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3月27日(月)放送後記
プラスチックごみの海洋環境への影響が問題となっています。自宅であっという間にペットボトルが溜まったり、プラスチックごみについては、みなさんも実感があるのではないでしょうか?
大事なことはプラスチックそのものの利用を減らすこと、ですよね。プラスチックメーカーも様々な工夫をして、この問題に取り組んでいます。
そんな中、プラスチックの利用も減らせて、廃棄物処理にもなるヘルメットが開発されました。それが、ホタテの貝殻を使った廃棄物由来のプラスチックで作ったヘルメット「ホタメット」。
開発した大阪市のプラスチックメーカー、甲子化学工業企画開発部の南原徹也さんに「ホタメット」開発の経緯を伺いました。
甲子化学工業企画開発部の南原徹也さん「今まで通りの考えでプラスチックを使い続けると、廃棄物というのがどんどん増えていってしまう、環境負荷もかなり高くなってしまう、というので、何か今すぐ私たちができる方法を探して取り組まなければいけない、と。そんな中で、エコプラスチックへの取り組みというのをしていた中で、始めはタマゴの殻を使ってエコプラスチックを開発するようなことをしていました。その時に、やはり日本全国いろんな廃棄物で困ってる方がいらっしゃる、ということを聞きまして。タマゴの殻というのは弊社以外にもたくさんやっている会社があったのですが、ホタテの貝殻というのが、誰も手をつけず問題になったまま、ということが分かりまして、それであればということで、ホタテの貝殻に着目し始めたと言うところになります。そうなんです、ちょっとダジャレ風なんですけど、殻がもともと、ホタテの身を守っていたように、人間であったり、自然環境であったり、そういう守るというのをキーワードに、繋げていきたいなと思っています。」
ホタテの貝殻でを活用したプラスチックで作ったヘルメットです!
南原さんたちは、タマゴの殻だけでなく、抽出後のコーヒーの粉や焼却灰を活用した廃棄物由来のプラスチックを開発してきましたが、今回はホタテの貝殻に挑戦しました。
というのも、ホタテの貝殻の処分に困っているところがある、と聞いたからなのですが、それが、ホタテの水揚げ日本一になることも多い、北海道の猿払村。
猿払村では、ホタテの貝殻は年間2万トン発生し、約1万トンが堆積されているんです。道路の路盤材やチョークの原料、カキの養殖などに使われますが、ここ最近は大きな需要だった海外への輸出がストップしてしまったことで、活用が滞りどんどんどんどん積み上がっていました。そこへ「ホタメット」の提案がきたのです。
ホタテの貝殻を使うのだから、中の身を守るホタテの殻をヒントに、人々の頭を守るヘルメット「ホタメット」を思い付いた南原さんたちですが、ホタテに似せたのは、名前だけではありません。再び南原さんのお話です。
甲子化学工業企画開発部の南原徹也さん「デザインも貝殻にしていまして、かなり寄せています。貝殻のつぶつぶが表面に現れたりしてまして、ホタテの貝殻が入ってる風合いを楽しめるといいますか、今までは廃棄物が入ってるっていうのを隠す方向で作られてたんですけど、今回はあえてそれを見せるやり方で行ってまして、強度もですね、ホタテの貝殻の形状を一部模倣したりすることで30%強度が向上したりしています。あの、やはりヘルメットはどうしても武骨なものが多い中で、防災のときにかぶるヘルメットが、武骨だとどうしてもちょっと気分が落ちたりするのかな、というところで、デザインから少しでも、明るい気持ちになれたらなという思いが、実は込められたりしています。」
見た目が本当にホタテの貝殻のようなデザイン。
▼甲子化学工業のホームページより
▼甲子化学工業のホームページより
なんだか可愛い感じで、素敵ですよね。例えば、防災の意味で学校などに常備してもらうとしたら、少しでも明るい気持ちになれるデザインが良いのではないか、と考えたそうです。(しかも、ホタメットは5色展開!)
デザインの良さに加えて、ヘルメットとしての強度もばっちり。ホタテの貝殻の表面、なみなみしてますよね?あれはトタン屋根などのなみなみと同じで、上からの衝撃に対して、強度が増す形状。そこで、大いに反映させて作り上げました。
ホタテを入れた分プラスチックを使わずに済む。見た目も良くて、強度もばっちり!
貝殻の処分に困っていた猿払村もホタテの貝殻の新しい活用法に喜んでいました。北海道猿払村役場住民課、課長代理の新家拓朗さんのお話です。
北海道猿払村役場住民課 課長代理の新家拓朗さん「漁師さんが捕ってきたホタテの資源を有効活用して、今度は漁師さんの頭を守るっていう、そういうストーリーがいいかなと思ってまして、そこから色んな方に使っていってもらえるような商品にしていきたいな、という風に考えています。そうですね、5色展開してまして、お子様にも喜んでもらえるかな、と思ってますし、今ちょっと大人のサイズしか展開してないんですけども、今後子どもサイズの方も展開していく予定考えております。外に出す一方だったホタテを、村民も使えるような物に変えていけるっていうのは、すごく嬉しいですね。たぶんホタテ貝殻っていうのは猿払の問題だけじゃなくて、色んな地域であるので、こういうような使い方になっていったらいいかなと思いますし、プラスチックはヘルメットだけもないと思いますので、色んな物にこういうエコなプラスチックが使われていったりとか、使ってみようかなっていう方が増えてくるといいなという風に思ってます。やっぱアピールをしてかなきゃなんないですね。まだまだ知らない方が多いと思いますので。」
漁師さんたちは危険な作業をするときヘルメットをかぶるので、まずはそこから使い、その後は、住民たちにも使ってもらえるように、サイズも増やして広めていきたいとおっしゃっていました。
なかなか安定しなかったホタテの貝殻の活用がやっと実って嬉しそうでした!
実は、政府も2030年までにバイオマスプラスチックを200万トン導入という目標を掲げていますが、2020年度の導入量は15万5千トン。認知度が上がらなければ、せっかくの技術も工夫も本当の意味で活用はできないので、新家さんも、しっかりアピールしていきたい、と話していました。