自民党総裁選広告「THE MATCH」は「おじさん」どころか「腐敗ジジイの詰め合わせ」だ! 担当の平井広報本部長は親族ぐるみ税優遇

告示は9月12日とまだまだ先であるにもかかわらず、メディアはすでに自民党総裁選の話題一色。テレビでは今月30日に立候補を表明すると見られる小泉進次郎氏や出馬表明第一号となった小林鷹之氏を取り上げては、「国民的人気が高い進次郎」「高学歴・高身長のコバホーク」などとお祭り騒ぎを繰り広げている。
自民党や候補者は「派閥なき総裁選」だの「新しい自民党に生まれ変わる」だのと喧伝し、メディアもそれに同調したかのように報じているが、まったくとんでもない話だ。
自民党は何も変わっていないどころか、変わる気配さえない。そのことを象徴するのが、21日に自民党が発表した「総裁選ポスター」とネット動画だ。
「THE MATCH」と題されたそのポスターには、安倍晋三・元首相をセンターに小泉純一郎や田中角栄、麻生太郎、森喜朗、佐藤栄作、岸信介など「歴代総裁の雄姿」(自民党HPより)を散りばめ、〈時代は「誰」を求めるのか?〉というコピーを配置。「来年、立党70年を迎えるわが党が戦後の政治をリードしてきたことを表す重厚なデザイン」に仕上げたという。
さらにネット動画では、「守るべきものは守り、変えるべきときは躊躇しない。この国を導けるのは誰だ」などというナレーションが流れ、アクション映画の予告のようなBGMとともに歴代総裁たちの演説シーンが次々に流れるというシロモノだ。
裏金事件や統一教会問題で金権政治やカルトとの癒着が問われているというのに、まるで何事もなかったかのように総裁選をショーアップする。パンを配ることもなく、自前のサーカスですべてを水に流そうとは自民党の姑息さにほとほと呆れるほかないだろう。
しかも、このポスターについて「おじさんの詰め合わせって感じがするんですけど」とコメントしたトラウデン直美が「男性差別だ」などと攻撃を受けているが、過去の自民党総裁がすべて男性なのは歴然たる事実。このように女性を排除してきた自民党の歴史をわざわざポスターにして掲げることに躊躇しなかったことを考えれば、「おじさんの詰め合わせ」というのは差別どころか十分にクリティカルなコメントではないか。
いや、「おじさんの詰め合わせ」なんて表現では生ぬるいぐらいだろう。本サイトに言わせれば、このポスターは「金権政治にまみれた腐臭漂うジジイどもの詰め合わせ」だ。
安倍派裏金問題の黒幕とも目される森喜朗に、ロッキード事件や金脈問題に揺れた田中角栄、「黒い霧事件」で政治不信を招いた佐藤栄作。リクルート事件で未公開株を受け取っていた中曽根康弘や竹下登、宮澤喜一、小渕恵三ら。日歯連ヤミ献金事件の橋本龍太郎と、政界汚職の実態が明らかになっても責任逃れに終始した小泉純一郎。そして、河井克行・案里夫妻の大規模選挙買収事件への関与がいまも根強く囁かれる安倍晋三と菅義偉……。
今回の総裁選は、裏金事件に対して自民党がどのような態度を取るのかを世間に示すものであるはずだ。にもかかわらず、金で政治を動かし、金で票を買い、さらには疑惑に蓋をしてきた歴代の総裁たちを総裁選の“顔”に選び、広報に使う──。ようするに、この期に及んでも自民党は「金権腐敗」政治に対する反省などまったくない、ということを誇示しているのだ。
そのうえ、さらに呆れたのは、この総裁選ポスターの発表会見をおこなったのが、自民党の広報本部長を務める平井卓也・元デジタル大臣だったことだ。
平井氏はポスターの発表会見で、党で開発したAIを活用したことなどを得意満面で語っていたが、平井氏といえば、今年6月に自身が代表を務める党支部へ2020年に個人名義で1000万円を寄付し、所得税が減額される優遇措置を受けたことが発覚。平井氏はその事実を認めたものの、「おそらく同じことをしている議員はたくさんいる」などと開き直ったような態度を取っていた。
だが、今月17日には、平井氏のみならず平井氏の妻と母親、長女の親族3人が2020年から2021年に計4000万円を平井氏が代表を務める党支部に寄付し、所得税の一部を控除される税優遇を受けた疑いがあることを毎日新聞がスクープ。ちなみに、平井氏の実家は地元・香川で大きなシェアを誇る四国新聞などメディア企業を経営する「華麗なる一族」と呼ばれており、母親は四国新聞社の社主だと言われている。
親族の税控除疑惑について平井氏は「税理士からは何も問題はないと聞いています」と回答しているが、法の抜け穴を悪用して家族ぐるみで税優遇を受けていたとなれば、政治家としての倫理観が欠如していると言わざるを得ない。
そして、裏金事件と同様に政治家の税優遇問題も批判されてきたというのに、その批判を受けての総裁選ポスターを発表する会見を、親族の税優遇疑惑までもが報じられたばかりの平井氏が平然と取り仕切るとは……。恥も外聞もないとは、まさにこのことだろう。
しかも、ほとんどのメディアが、この自民党の宣伝でしかない総裁選ポスター発表会見の内容を無批判に垂れ流す始末。さらに、会見に税優遇問題を抱えた平井氏が登場したことの問題を指摘しないばかりか、平井氏の親族の税優遇疑惑をスクープした毎日新聞を後追いするメディアも皆無の状態だ。
裏金事件など「自民党とカネ」の問題を終わったことにしようと必死の自民党と、お祭り騒ぎに便乗し、批判をなおざりにするメディア。この異常な状況のなか、『news23』(TBS)では時事芸人のプチ鹿島がこんな重要な指摘をしていた。
「忘れてはいけないのは、この11人のまさに裏には、80人近くの裏金議員が、息を潜めて総裁選に期待しているということ。顔が替われば自分たちは何の説明もせずに刷新できる」「僕が気になるのは『刷新感』という言葉で、『刷新』ではない。みんな『刷新感が必要』と言っている」
刷新ではなく「刷新感」。「やってる感」と同じく、「刷新されたようなイメージ」さえ刷り込めればいいと考えているのではないか、というわけだ。
自民党とカネの問題に切り込もうとしない総裁選に、何の期待もできるはずもない。メディアは今後も1カ月以上も騒ぎつづけることになりそうだが、「刷新感」という自民党の詐術を批判していくしかないだろう。