バイクの運転も徐々に慣れてくると、愛車のメンテナンスやカスタムを自分でやってみたいと思う初心者の方もいるはずです。とはいえ、メンテナンスをするには車載工具のほかにもツールが必要。バイク用としてよく使われるツールの種類や、使用時に注意すべきポイントなどが分からない方もいるはずです。
今回は、そんなDIYメンテ初心者におすすめの工具10選(後編)を紹介します。
【6】T型レンチ(ハンドル)
T型レンチは、その名の通り「T」字型をしたバーの先端にボックスやヘックスなどがついた工具です。バイク屋さんがクルクルと回している姿はかっこよく、いかにもプロっぽいツールですね。
ラチェットハンドルとの違いは、両手を使えるため力の加減もしやすく、柄の部分の重さを利用して早回しができることです。柄が回転する作業スペースが必要ですが、シリンダーヘッドやクランクケースなど、たくさんのボルトを短時間で回すときにはとても便利です。
プロが使うT型レンチの先端部は8mmや10mmなどのボックスが固定されていますが、ラチェットハンドルのようにボックスやヘックス、ドライバービットなどのコマに交換できるタイプもあります。アマチュアは工具の収納スペースも限られるので、こちらの方がよいでしょう。
このほかにも、柄と軸を分解してコンパクトにできたり、左右にスライドして大きな力をかけられるものや、早回ししやすいように、軸に空転するグリップを持つ製品もあります。
【7】電工ツール
最近のバイクは電気系のトラブルも少なくなりましたが、DIYでUSB給電の増設など、電装系のカスタムを考えているなら、電工系のツールも揃えておく必要があります。
「マルチテスター」は、バイクの電気が正常に流れているかをチェックするツールです。直流や交流の電圧や電流、抵抗の測定など、さまざまなことが測定できます。値段はピンキリですが、安いものは1,000円を切るほど手軽になっています。
自分で電装系DIYをするなら、配線加工のために電工ペンチも必要です。平型や丸型のギボシとセットになっているものもあり、価格もそれほど高くはありません。配線処理をしたあとのハーネステープや、保護用のスパイラルコードも備えておけば安心でしょう。
電装系DIYは、適当に行ってミスをすると電装部品がショートしたり、最悪の場合は車両火災にもつながります。いきなり大きな改造をするのではなく、勉強しながら徐々に挑戦していけば正しい知識も身につくはずです。また、電工ツールはバイクのメンテナンス以外にも、自宅にある電化製品の故障診断にも活用できます。
【8】充電器
昔のバイクはキックスターターがついていましたが、現在のバイクはセルで始動するしか方法がありません。FI(フューエルインジェクション)や燃料ポンプも電気で動くため、押し掛けでエンジンを始動できる可能性は低いでしょう。
そのため、現在のバイクにとってバッテリーのコンディションはとても重要です。乗らない間は自己放電して徐々に劣化が進んでいきますが、鉛バッテリーは満充電に近い状態の方が劣化を抑えることができます。
もしも駐輪場所に使用可能なコンセントがあるなら、乗らない期間が長い場合は補充電をしたり、つなぎっぱなしでバッテリーを管理する充電器を使うと長持ちします。一般的にバイクのバッテリーは2~3年ほどで寿命を迎えるケースも多いですが、上手に充電すればそれ以上もつことも珍しくありません
充電器はバイク専用の小さなものもありますが、自宅にクルマもあるなら、両方に使えるものを購入するのもよいでしょう。また、最近はジャンプスターター機能の付いた小型のモバイルバッテリーも販売されています。
【9】エアゲージ
安全で気持ちよくライディングするためには、適切なタイヤの空気圧管理は絶対に欠かせません。チェックはガソリンスタンドでも行えますが、毎日たくさんの人に利用されているため、不具合がでていることもあります。定期的に校正されているかも不明なので、店舗やゲージによって個体差が出ることも少なくありません。
市販のエアゲージは、大きくて見やすい液晶のついたデジタル式のほか、電池を使わないアナログメーター式もあります。アナログメーターは見た目も大きくて雰囲気も本格的ですが、タイヤや計測器メーカー製で数万円するものから、ネット通販で数千円のものまで幅広く存在します。
バー(ペンシル)タイプは数百円と安価ですが、構造が簡単なので壊れにくいという意見も聞きます。筆者もデジタル、アナログメーター、バータイプをいくつか使いましたが、バータイプは正確なうえ、なかなか壊れなかったのを記憶しています。とても小さいので、車載工具にひとつ入れておくのもよいでしょう。
そのほか、最近はコンパクトな充電式のエアポンプも販売されており、これには液晶のメーターがついているためエアゲージとしても兼用できます。
【10】車載工具に追加
250cc以上のオートバイには最低限の車載工具が積まれていますが、泊りがけの長距離ツーリングなどではちょっと不安ですね。ロードサービスに加入していても、些細なことなら自力でなんとかしたいもの。そのために、いくつかのツールを追加しておくことをおすすめします。
純正の車載工具にはプラスとマイナスの差し替え式ドライバーや、8~17mmくらいのオープンエンド、プラグレンチ、プライヤーなどが入っていますが、これは最低限のツールなので、足りないサイズのレンチなどを入れておくとよいでしょう。
100均などでも手に入るタイラップ(結束バンド、インシュロック)は、配線を縛るだけでなく、ボルトが脱落したカウルや小さなパーツの固定に使えます。小さなニッパーやステンレスの針金、数本の予備ボルトやナットも数本入れておけば、万が一のときに役立つこともあります。
ガムテープもあれば便利ですが、そのままではかさばるので、使わないカードや段ボールの切れ端などに巻きなおせばコンパクトになります。転倒した場合は無理に直さずロードサービスを受けたほうが安全ですが、サービスの適用外である林道を走るライダーの中には、左右の予備レバーをフレームなどにタイラップで固定している人もいます。
津原リョウ 二輪・四輪、IT、家電などの商品企画や広告・デザイン全般に従事するクリエイター。エンジンOHからON/OFFサーキット走行、長距離キャンプツーリングまでバイク遊びは一通り経験し、1950年代のBMWから最新スポーツまで数多く試乗。印象的だったバイクは「MVアグスタ F4」と「Kawasaki KX500」。 この著者の記事一覧はこちら