものをと、絵本や折り紙などを入れていました。さらに…
おやつは小さな ようかん、あめなど普段から食べているものが入っています。「食べ慣れていること、そして、音が鳴らずボロボロこぼさないもの」がポイント。クッキーやせんべいは避けているそうです。また、ペンライトは原田さんが2年ほど前に行ったアイドルのコンサートで購入したもの。
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なぜこれが必要なのか…(原田さん)「最低限の明かりの確保だけでなく、ストレスを和らげられる」懐中電灯のようには使えませんが、6色に変化するので、不安な災害時に役立ちそうです。
そして、保険証や医療受給者証などのコピーが入った個人情報のファイルに一緒に入っていたのが、原田さん一家の「年賀状」。実は取材中に一番驚いたのがこれ。いったいなぜ防災バッグの中に?
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実は、災害時にはぐれてしまったときに、ママやパパを探すために使う「家族カード」になるんです。年賀状には、家族の名前、生年月日、血液型のほか、パパママの携帯番号も。「家族を探すとき、スマホで写真を見せて探していると、電池を使ってしまいます。年賀状ならすぐに取り出せるし、スマホの電池がなくなる心配もない」と原田さん。悠杜くんの写真の横には「犬アレルギー」との文字も。
原田さんは毎年写真入りの年賀状を作りますが、必ず「家族カード」用に2枚残すようにしているそうです。(原田さん)「これを一枚見せるだけでパパママを探してもらえます。一枚に集約されているので手間もないです」と原田さん。災害時に子どもがパニックになってしまっても安心。どの家庭でも手軽に作れそうです。
原田さん自身の防災バッグには、水を子どもと共用にする以外、自分用の荷物しか入れていません。お出かけの際、子ども用の着替えなどを入れておく「ママバッグ」とは別物なんだそうです。エアマットは「空気で膨らませてベッドのように使うもので、体重250キロまで耐えられます。子どもと乗れます」とのこと。
ママ(原田さん)の防犯バッグの中身
<ママ用の防災バッグの中身>□携帯浄水器□非常用のパン□下着□軍手□エアマット□トイレセット□タオル□トイレットペーパー□カイロ□ペットボトルの水(3本)□寝袋とアルミブランケット□お尻拭き(手や体をふく)□ハザードマップ□メイク落とし□レインコート(防寒も兼ねる)□眼鏡□食べ物□歯ブラシとトイレ□マスク□個人情報が入ったファイル
これは1日分の避難を想定したものだそうです。(原田さん)「重すぎてもダメ、走って逃げられるの大きさに」実は、能登半島地震を受けて防災バッグの中身に追加したものは、寒さ対策の「カイロ」だけ。ただ、大きく変えたことが1つあったそうです。
能登半島地震で多く見られた建物の倒壊。その様子を見て原田さんは「少しでも早く避難できるように」と、クローゼットなどにバラバラに置いてあった家族の防災バッグを、すべて玄関の靴箱に移動しました。
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そのおかげで避難する動線も短くなったそう。防災バッグを入れるために「ほとんどの靴を捨てた」と笑う原田さん。最後に「一番大切なことがある」と教えてくれました。
(原田さん)「やはり家族と話し合いが一番大切かなと思いました。それぞれが分かっていることが重要。今、この家の中で安全な場所はどこか、備蓄は何があるのか、防災バックの位置はどこか。それに、家族が離れ離れになったときは、どこに集合するのか。家族で話し合って、細かく決めました」