ヤマハのグループ会社、クーリメイトがタンザニアで物流サービスを実現へ – モビリティを活用した雇用創出の取り組みとは?

ヤマハ発動機のグループ会社CourieMate(クーリメイト、本社:静岡県)では、アフリカで事業展開するスタートアップ企業・WASSHAと共にアフリカのタンザニアにおける物流サービスの実現に向けて、2023年1月~6月末の期間で実証実験を行っている。渋滞による影響を受けにくいヤマハの二輪車を最大限に活用し、現地の人々に向けてECサイトの商品を届けることを考えている。クーリメイト代表取締役の松本弘氏(ヤマハ発動機より出向)がメディアに詳細を説明した。

○アフリカの物流事情は?

クーリメイトでは、すでに2年ほど前からアフリカのウガンダにおいてラストマイルデリバリー事業に取り組んでいる。これまでに得た事業のノウハウやITシステムの知見を活かし、このたびタンザニアでも事業の本格展開を計画する。

まだECビジネスそのものが新しく、本当に荷物が届くのか分からない、と考えている人も多いアフリカ地域。したがって現地で展開する物流サービスは、基本的に代引き決済となる。「ウガンダの首都カンパラにある倉庫からドライバーが商品を出荷し、現地で決済処理したら、事務所まで戻ってきます。このときドライバーに現金を持ち逃げされないようにITシステムを活用して、二輪車の現在地をトラッキングし、現金と商品の流れも見える化するなどの工夫を行っています」と松本氏。

事業展開に向けて強力なパートナーとなるのが、同じくアフリカ地域で事業展開するスタートアップ企業のワッシャ。同社はすでにタンザニア、ウガンダ、モザンビーク、コンゴ民主共和国で”キオスク”と呼ばれる小売店を通じた電力サービス事業などを展開している。

クーリメイトとワッシャは昨年(2022年)末、タンザニアにおけるラストマイルデリバリーの事業化に向けた協業契約を締結した。クーリメイトではワッシャの電子決済のシステムを活用して現金回収コストを下げるほか、ワッシャと協力関係にあるキオスクに購入者が荷物を受け取りにいく(いわゆるコンビニ受取のような)サービスも実現する。

取り扱う商品について松本氏は「嗜好品というよりは便利グッズに近いものになります。街中では売っていない、髭剃りだったり、サングラス、コスメ、サプリメント、クルマを洗う道具など。あとは薬局チェーンにある薬も取り扱いを始めています。こちらは注文が入ったらすぐに届けるエクスプレスのデリバリーです」と説明する。

また、ヤマハ発動機からも説明があった。同社 技術・研究本部NV・技術戦略統括部 統括部長の青田元氏は「実はアフリカの地域は、私たち二輪車を作ってきた人間からすると非常に関心の高いエリア。というのも、二輪車がまだ社会の基盤を担い、物流においても重要な役目を果たしているから。そこにデジタルを重ね合わせ、パートナー企業と事業展開していきます」と話す。

ゆくゆくはケニアへの進出も視野に入れている。「今回のビジネスモデルを通じて、どのくらい現地にサービスが受け入れられるか見極めたい。その後、タンザニアと同じレベルで経済発展している地域にも展開していけたら」(青田氏)。

今回の新規事業は、地域の社会課題の解決にも貢献する。青田氏は「これまで歩いて行ける範囲でしか仕事をしてこなかった人も、オートバイを手に入れることで、もしかしたら100km先の仕事がとれるかもしれない。自己資金で二輪車を購入できなかったお客様に対して、物流サービスで働く機会を提供しながら、二輪車のファイナンスも行う。そんな新しいスキームの構築を考えています。雇用の創出、安定した収入の確保、生活水準の向上。現地の人々にそれらを手に入れてもらうことで、ヤマハ発動機は社会課題を解決していく。いま、そんなところを目指しています」と説明した。

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら