トランプ氏、米大統領経験者初の起訴…不倫口止め料めぐる不正など30以上の罪状で

トランプ前米大統領(76)は30日、東部ニューヨーク州の大陪審に起訴された。勝利した2016年大統領選の直前に不倫相手に支払った口止め料を「弁護士費用」と偽って不正処理したり、選挙関連の州法に違反したりした可能性がある。州検察は起訴内容を明らかにしていない。CNNテレビによると、30以上の罪状で起訴され、検察の要請を受けて4日にも出頭することを検討している。
米大統領経験者の起訴は初めて。共和党のトランプ氏は24年大統領選に出馬表明していることを踏まえ、民主党政権による「史上最大級の政治的迫害」「選挙妨害」と猛反発。共和党議員も「政治的な魔女狩りだ」と批判。民主党は大統領経験者でも免責特権はないと訴え、党派対立が激化した。
前代未聞の騒動をも、追い風に変えようとしている。トランプ氏は「完全に無実だ」と強気の姿勢を貫き、出馬を取り下げない意向。起訴の不当性を訴えて求心力維持を図っている。30日も支持者に献金を呼びかけ、逆風を政治利用する構えだ。ロイター通信は検察に対する憤りが支持者を寄付に駆り立て、大統領選に向けた資金集めが加速しそうだとの見方を報じた。低調だった前大統領の資金調達も「逮捕される」と訴えた18日以降は寄付が増えていたという。
トランプ氏には、不倫口止め疑惑以外にも捜査が進んでいる。ロイターが3月に実施した世論調査によると、共和党員の44%が、起訴された場合は大統領選から撤退すべきだと回答。選挙戦の鍵を握る穏健派や無党派層の離反が進みそうだ。

民主党のバイデン大統領は、起訴に関して「ノーコメントだ」と記者団に述べた。
CNNによると、トランプ氏は指紋採取や罪状認否などのために出頭する方向だが、支持者らに抗議するよう呼びかけており、混乱も懸念される。裁判官の前で起訴内容を告げられて罪状認否に臨み、拘束されない可能性が高い。トランプ氏は無罪を主張し、その後は公判に進むとみられる。
◆不倫口止め疑惑 トランプ氏がポルノ女優ストーミー・ダニエルズ(本名ステファニー・クリフォード)さんに対し、不倫関係を2006年に持ったことを口外しないよう圧力をかけたとされる疑惑。16年大統領選に出馬後、当時の顧問弁護士マイケル・コーエン元受刑者(疑惑に絡み18年に実刑判決)がダニエルズさんに口止め料として13万ドル(約1700万円)を支払い、前大統領が後に弁済したとされる。ダニエルズさんは脅迫を受けたとも主張。前大統領側は疑惑を否定している。