今年はロイヤルエンフィールドが日本を席巻する? そんな思いにさせる新型バイク「ハンター350」が日本に上陸した。世界ではかなり売れている注目のマシンだが、実際に乗ってみるといろいろな部分が「ちょうどいい」仕上がりで、日本で乗っても楽しい1台なのではないかと感じた次第だ。
○シンプルながら走りは軽快!
英国生まれのロイヤルエンフィールドは今年で創業122年の長い歴史を持つ老舗バイクメーカーだ。現在はインドに拠点を構え、ミドルクラス二輪セグメント(250cc~750cc)では世界のリーディングカンパニーとなるなどアジアを中心に存在感を高めている。日本では2021年にショールームがオープン。虎視眈々とシェア拡大を狙っている。
そんなロイヤルエンフィールドで今年の大本命と目されるのが、3月から日本で販売が始まった新型ハンター350である。本国インドでは2022年8月の発表から約6カ月で10万台以上を販売するなど、早くもロイヤルエンフィールドのベストセラーモデルという立ち位置を確立しているマシンだ。
バリエーションは「Dapper」(ダッパー)と「Rebel」(レベル)の2種類。ボディカラーは「ダッパー・グレー」「ダッパー・ホワイト」「ダッパー・アッシュ」「レベル・ブルー」「レベル・レッド」「レベル・ブラック」のラインアップとなる。ダッパーシリーズは65.78万円、レベルシリーズは66.44万円だが価格の違いはカラーリングによるもので、性能や装備は同一とのこと。
新しいバイクだが、電子制御なしのシンプルな造りはどこか懐かしさを感じさせる。
ロイヤルエンフィールドの担当者によれば、「現在のユーザーが求めているのはコンパクトかつシンプルで、高い性能とスタイリングを兼ね備えたモーターサイクルです。ハンター350はこの新たなトレンドにロイヤルエンフィールドの哲学やテクノロジーを融合して作りました」とのこと。こうしたトレンドはインドのみならず世界中で見られることから、日本市場においても大きな反響を呼ぶことを期待しているという。
注目したいのはバイクの心臓部となるエンジンだ。ハンター350は「クラシック350」や「メテオ350」も搭載する最新の349cc空冷式単気筒Jシリーズエンジンを採用。最高出力14.9kW(20ps)/6.100rpm、最大トルク27Nm/4,000rpmを発揮するこのエンジンは、低速域での力強いトルクとスムーズでリニアな出力特性を特徴としており、世界的に高く評価されているという。
ただ、日本では350ccよりも400ccエンジンになじみがある。日本市場の傾向を考えるのであればエンジンは400ccのほうがいいように思えるが、「ロイヤルエンフィールドはこれまでにさまざまな350ccクラスを発表し、市場からもいいフィードバックを得ているので、400ccに変更するという考えはありませんでした」というのが担当者の答えだった。
世界的に見れば、350ccエンジンが主流になっているとの手ごたえも感じているらしい。理由としては、「ロイヤルエンフィールドが製造しているような、楽しく、魅力的で、スタイルを持ち、シンプルな乗り心地で、誰にでも乗りやすいモーターサイクルへとユーザーの嗜好が変化している」との分析だった。
今回は日比谷公園周辺をハンター350で40分ほど走ってみた。電子制御を一切搭載しないシンプルなバイクなだけあって、走りは実に軽快。コーナーやちょっと混みいった道でも軽々と走ってくれるし、何よりクセのない素直な操作性は好印象だ。シートはタンク側に向かってスリムになっており、ニーグリップしやすく、コントロール性も高かった。
シンプルな車体構成はメンテナンスのしやすさにもつながるのではないだろうか。安全面や快適性においては現在主流の電気制御をふんだんに盛り込んだバイクの方が高いのかもしれないが、初心者では対処しきれない思わぬトラブルが起きかねないし、精密機器を搭載している分、どうしても価格が高額になってくる。
そういう意味でも、ハンター350は手の届きやすい1台だといえる。こんなちょうどいいバイクの登場を待っていた人も多いのではないだろうか。
安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら