「中絶したことが呪いのよう」50年以上苦しんだ女性も 喪失感に寄り添うには カウンセラーが助言

妊娠中絶後の喪失感に寄り添う「グリーフケアカウンセリング」の研修会(主催・一般社団法人おきなわ子ども未来ネットワーク)が2月18日、沖縄県浦添市内で開かれた。カナダの中絶後カウンセリング機関CAS認定のピアカウンセラー田中康子さんが、中絶後のストレス症状や癒やしのためのステップなどを紹介。「中絶は女性の人生に大きな影響を与える。理解し、気にかけることで女性は安心できる」と呼びかけた。対面とオンライン形式で約100人が参加した。
(学芸部・嘉数よしの)
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■「なかったこと」にする少女たち
冒頭、山内優子代表理事は「中絶した少女たちのケアはほとんどされておらず、(中絶を)なかったことにして日常生活に戻るのが現状」と説明。中絶は「忘れることができない出来事」であり、次に妊娠した際は多くの女性が「産む選択」をする姿も目の当たりにしてきた。「子どもを育てるには厳しい環境であることがほとんどなので、中絶後の心と体のケアの必要性を感じていた」と語った。

田中さんは、中絶後の女性には(1)悲しみ(2)中絶を隠そうとする精神的な無感覚状態(3)罪悪感、羞恥心(4)妊娠、子育てへの不安(5)自分に価値がないと思う-などのストレス症状が見られると解説。相談者には75歳の女性もおり、「20歳で中絶したことが呪(のろ)いのようで、それ以来、心地よく生きられなくなった」と打ち明けたという。中には摂食障害や自傷行為が現れることもあり、「悲しみのプロセスの中で、経験しなければならない癒やしのステップがある」と説明した。
■生い立ちを傾聴して癒やす
その過程で大切なのが「人生や生い立ちなども含めて自分自身のことを話すこと」。女性たちは罪悪感や羞恥心、怒りなどが複雑に絡み合って苦しんでいることが多く、自身の生い立ちも関わるという。文化的背景や家庭環境、誰に対する怒りがあるのかなども含めて話し合い、吐き出してほしいとし「区切りがつくまで寄り添い、癒やしてもらえたら」と望んだ。
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「人を許すことも次のステップにつながる」と田中さん。自身も中絶やパートナーとの離別を経験したが「罪悪感や苦い思いを抱くことから解放されたことで前に進めた。寄り添ってくれる人がいたからできたこと。(中絶した女性が)心を開けるよう、一緒に考えてほしい」と促した。