航空マイルの特典航空券への交換は、JALとANAで考え方がけっこう異なります。JALの場合は、いったん「eJALポイント」へ交換したほうが、お得に航空券を取れるケースも。お得にならないケースとの見極めもポイントです。
日本の大手航空会社であるJAL(日本航空)とANA(全日空)は、それぞれ「JALマイレージバンク(JMB)」「ANAマイレージクラブ(AMC)」という会員組織があり、会員は飛行機への搭乗やクレジットカードの利用で「マイル」が貯まり、貯めたマイルを無料の「特典航空券」などに引き換えることが可能です。この特典航空券を目標に、日常の支払いを航空会社系のクレジットカードに集約し、マイルを貯めている人も多いのではないでしょうか。
マイルを航空券に交換…ちょっと待て! 「ポイント」にした方が…の画像はこちら >>JALとANAで特典航空券の考え方はけっこう違う。写真はイメージ(乗りものニュース編集部撮影)。
ただ、「貯まったマイルを特典航空券に交換できる」という仕組みそのものは両社に共通ですが、じつはその内容にはいくつかの違いがあり、これがマイルの活用において、重要なポイントとなっています。
ではまず、国内線の特典航空券における両社の違いを見ていきましょう。
ANAは、年間を「L(ローシーズン)」「R(レギュラーシーズン)」「H(ハイシーズン)」の3シーズンに区分し、それぞれのシーズンで、区間ごとに特典航空券への交換に必要なマイル数を設定しています。
たとえば東京(羽田)-沖縄(那覇)の普通席片道であれば、Lが7000マイル、Rが9000マイル、Hが1万500マイルです。ただ特典航空券に割り当てられる席数は決まっていて、規程のマイル数でいつでも特典航空券に交換できるわけではありません。
それに対してJALは「国内線特典航空券PLUS」という、希望の便において基本マイル(その路線の特典航空券の交換に必要な最低マイル)で特典航空券向けに割り当てられた空席がなくなっても、有償航空券向けの空席があれば、マイルを追加することで予約できる仕組みを導入しています。
たとえば先のANAと同じ東京(羽田)-沖縄(那覇)という路線では、基本マイルは9000マイルで、ANAのレギュラーシーズンと同じです。しかし特典航空券向けの空席がなくなっても、最大3万7500マイル(2024年7月11日発券分からは4万4500マイル)の支払いにより、予約ができるのです。
これがJALとANAとの、国内線特典航空券における大きな相違点となります。
さらにJALは、マイルを「eJALポイント」という、1ポイント=1円相当の電子クーポンに交換できる仕組みを用意しています。
交換レートは1000マイルでは1000ポイント(1000円相当)、1万マイルでは1万5000ポイント(1万5000円相当)となります。
前述のようにJALの国内線特典航空券PLUSは、残りの空席数により必要なマイル数が変動します。そのため、マイルを利用して航空券を予約する際は、「マイルからそのまま特典航空券に交換する」「マイルをいったんeJALポイントに交換して、航空券の支払いに使う」のどちらが有利か、きちんと見極める必要があるのです。
具体例を見てみましょう。2024年8月24日(土)のJAL921便で東京(羽田)から沖縄(那覇)、8月26日のJAL904便で沖縄(那覇)から東京(羽田)を普通席に搭乗する旅程では、特典航空券への交換に必要なマイル数は9000マイル×2で1万8000マイルとなり、さらに国内線旅客施設使用料1220円がかかります(マイル数、運賃等は5月中旬の取材時点。以下同)。
一方、同じ旅程を、空席に応じて運賃額が変動する「往復セイバー」運賃で購入すると、片道1万2418円、往復で2万4836円(国内線旅客施設使用料1220円含む)です。
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JALの国内線特典航空券PLUS。特典航空券で希望していた便に有償航空券向けの空席があれば、マイルを追加することで予約できる(画像:JAL)。
もし特典航空券交換に必要な1万8000マイルをeJALポイントに交換すれば、2万7000マイル(便宜上、1万マイル=1万5000eJALポイントのレートで計算)となり、この旅程の航空券を往復セイバー運賃で購入しても、“お釣りが来る”ことになります。
しかも往復セイバー運賃での搭乗では、JMB一般会員の場合、往復で1476マイルが貯まるため、マイルから特典航空券に交換するよりも、いったんeJALポイントを経由して航空券を購入したほうが有利になるのです。
では同じ日程で、往路を予約時点でより空席が少ないと考えられるJAL901便、復路を同様のJAL916便とした場合はどうでしょうか。
この場合、必要マイルは往路1万3000マイル、復路1万3000マイルで、往復2万6000マイル、さらに国内線旅客施設使用料1220円がかかります。
この旅程を往復セイバー運賃で購入すると、往復にかかる運賃は往複それぞれ2万2555円で、合計4万5110円(国内線旅客施設使用料1220円含む)となり、これを満たすためのeJALポイント交換に必要なマイル数は3万74マイル相当となります。つまりこの場合は特典航空券交換に必要な2万6000マイルでは、eJALポイントでの往復セイバー運賃での航空券購入に4000マイル以上足りないことになります。
これに、搭乗により貯まるマイルを加算してもその差は埋まらず、往路901便/復路916便利用のケースでは、特典航空券に直接交換したほうが有利だという結論になります。つまり便ごとの運賃に応じて、マイルからの直接交換か、eJALポイント経由での交換か、お得になるケースが分かれてくるのです。
なお往復セイバー運賃と特典航空券では、キャンセル料の扱い、JALでのステイタス判定に使われる「Life Statusポイント」加算の有無、さらに交換して“端数”となったeJALポイントの有効期限の問題など、消費マイルの比較だけでは決められない差異もあります。またJALの上級会員は搭乗マイルにボーナスマイルが付与されるため、異なる計算結果となります。
一方のANAも、マイルを電子クーポン「スカイコイン」に交換できる仕組みを用意していますが、ANAではマイルからスカイコインへの交換率のカーブが大きく、一般会員で1万マイル=1万5000スカイコイン(1.5倍)以上になるのが4万マイル以上の交換であること、また特典航空券の交換に必要なマイルがJALとは異なりシーズン変動制であることから、一般的にはマイルから直接、特典航空券に交換することが有利だと考えられます。JAL同様の試算については、各自でご確認いただければと思います。