えっ、自走して来ないの!? 自衛隊「ピカピカの最新戦闘車両」納入から運用開始まで密着! “新車だからビニールはがさなきゃ”

大分県に陸上自衛隊の最新装備が到着し、それに伴う記念式典が実施されました。そこで運び込みから式典までを密着。関係者からは、この後のスケジュールについてもうかがうことができました。
2024年9月13日、大分県玖珠町の玖珠駐屯地に、新装備の「19式装輪自走155mmりゅう弾砲」、通称「19WHSp」が配備されました。
新装備を受領したのは玖珠駐屯地に所在する西部方面特科連隊第2特科大隊で、教育部隊を除き第一線配備されるのは、同連隊内の第1大隊(北熊本駐屯地)に次いで2例目となります。
西部方面特科連隊は、北熊本駐屯地(熊本市)に連隊本部を置く、いわゆる砲兵部隊です。大砲を装備するのは前述の第1特科大隊と第2特科大隊のほかに、えびの駐屯地(宮崎県えびの市)に所在する第3特科大隊、久留米駐屯地(福岡県久留米市)に所在する第4特科大隊の4個大隊です。
えっ、自走して来ないの!? 自衛隊「ピカピカの最新戦闘車両」…の画像はこちら >>玖珠駐屯地に配備された19式装輪自走155mmりゅう弾砲を担当する中隊砲班の隊員(伊藤洋平撮影)。
第2特科大隊は2019年3月に久留米駐屯地から玖珠駐屯地へ移駐した部隊で、大隊本部、本部管理中隊、第3射撃中隊、第4射撃中隊で構成されています。今回受領した19式装輪自走155mmりゅう弾砲は第3射撃中隊の所属ですが、今後、車両の導入が進めば第4中隊にも順次配備する予定です。
19式装輪自走155mmりゅう弾砲は、従来の155mmりゅう弾砲FH-70の後継として日本製鋼所(日鋼特機)で製造されている新型の火砲です。最大の特徴は、車両と火砲を組み合わせた「自走砲」といわれる構造で、FH-70では長距離移動の際には「中砲けん引車」と呼ばれる専用の大型トラックで牽引しなければならなかったのに対し、19式は自走移動が可能になっています。
またタイヤ駆動のいわゆる「装輪式」のため、履帯(いわゆるキャタピラ)駆動の「装軌式」自走砲と比べ、軽量かつ高速道路などもそのまま走行できる点が大きなメリットといえるでしょう。
射撃準備についても、従来のFH-70では多くの時間と人員が必要だったのに対し、19式では、その大部分が自動化されたため隊員の負荷軽減や作業の迅速化、省人化にも大きく寄与しています。
自動化の主な特徴として、自己位置の測定があります。FH-70などでは、目標に対して正確に射撃を実行するためには、自らの位置を正確に測定する必要があり、人力による測量作業に加え、測量した位置に火砲を準備して射撃する必要がありました。それに対し、19式ではGPSや専用のネットワークシステムを使用し、迅速に自己位置を測定し、瞬時に共有することが可能です。そのため、射撃位置を自由に選定し、かつ、射撃位置に到着してから射撃の開始まで非常に短時間で行うことができるようになりました。
Large 240917 19whsp 02
入魂式にて太鼓の演奏を披露する熊本西特連太鼓部チームの隊員(伊藤洋平撮影)。
FH-70では射撃諸元は全て人力で、砲の旋回ハンドルを回し方位角や射角を調定する必要がありました。これでは、時間と手間がかかるうえ、数字の読み間違いや調定間違いなどヒューマンエラーが発生する要因にもなっていたとか。このように自動化は安全面にも寄与するほか、教育・育成面でも格段に習熟に掛かる時間が短縮できるといえるでしょう。
砲弾の装填も自動化されていますが、装薬の装填についてはFH-70同様に人力での作業になっています。なお、砲弾や装薬はFH-70と同じものが使えます。また、19式はトラック型のため、車体にも砲弾・装薬の積載スペースは設けられていますが、搭載数が限られるため、実際の運用では 3 1/2t大型トラックをベースとした弾薬車が19式1門につき1両随伴するとのこと。これで1セットとして運用されます。
このたび、第2特科大隊に配備された19式装輪自走155mmりゅう弾砲ですが、玖珠駐屯地に運び込まれたのは、1か月ほど前の8月中旬のこと。この日の早朝、トレーラーに積載され駐屯地に運び込まれた19式は、到着後に日鋼特機社員の点検を受けた後、部隊へと引き渡されました。
同日中に、担当する中隊砲班の隊員のほか、大隊の隊員が集合し日鋼特機の社員から車体のミラー調整の仕方から火砲部の操作に至るまで細部に渡って取り扱いに関する説明を受けています。
なお、これに関連して大隊の幹部は「説明を受けるにあたって既に富士学校の特科教導隊や先に導入されている第1大隊で教育を受けた隊員もいるかと思うが、いま一度初心に帰って新たな気持ちで臨んで欲しい」と訓示していました。
Large 240917 19whsp 03
入魂式にて記念撮影を行う西部方面特科連隊第2大隊の隊員(伊藤洋平撮影)。
こうして迎えた9月13日の入魂式典では、第2特科大隊の隊員のほか、玖珠駐屯地所在の各部隊長をはじめ、隊友会会長など内外から多数の来賓が臨席。そのなかで第2特科大隊長の福田忠輔 3等陸佐は「我が国を取り巻く安全保障環境は南西諸島における周辺国の活動が活発化しており、ロシアによるウクライナ侵攻は今も続いている。国防の第一線に配備されている西部方面特科連隊第2大隊に求められる任務・役割は非常に厳しいものになると予期している。 (中略) 本装備品は全国の特科部隊に先駆けて導入されており、我々は本装備品の特性を活かした新たな戦い方を創造し、習熟して早急に戦力化できるよう錬成していくことが必要である」と述べていました。
なお、これに関して大隊のある幹部は、「習熟が順調に行けば、年内もしくは年明けには実射訓練を行い、年度内には大隊として戦力化を目指したい」と述べていたことから、徐々に周辺道路を使っての操縦訓練や演習場での実射訓練などが行われると思われます。
ちなみに玖珠駐屯地では、10月6日(日)に開催予定の駐屯地記念行事にて、今回配備された19式装輪自走155mmりゅう弾砲を展示するとのことなので、新車を見に足を運んでみても良いかもしれません。