都営地下鉄全駅にホームドア開設!実現のカギはQRコード

JRや私鉄各線など多くの路線で、3月16日(土)にダイヤ改正が行われます。今日はその電車に関連して、ホームドアの話題です。
都営地下鉄では2000年から順次、ホームドアの設置を進めてきましたが、2月、106駅全てのホームドア設置が完了しました。最後に設置されたのは押上駅で、押上駅のある都営浅草線は、ある事情から設置が難しいとされてきました。設置を実現させた画期的なアイデアについて、東京都交通局車両電気部フェロー 岡本誠司さんに伺いました。
東京都交通局車両電気部フェロー 岡本誠司さん浅草線としては、5社の事業者さんが相乗りしている路線なんですね。車両の扉の開閉とホームドアの開閉は、多くの鉄道は、無線装置を使って連動させています。装置を、浅草線を走る5社がみんな積みましょうという話にならないと積めない。それを積まないと、車掌さんが手動でホームドアを開け、車両ドアを開け、全駅、何百回とやっていくと時間もかかって今までの輸送力が確保できない。(装置を載せるために)車両改造すると、相当なお金がかかってしまうので意見が揃わないと改造するということにならない。車両の大改造をしなくてもできないかと、QRコードを使ってみようと。無線装置を都営浅草線が所有する車両に全部載せたとすると、20億円くらいかかる。このQRコードを貼る。結果的には270万円くらいのお金で済んだということが出てきています。
これまでは車両に専用の「無線装置」をのせる必要がありましたが、「QRコード」を使うことで解決しました。
浅草線は、都営地下鉄に加えて、京急、京成、北総、芝山鉄道という5つの事業者が同じ駅を使う区間がある「相互直通運転」となっています。その全ての路線でホームドアを動かすために、車両が何両編成で、ドアがいくつあるのかといった情報を、無線装置を使って受け渡しする。そうすることで、車両のドアとホームドアが連動して開くということなんです。
しかし5つの事業者すべてが足並みを揃えて専用装置をのせないと、ホームドア設置は実現しません。ただ、お金がかかるのですぐには意見が一致しませんでした。そこで思いついたのが「QRコード」でした。車両が何両編成で、ドアがいくつあるのかという情報をQRコードに入れます。
無線装置ならコストが約2億円かかるとところ、QRコードにしたことで、270万円と、740分の1に抑えることができたということです。(都営浅草線のみのコスト)
では、QRコードを使ったホームドアの仕組みについて、またどんな工夫をしたのかなど、再び東京都交通局 岡本さんのお話です。
東京都交通局車両電気部フェロー 岡本誠司さん車両の片側にQRコードが貼ってあります。カメラがホームの1番前に立つとちょうど頭の上に付いています。この中に動いているQRコードが入ってきたねと。その動いているQRコードが止まった認識をした段階で電車が止まったので、ホームドアを開ける指示を出します。ホームドアが開いたねということを見て、車掌さんが車両の扉を開ける。電車に貼るので、汚れたり傷がついたり、誰かがガム貼ったり、雨粒がカメラの画角の中に入ってもちゃんと読めるように。地下じゃない駅で使った場合には、朝日夕日が照り込んだときに、きちんと読めるために、50%読めればちゃんと(情報が)読めるよという形に機能を作っています。
車両ドアに貼ったQRコードを、駅のホームの上部に設置されたカメラで読み込むことで、車両のドアや電車の動きを把握して連動し、ホームドアが開いたり閉まったりします。このQRコードの技術は、広く活用してほしいとオープンになっていて、東京都交通局によると、京浜急行、小田急電鉄、JR東海などでも使われているということです。
ホームドアの設置を特に待ち望んでいるのは視覚障害のある方たちです。都営地下鉄でホームドアが最後に設置された押上駅のある墨田区障害者団体連合会事務局長の小久保明さんに伺いました。
墨田区障害者団体連合会事務局長 小久保明さん本当は1番最初に設置してほしい駅だったんですね。特に朝晩を中心に乗降客が多い、乗り換えの客が多いと、階段付近がすごく混み合うんですけど、押上のホームが非常に狭いため、特に階段の脇は1人すれ違えるかどうかというくらい狭くて、ホームドアがないときは、目の不自由な人でなくても怖い感じだったので待ち望んだ設置でした。押上の話ではないんですが、知っている方がホームから転落してしまったとか、白い杖、黄色い点字ブロックを頼りに歩いているという話を聞いて、ホームのスレスレのところを歩かれているということになると、ホームドアはなくてはならないものだなと思っています。
押上駅、もちろん国の基準は満たしているんですが、都営浅草線の中でも古い駅なのでホームが狭いそう。東京スカイツリーができて観光客も増えたので、ホームドアは待望だったということです。
都営地下鉄では、ホームドアができて以降、転落事故はゼロということで、今後他の路線でもこの動き広がってほしいなと思います。