宮崎県沖の日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が8日、発生した。地震の規模を示すマグニチュード(M)は7・1と推定される。この地震で気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を初めて発表した。
聞き慣れない言葉に驚き、不安な夜を過ごした人もいるだろう。改めて、命を守る行動を確認したい。
臨時情報は、駿河湾から日向灘沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が平常時に比べ相対的に高まった場合に気象庁が発表する。今回、Mが7以上、8未満だったことから「巨大地震注意」が発表された。
最大規模の地震が発生した場合、関東から九州にかけての広い範囲で強い揺れや、関東から沖縄にかけての太平洋沿岸で高い津波が想定される。1週間程度は注意が必要だ。
南海トラフ巨大地震の「防災対策推進地域」に指定されている全国29都府県707市町村には、避難態勢の準備が求められる。
南海トラフ巨大地震は100~150年間隔で起き、政府の地震調査委員会はM8~9級の地震が30年以内に起きる確率を70~80%と算出する。想定される死者は最大32万3千人に上る。
臨時情報の中の「巨大地震注意」は、事前避難は求めないが、地震への備えを再確認したり、地震の発生に注意しながら生活を送るよう促すものだ。
過度に恐れず、冷静に非常時に備えたい。
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震度6弱以上の激しい揺れや高さ3メートル以上の津波が想定される防災対策推進地域に名護、糸満、豊見城、うるま、宮古島、南城など県内の16市町村が含まれている。
各市町村は8日以降、災害警戒本部を設置したり、緊急会議を開いたりするなど対応に当たっている。
糸満市は職員4人が午後10時まで待機し、その後も1人が朝まで庁舎に待機する態勢を1週間続ける予定だ。
県も8日から、職員を増員して24時間態勢で警戒に当たっている。
ことし4月に台湾東部沖で地震が発生し県内に津波警報が発令された際、避難経路の交通渋滞や外国人への多言語対応などの課題が浮き彫りになった。
行政機関には、課題解決を急ぎ、対策を再点検するなど防災力の強化に努めてもらいたい。
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専門家は「(巨大地震が)いつ起きてもおかしくない状態から、可能性が数倍になった。地震学的には極めて高い確率」だと警鐘を鳴らす。
今の科学では、地震を予知することはできない。私たちにできることは備えることだ。
防災マップなどで避難場所や避難経路を確認する、家族で安否確認の方法や連絡手段を決めておく、1週間程度の水や食料を備蓄しておく-。
備えをチェックし、足りなければ補う。今できることを実行したい。