子育て世帯優先レーンは不公平なのか 政府が取り組む「こどもファスト・トラック」とは

(柳沢彩美アナウンサー)少子化対策の一環という、この「こどもファスト・トラック」、改めて概要を確認してみます。
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CBC
(佐藤楠大アナウンサー)はい、こどもファスト・トラックとは、公共・商業施設などの受付で、妊婦さんや子連れ家族を優先する取り組みです。こども家庭庁は待ち時間を短縮し、施設を利用しやすくすることで、子育て世帯に優しい社会を目指すとしています。実証実験が行われました。名古屋城です。入場待機列に優先レーンを設置したところ、最大120分待ちのところ、該当する方は20分~30分待ちに短縮されたということなんです。
名古屋城での実証実験
名古屋城での実証実験
(柳沢アナウンサー)今回、ゴールデンウィークの期間中に、観光施設である名古屋城で行われたということなんですが、観光地以外でもこうした取り組みは実施されてるんですよね。
(佐藤アナウンサー)そうです。こどもファスト・トラックの導入例です。美術館・博物館ですと、この地方では名古屋市美術館で導入されていました。去年の夏休みです。そしてスポーツ施設、バンテリンドームナゴヤでは今年3月のオープン戦で実施されました。また交通機関ですと、中部空港の税関検査場で優先レーンを利用できるということです。またそれ以外にも、行政の窓口などでも、このファスト・トラックが導入されていることがあります。
名古屋城での実証実験
CBC
(柳沢アナウンサー)私も子育て世帯なので、こういった優先を受ける側なんですけれども、こういう取り組みは非常にありがたいんですが、利用者側で「もっとこうしてほしい」というニーズが多いのも現状なんです。
(佐藤アナウンサー)そうなんです。子育て世帯が求める“配慮”ということで、こども家庭庁が調査しています。ベビーカーなどが移動しやすく、使いやすい施設や設備が欲しい、周りの寛容な姿勢やサポートが欲しいといった声が、全体の20%以上をそれぞれ占めています。そして優先対応のルールや呼びかけ、こちらが10%弱となっています。具体的な声を見ていきましょう。「トイレを我慢できない子どもに優先的に利用させてほしい」「優先エレベーターでも混んでいて乗れない」「フードコートなど飲食スペースが混んでいて、子連れでも席を譲ってもらえない」などといった意見が挙げられています。
CBC
(柳沢アナウンサー)こういった意見を見ていると、ちょっと個人の意見なので「それはどうなのかな」って思う方がいるかもしれません。フードコートなんかについては、私自身も経験ありますけれど、それで譲ってもらえないからといって“いけない”わけじゃなくて、皆さんが配慮し合って思いやりの中でできていくことなので、それには皆さんの理解が必要だと思うんですが、「それってどうなのか」という意見もありますよね。公平性については、これ賛否あるかもしれませんではですね。
(大石邦彦アンカーマン)小倉將信 前こども政策担当大臣は、子育て世帯への認識について、「自然と周囲の方々が、子どもや子育て当事者を応援するような社会に変わっていくことが、あるべき姿ではないか」と言っているんですね。この背景に何があるかというと、厳しい「少子化の現実」があるわけなんです。
(柳沢アナウンサー)これはもうこの先見据えて、社会全体でも、そういうふうに意識を変えなきゃいけないというときなんですかね。
CBC
(大石邦彦アンカーマン)そうなんです。非常に厳しい現実が待ってるんですね。人口戦略会議が出した試算です。「消滅可能性自治体」というワードがあります。これ何かといいますと、20歳~39歳までの女性人口が2050年までに50%以上減少する自治体なんですね。
CBC
出生数が低くなる人口減少に歯止めがかからなくて、その住んでいる自治体100年後には、10分の1まで人口が減ってしまうというところが、愛知で7つ、岐阜で16、三重で12もあるんですね。皆さんのお住まいの地域はどうなのか。岐阜は、北部の飛騨市から、西濃、東濃の中山間地域を中心に、まんべんなくといった感じです。ただ名古屋市の近く、愛知県との県境はこの「消滅可能性自治体」に該当していないようです。
岐阜県「消滅可能性自治体」
続いて愛知県は東三河に集中しているのがよくわかります。西部で見ますと津島市、そして知多半島の先端、美浜町、南知多町も該当しています。
愛知県「消滅可能性自治体」
続いて三重県です。北部は木曽岬町なんですが、南部に12市町が集中しているんです。これまでの少子化対策っていうのは“限られた子どもをみんなで取り合っていた”んですけれども、これでは根本的な解決になりませんから、やはり日本全体でどうすべきかというのは考えないといけませんね。
三重県「消滅可能性自治体」
(柳沢アナウンサー)子育て世帯としてはありがたい、この「こどもファスト・トラック」ですが、「配慮されて当然」というわけではなく、皆さんの理解、思いやりの上で優遇されているということを忘れないようにしたいと思います。