新NISAが始まって半年以上経ちましたが、皆さん活用していますか?新NISAのつみたて投資枠は年間最大120万円に拡充されたので、月間にすると10万円まで非課税で投資できます。しかし、毎月10万円を投資にまわせる人は限られてくるでしょう。そこで、年収がいくらあれば、毎月10万円の積み立てが可能なのか、家計収支から無理のない積み立てができる年収を導き出してみたいと思います。さらに最終的に積立額がいくらになるのか、投資期間と年利ごとに表した一覧表も掲載しているので参考にしてみてください。
新NISAで毎月10万円の積み立ては現実的?
最初に新NISAの概要をおさらいしておきましょう。
新NISAは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円、あわせて年間360万円まで非課税で投資ができます。そして、生涯を通して非課税で運用できる限度額1,800万円の枠が設けられました。保有している投資信託などの購入金額の合計が1800万円を超えない限り、何年でも投資や保有を続けられます。また枠の再利用ができるので、商品の入れ替えも可能です。
年間投資枠が拡大(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)
非課税保有限度額1,800万円(成長投資枠は1,200万円)※枠の再利用が可能
新NISAでは積立投資しかやらないという人は、まずはつみたて投資枠を利用すると思いますが、成長投資枠でも積立投資は可能です。そのため、やろうと思えば、月30万円の積み立ても可能です。しかし、現実問題として、月30万円の積み立てができる人はなかなかいないと思います。
それでは月10万円はどうでしょうか。可能な気もしますが、生活費とは別に用意しなければならないので、それなりの収入がないと実現できません。ただ、月10万円を投資にまわすことができれば、15年で元本は1,800万円になり、生涯投資枠を使い切ることができます。50歳から積み立てを始めるのなら、月10万円を積み立てないと間に合わないという言い方もできるでしょう。月10万円の積み立ては、厳しいながらも、目標設定としては十分あり得る金額といえます。
毎月10万円の積み立てができる年収は?
では、実際に、月10万円を積み立てできる年収を試算してみたいと思います。
前提条件として、10万円の積み立てと生活費以外に、手取りの20%を貯金できる家計収支を設定したいと思います。生活費以外のお金をすべて投資にまわすのはリスクがあるため、投資とは別にすぐに引き出せるお金も準備しておく必要があります。
生活費は、1人暮らしのケースと家族がいるケースでは大きく違うため、総務省の家計調査から、単身世帯と二人以上の世帯の生活費の平均値を用いて、2パターンを試算してみます。
*1人暮らしの場合
総務省「家計調査・家計収支編2023年」のデータを参考にすると、勤労者世帯の単身者の生活費(消費支出)の平均は18万2,114円です。ここに新NISAに積み立てるお金10万円を加えると約28万2,000円となります。さらに手取りの20%相当の貯金を加えた額が月の手取りになればいいわけです。ここから逆算すると月の手取りは35万2,500円となります。年間にすると423万円です。手取りを額面(年収)の80%とすると、年収は528万7,500円となります。
単身者の場合、約530万円の年収があれば、毎月10万円の積み立てが可能となります。
*家族がいる場合
同調査から、二人以上の世帯(勤労者世帯)の生活費をみてみると、31万8,755円となっています。世帯人員から夫婦と子1人の3人家族をイメージするといいでしょう。生活費と新NISAの積み立て10万円を合わせると約42万円となります。ここに手取りの20%相当の貯金を加えて計算すると、月の手取りは52万5,000円となります。年間にすると630万円です。手取りを額面(年収)の80%とすると、年収は787万5,000円となります。
家族がいる場合は、約800万円の年収があれば、毎月10万円の積み立てが可能となります。
家族の人数や子どもの年齢、住んでいる地域、住居(持家か賃貸か)などによって、生活費は大きく変わってくるので、あくまでも平均値をもとにした目安としてみてください。
毎月10万円を新NISAで積み立てると最終的にいくらになる?
最後に、月10万円を積み立てたら、最終的にいくらになるのか、投資期間と年利ごとに表した一覧表を作成しました。
ここで留意したいのが、月10万円の積み立ての場合、15年で新NISAの生涯投資枠1,800万円を使い切ってしまうため、その後は新たな積み立てはせず、運用のみで据え置いた場合の最終的な金額を表しています。
「毎月10万円」の積立投資の運用成果
年利3%の運用で15年間積み立て、さらに15年間据え置けば1,800万円の元本がほぼ倍になることがわかります。通常は運用利益に対して約20%の税金がかかりますが、NISAの場合は非課税となるので、運用利益がまるまる手元に残るのは大きなメリットです。
今回の試算で、毎月10万円の積み立ては、単身者の場合、年収約530万円、家族がいる場合は年収約800万円で可能であることがわかりました。この結果に、「自分もできそう」と思った人は意外と多いのではないでしょうか。また、いきなり10万円の積み立てから始めずに、3万円、5万円と徐々に増やしていく方法でもいいと思います。新NISAを活用して、効率よく資産を増やしていきましょう。
石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら