衆院選を経て、国会の風景ががらりと変わった。「沖縄の声」をどのように届け、政治に反映させるのか。一歩でも二歩でも前へ進める年にしてほしい。
昨年10月の衆院選で自民、公明の連立与党は大敗を喫し、過半数を割り込んだ。
少数与党下では、野党の協力を得なければ予算案や法案を成立させることはできない。
先の臨時国会で政治改革関連3法に政策活動費の全廃が盛り込まれたのも野党の要求によるものだった。
今月下旬には通常国会が召集される。
これまで大きな議論にならなかった辺野古新基地を巡る問題や沖縄関係予算の課題についても野党の主張が重みを増し、耳を傾ける必要性に迫られるのは間違いない。
昨年末、沖縄防衛局は大浦湾側の軟弱地盤の改良工事に着手した。
7万本以上の杭(くい)を打ち込む大規模工事は、技術上の課題はもちろん、環境保護の面からも大きな問題をはらむ。
新基地が完成するまでの十数年間、米軍普天間飛行場の危険性除去はどうするつもりなのか。具体策を示すべきだ。
地元の宜野湾市長は何度も、普天間飛行場の返還時期を明示するよう政府に要請してきた。それを示さずに工事を強行するのは許されない。
工費と返還時期について精査し、その結果を国会で明らかにする必要がある。
■ ■
県内では、昨年6月の県議選で玉城デニー知事を支持する与党が大敗し、自民党会派など野党・中立が多数派となった。
議決が必要な予算などで政策決定の力学が大きく変わり、知事は就任以来最大の苦境に立たされている。
早速、攻勢にさらされているのが県のワシントン事務所を巡る問題だ。県議会は百条委員会を設置した。
基地問題に関する情報発信を担う他県にはない組織とはいえ、株式会社として事業者登録するなどの不透明な手続きや公文書管理のずさんさは見過ごせない。
県政を巡っては、昨年11月に本島北部を襲った豪雨の際、対応の遅れから「災害救助法」の適用が困難となるミスも発生した。
なぜこんなにも「ポカ」が相次ぐのか。緩みの背景に何があるのか。幹部人事を含め、体制の立て直しを図るべきだ。
■ ■
今年は7月に参院選が予定されている。来年の知事選の前哨戦とされる。
県政野党が攻勢を強めるのは確実である。そうであっても、大切にしてほしいのは「県民益」だ。
国政では与野党が熟議を重ね、一致点を見いだすこれまでにない努力が重ねられている。
それが沖縄でできないはずはない。
「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」は4年目に入り、検証作業が始まる。
与野党が一緒になって、県民の暮らしと安全を守る政策の実現に力を発揮してもらいたい。