10月16日、認定NPO法人「DxP」が孤立状態にある若者を対象に実施したアンケート調査の結果を発表。多くの若者が生活費のために借金をしているなどの実態が明らかになった。
「グリ下」の若者に居場所を提供、全国の若者に食糧・金銭の支援DxP(ディーピー)は2012年に設立、2015年に法人格を取得した。スタッフ数はアルバイトを含めて46人、月額寄付者数は約3300人。「不登校や家庭内不和、虐待や経済的困難などが原因で安心できる場や所属先を失った10代の若者の孤立」という社会課題に取り組んでいる。
主な活動は、大阪府・道頓堀のグリコの看板下(通称グリ下)に集まる若者に居場所を提供するため、グリ下から徒歩5分の場所に設置した施設「ユースセンター」の運営や、親に頼れず困窮(こんきゅう)している全国の若者を対象にした食糧支援・金銭的支援など。
また、13~25歳の子どもや若者を対象にLINEを使った進路・就職・生活相談サービス「ユキサキチャット」も運営している。今回、結果が発表された「若者のお金の使い道についてのアンケート」はユキサキチャットの登録者のうち420名を対象にしたもの。
回答者のうち約3分の1が借金を経験成人年齢引き下げに伴い、一部の金融機関では18歳から借金ができるようになった。アンケート回答者のうち37.1%、18歳以上に限定すれば47%が「借金をしたことがある」と回答している。
「借金の使い道」の設問(以下、いずれの設問も複数回答あり)については、77.6%が家賃や光熱費・食費などの「生活費」、32.7%が携帯電話(スマホ)やWi-Fiの料金などの「通信費」と回答した(複数回答あり)。また、「学費」が25%、「医療費」が21.8%、「交際費」が18.6%、「ショッピング」が16%だった。
「借金の背景」の設問によると「自身の収入が減っていた」(48.7%)、「ひとり親家庭」(35.3%)、「自身が病気を抱えている/病院に通院している」(33.3%)、「親や親戚が生活保護で頼ることができない」(23.7%)などの状況があったという。
また「お金を借りて困ったこと」の設問では全体の75%が「返済できるか不安な気持ちになった」、さらに46.2%が「借金をしたことにより、生活が苦しくなった」と回答した。借金は若者の生活状況の根本的な改善方法にはならないことを明らかにする結果となった。
若者の貧困は政府から「後回し」にされている会見でDxPの今井紀明理事長は「日本では若年層に対する予算を割くことが難しく、対応が後手になりやすい」と指摘した。
「DxPに相談する若者の約7割は女性。議員らの平均年齢が高く、さらに女性の比率が少ないために、若者の現状に目を向けられず後回しにされている」(今井理事長)
また、政府は若者のいじめ被害や自殺についてはオンライン相談窓口を設けて対策に取り組んでいるが、若者向けの福祉や困窮支援については、オンラインでの取り組みを行っていない。「ユキサキチャット」は困窮する若者を福祉につなげる役割も担っているが、今井理事長は「民間だけでなく公的な取り組みも必要」と語る。
「『自分が責められるのではないか』と恐れて、福祉の窓口に行くことをためらう若者も多い。若者が福祉制度にたどり着くことを促すための政策が求められている」(今井理事長)
物価高に苦しむ若者たちのため、寄付を呼びかける困窮している若者は、調理器具を持っていない場合もあれば、ガス・電気が止められている場合もある。DxPは前者にはお湯だけで調理できるレトルト食品を中心に、後者にはシリアルや常温で食べられるおかゆ・スープを中心にして送付するなど、個々の若者の状況に合わせた食糧支援を行っている。
また、虐待を受けている若者が親元から引っ越すための緊急的な支援や、就職活動が成功するまでや生活保護・住宅確保支援金などの公的補助金が入金されるまでの「つなぎ」的な短期支援として、現金給付も行う。
しかし、近年では円安などに起因した物価上昇が続き、天候不順を要因とした不作などにより、今秋にかけても大規模な値上げラッシュが予想されている。
物価高の影響は、困窮している人々ほど大きい。DxPが食糧支援を希望する若者約2100人を対象に行ったアンケートによると、全体の48.2%が「週に1~2日以上、ご飯を食べない日がある」と答えたという。
DxPが行う食糧支援にも、1回当たりのコストが1割以上増しているなどの影響が生じている。さらに、支援を必要とする若者の数は増え続ける一方だ。
16日から、DxPは「年末年始に孤立する若者に食糧支援・相談などの必要なサポートを届ける」を目標にしたクラウドファンディングを開始する。目標金額は5000万円。期間は12月20日まで。
今井理事長は「困窮する若者たちが暖かい年越しを迎えられるようにしたい」と、寄付を呼びかけた。「国は若者たちに対して適切な支援ができていない。民間の対応が必要とされている。
現在の制度は、親に頼れない若者や子どもの存在を想定できていない。若者たちの現状を『自己責任』で片付けてはならない」(今井理事長)