「記者会見しません」行政処分から沈黙続ける損保 ビッグモーターとともに保険を揺るがす事態に、どこか優しい金融庁

ビッグモーターに係るSOMPOグループの自動車保険不正を巡る事案で、金融庁が下した業務改善命令への対応期限が迫っています。トップが「知らなかった」と言い残し沈黙を続ける損保側への対応を、金融担当相は言葉を選んで説明しました。
鈴木俊一金融担当相は2024年3月12日の閣議後会見で、ビッグモーター社とSOMPOグループの自動車保険不正を巡る事案について、両者との「対話を進めている」と話しました。収益拡大のために経営トップが代理店の不正に目をつぶった問題。その業務改善計画の提出期限が、3月15日に迫っています。
「記者会見しません」行政処分から沈黙続ける損保 ビッグモータ…の画像はこちら >>鈴木俊一金融担当相(中島みなみ撮影)。
ビッグモーター社による自動車保険の保険金不正請求で、SOMPOホールディングスと損保ジャパンは、1月25日に金融庁から行政処分(業務改善命令)を受けました。経営責任の明確化と保険金等支払の管理態勢確立を柱とする業務改善命令について、両者は経営トップの交代を明らかにしましたが、現状で社長退任に至ったのは損保ジャパンのみです。
そんな中で鈴木俊一金融担当相は、業務改善計画の受け取りに向けて「対話を進めている」ことを明らかにしました。
「損害保険ジャパン、それからSOMPOホールディングスによる業務改善計画、これの提出期限は3月15日金曜日までとなっております。現時点(3月12日)ではまだ提出されておりません。金融庁といたしましては現在、業務改善計画が改善命令により指摘した問題の発生原因としっかりと対応したものになるように、(計画の)策定プロセスにおいても、対話を進めているところです」
保険会社に対する業務改善は、保険業法に基づく行政命令ですが、計画に関するやり取りを鈴木氏は「対話」と、慎重に言葉を選びました。
事件の経緯はこうです。損保ジャパンの車両保険加入者の入庫あっせんを受けて、ビッグモーター社は依頼された車両を故意に傷つけるなどの手法で修理費の水増し請求をしていました。この不正により同社は保険代理店としての登録と指定自動車整備事業の取消を受けました。すでに会社分割方式による主要事業を新会社移行が始まっています。
一方、保険会社である損保ジャパンの経営陣は、出向する社員から不正行為の告発がなされていたにも関わらず収益拡大を優先し、保険契約者の利益を棄損。自動車保険の信用を傷つけました。
損保ジャパンを監督する責任を負うSOMPOホールディングスの櫻田謙悟CEOは経営責任について問われ「(損保ジャパンの判断を)知らなかった」と、1月26日の会見で話しています。また、金融庁から求められた「営業優先ではなく、コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成」についても、そもそも営業を優先するようなプレッシャーを損保ジャパンに与えたことはない、と金融庁の見解を否定しています。
こうした見解を最後に沈黙する損保グループに、保険代理店を管理することは可能なのでしょうか。鈴木氏は話します。
「ビッグモーター社を巡る不適切な保険募集事案が生じた原因の要因の一つは、損害保険ジャパンによる保険代理店の管理が不十分であったことであると考えています。背景には本年1月の損害保険ジャパンに対する業務改善命令の際に公表した通り、損害保険代理店と自動車修理工場を兼業する、いわゆる兼業代理店の育成や、兼業代理店を通じたビジネスモデル経営戦略のもとで生じるコンプライアンスリスクに関する経営認識の甘さなどの問題があったところを考えております」
その上で、次のような対応をとっていることを明らかにしました。
「これまでに把握をした事実関係や今週15日までに出される業務改善計画の内容等も踏まえつつ今後、実効性のある代理店のあり方について、制度や監督のあり方にも踏み込んでしっかり指導していく」
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SOMPOホールディングス櫻田謙悟CEO(中島みなみ撮影)。
改善計画の準備を進めるSOMPOグループは、計画提出後の対応について、次のように語ります。
「記者会見は予定しておりません。業務改善計画の内容を当社オフィシャルホームページに開示するとともに、実施状況についても開示していく予定です」(損保ジャパン広報担当者)
SOMPOホールディングスのグループCEO取締役代表執行役会長の櫻田謙悟氏は、3月15日の業務改善計画の策定を見届けた後の同月末日に退任の予定です。業務改善計画の策定は、今も櫻田氏のもとで続けられています。