ラーメン二郎で火事が発生 客の行動に「日本人らしさが出てる」「おかしい」

2024年5月28日の正午前、人気ラーメン店『ラーメン二郎 新宿歌舞伎町店』の店舗内で、調理中に火事が発生。
各メディアを通じてニュースが各SNS上に拡散されると、Xでは『正常性バイアス』というワードがトレンド入りしました。
同月29日現在、さまざまな声が上がるとともに議論が巻き起こっています。
店内に客がいる中で発生した『ラーメン二郎 新宿歌舞伎町店』での火事は、消防車などが出動する事態に。
店舗内の壁が少し焼けるなどしたものの、消火活動のおかげで火は消し止められ、ケガ人はいなかったといいます。警視庁によると、火事の原因は油への引火とみられているそうです。
店内で客が逃げずにラーメンを食べ続けていた様子がテレビなどを通して放送され、「店員が率先して避難をうながすべきでは」といった非難の声も上がっています。
そんな中、最も注目されたのは「なぜ客は避難しようとしなかったのか」という点。こうした客の行動について、「『正常性バイアス』が働いたことによるものではないか」という声が、多数上がっているのです。
【ネットの声】
・煙が上がる中、客は呑気にラーメンをすすっていたとのこと。これぞ『正常性バイアス』。
・明らかにおかしい状況でも、避難指示などがないと『異常』だと気付かないのだろう。
・これこそが『正常性バイアス』の恐ろしさ。ラーメンがもったいないのは分かるけど、異常が発生したら逃げるべき。
『正常性バイアス』は、人が意思決定をする際、先入観や経験則などに基づいて非合理的な判断をしてしまう心理傾向を指す『認知バイアス』の一種です。
自分にとって都合の悪い情報を無視したり、異常を正常の範囲内だととらえたりする心理的な特性だといいます。日常生活で感じる不安や恐怖を減らし、心をストレスから守る役割もあるとか。
『正常性バイアス』についてさらに調べると、警視庁警備部災害対策課のXアカウントが過去に投稿した内容より、災害時と関連が強い心理的な特性であることが分かりました。
人には心の平穏を保つため、自分に都合の悪いことや危険を無視したり、過小評価する「正常性バイアス」という心理がはたらくことがあるそうです。災害時には、「今まで大丈夫だったから」という根拠のない考えは、命取りになる場合があります。「安全に避難できるうちに逃げる。」を忘れないで下さい。
過去に国内で発生した災害を振り返ると、「自分のいる場所は安全だろう」といった思い込みにより津波による死者数が続出した、2011年発生の東日本大震災は、『正常性バイアス』が働いた事例の1つ。
また、2020年からのコロナ禍において「自分は感染しないだろう」と高を括って不要不急の外出を繰り返す人が後を絶たなかったのも、同様の心理が働いた結果だといわれています。
これら過去事例と重ねれば、今回の火事における客の行動を「『正常性バイアス』が働いた」とする考えは、的を射ているように思えます。
『正常性バイアス』が取り沙汰される一方、「これは『正常性バイアス』とは違う何かだ」などの否定的な意見とともに、「『同調性バイアス』が働いたのでは」という意見も見られました。
【ネットの声】
・火事中にラーメンを食べ続けているジロリアン達が『正常性バイアス』とかいわれているけど、日本人特有の『同調性バイアス』だと思う。
・小さめの集団心理か『同調性バイアス』なのでは。客たちも「自分は大丈夫だ」と思いながら食べていたようには思えない。あんな煙だらけで。
・火事の件、『正常性バイアス』とは別の意志を感じる。
『同調性バイアス』とは、周囲にいる人に合わせて行動しようとする心理的な特性のこと。
日常生活においては協調性を高める行動につながるそうです。しかし、災害時に「自分だけなら避難するのをやめようかな」といった心理が働けば、津波や火の手から逃げ遅れるなどの危険に巻き込まれる可能性が高まってしまいます。
今回の火事でいえば「ほかの客は避難する気はなさそうだし、このままでいいや」という心理状態でしょう。
客と同じ状況を想像すると、「このまま食べ続けよう」といった心理が働いてしまいそうで、少しゾッとしますね。
『ラーメン二郎 新宿歌舞伎町店』での火事をきっかけに注目された『正常性バイアス』と『同調性バイアス』の2つに共通するのは、いずれも人間の深い心理に基づくものであること。
心理そのものをコントロールするのは難しいものです。そのため、私たちに求められるのは、常日頃から「今の自分は危機を認識できていないかもしれない」など危機感を持つ訓練をすることなのかもしれません。
今回の火事の事例は、2つの心理の存在が多くの人に知れ渡る、よいきっかけといえます。
こうした身近な話題から徐々に危機への意識を培うことが、いざ災害が起きた際などに自らや大切な人を守るために必要といえるでしょう。
[文・構成/grape編集部]