パリッコのおつまみ革命 第47回 とっろとろの口溶け! お手頃な豚タンと市販のルーで牛タンに引けを取らない贅沢感「豚タンシチュー」

突然ですが、大衆酒場の人気メニュー、「煮込み」といえば、定番の食材は、牛もつ、牛すじ、豚もつあたりですよね。ところが先日、スーパーでお手頃に売っている焼肉用のもつ肉類を、牛豚鶏問わず、あれこれごった煮のように煮込んだ、名づけて「闇煮込」を作ったらおもしろいのでは? と思いつき、やってみたんです。

そしたらこれが、ものすご~く楽しくて、美味しかった。焼肉用の肉を、表示を無視して煮込み料理に使っちゃうの、超ありだなと。

そして、いろいろ入れたなかでも抜群だったのが、豚タン。これが意外にも、牛タンの煮込み料理なんかにも引けをとらないほどの美味しさだったんです。

牛タンといえば、洋風のデミグラスソース煮込みや牛タンシチューなんかも定番メニュー。そこで、今回はそれを、豚タンで作ってみようというわけですね。
○時間だけはかかりますが

さっそく豚タンを買ってきましょう。量はてきとうでいいんですが、今回は合計約260g。

で、これを煮込んでいくわけですが、今回のレシピ、まったく難しいことはないけれど、時間だけはけっこうかかります。晩酌前にさっと作ってさっと食べられる、という感じではないので、そこだけご了承ください。

というわけで、買ってきた豚タンをじゅうぶんな量のお湯でゆでられるくらいの大きさの鍋に、まずはたっぷりとお湯をわかしましょう。

沸騰したらそこへ、豚タンと、てきとうな大きさにざく切りした玉ねぎ1個分を投入。

もう一度沸騰したら火加減を弱火に変え、鍋やコンロの性能によって差異は出てくるかと思いますが、目安として2時間くらい、気長にコトコト煮込んでいきましょう。たまに様子を見て、水が減理すぎていれば足したりしながら。

そしてこちらが2時間後の様子。

肉は完全に柔らかくなっており、玉ねぎは、お玉などでかき混ぜるだけで溶けていってしまいます。このくらいの状態が目安。

そうしたらここへ、市販のビーフシチューのルー1/2箱を加えます。ハヤシライスみたいな、似た感じのルーでもぜんぜん代用可。なんなら別にカレールーでも(別の料理になっちゃうけど)。

鍋をもう一度沸騰させ、火を止めてルーを投入。全体を混ぜながらよく溶かしましょう。

で、ここからちょっと説明が難しいんですが、今回の方法だと、市販のルーの箱に書いてある「ここで水を〇〇ml足してください」みたいな説明どおりには作れないですよね。お鍋の水がどのくらい蒸発しているかは、その日の状況によるので。なので、ルーが溶けたら味見をしてみて、もしも濃すぎるようなら水を足すなど、目分量で仕上げをしていただきたく思っております。薄くなりすぎたらまぁ、また煮詰めりゃあいいでしょう。

そして最後に鍋をもうひと煮立ちさせたら、いよいよ完成。

お好みで生クリームやコショウなどをかければ、

長時間煮込んだだけあり、タンがもう、本気でとろっとろに柔らかくなっています。ただそれだけでなく、タンならではの繊維っぽくほぐれる食感はきちんと残っていて、独特の旨味もしっかりある。それが玉ねぎの甘さたっぷりのまろやかソースと合わさり、本当~にぜいたくな味わい! ワインをはじめとしたお酒にはもちろん、当然ごはんにも合いすぎます。

というわけで、時間はかかるけれども、それ以上の満足感をきっと感じられるはずな一品、豚タンシチュー。金曜の夜に運良く値引き品の豚タンをゲットして、土曜にゆっくりと仕込むなんてシチュエーション、考えただけで幸せになれますよね。
○【材料】

・焼肉用豚タン:約300g
・玉ねぎ:1個
・ビーフシチューのルー:1/2箱
・生クリーム:お好みで
・コショウ:お好みで
※すべての分量は目安です。お好みで調整してください。
○【作りかた】

1.鍋にたっぷりのお湯をわかす。
2.豚タンと、ざく切りにした玉ねぎを入れ、再度沸騰したら弱火にする。
3.そのまま約2時間煮る。たまに様子を見て、水が減りすぎていれば足す。
4.お玉でかきまわすと玉ねぎが溶けてしまうくらいになったら、再度沸騰させて火を止め、ビーフシチューのルーを入れて溶かす。
5.最後にもうひと煮立ちさせつつ、味が濃すぎるようなら水を足すなど調整する。
6.お好みで生クリームやコショウをかける

パリッコ ぱりっこ 1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、他。酒好きが高じ、2000年代後半より酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。 この著者の記事一覧はこちら