医療現場は紙だらけ メールじゃなくてなぜファックス? デジタル化「DX」遠い状況 変化はあるのか? 藤田医科大学病院の取り組み【チャント!大石邦彦が聞く】

今やあらゆる場面で導入が進められるデジタル化。自動車の無人運転。マイナンバーによる個人情報の一元管理。AIに質問すれば論文や絵も書いてもらえるご時世。良いこと尽くしではありませんが、否が応でもデジタル化は進んでいます。しかし、街の医院や病院はまだまだ”紙だらけ”。医療を大きく変えるといわれる「DX」から遠い状況のようです。
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名古屋市中村区のクリニックでは。(細川外科クリニック 細川慶二郎医師)「まだまだ手書きで患者さんの住所や名前、電話番号、所見を書き写し、最後に印鑑を押して(自治体に)提出する」電子カルテに、CTやMRIといった画像診断の電子データなど、デジタル化はある程度進んでいますが、その使い方は今も紙だらけ、手書きだらけです。
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それは個人のクリニックだけでなく、高度医療や災害医療を担う大規模な拠点病院でも同様です。愛知県豊明市の藤田医科大学病院。ここでは患者のデータをどう扱っているのでしょうか。
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「入院するときにはどんな手続きが必要ですか?」(藤田医科大学病院 受付担当者)「こちらの確認表を、患者様自身に記載をしていただいている」
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まずは患者やその家族が、紙に手書きで身元や症状など基本情報を記入します。CBCテレビ「チャント!」の大石邦彦アンカーマンが記載してみると…「いまこれ何分くらいかかった?3分!かなり集中して書いたが3分。しかも質問しながらですが、『ここ分からないです』とか聞かれることもありますよね」(藤田医科大学病院 受付担当者)「あります。いつ手術をしたのかなど分からない方もいますので」

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そしてこの情報を、患者ごとの電子カルテを開いて、1つずつ手作業で入力していきます。医療事務の担当者が、病院内の電子カルテにパソコンで入力し直します。ミスがないよう再度聞き取りをしながらのため、1人あたり、30分ほどかかることも。
(大石アンカーマン)「1日何人くらいこういう作業を行う?」(藤田医科大学病院 入力担当者)「70人前後です」
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受付での患者による手書きが一人3分とすると、70人で210分。3時間以上が二重の作業になっているんです。
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医師も、手書き文化のわずらわしさを実感しています。(藤田医科大学病院 水谷泰彰医師)「この紹介状の場合、薬を10種類以上飲んでいる。神経の病気の人は結構(薬の数が)多いので、これを1個1個手作業で入れることになる」かかりつけ医が作った紹介状のデータも、医師が電子カルテに入力しなければなりません。(藤田医科大学病院 水谷泰彰医師)「病歴が長い方、薬が多い方、症状が重い方は入力に時間がかかる」さらに、ほかの病院へ転院依頼をする際は…なんとファックスを使用しています。
個人情報のため、送り間違いがないよう2人でファックス番号を確認してから送るなど、人数が多いだけにここにも大きな手間がかかっています。
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Q「なぜメールではない?」(担当者)「なぜでしょうか。メールにしてほしいくらいですよね」
日本の医療は、現在医療データを病院や薬局、行政がそれぞれ違う形で管理していて、必要な時に別々に情報のやり取りをしています。

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その都度手書きだったりデータを入力し直したりと、デジタルでも根本的な利用が“アナログ”です。それを大きく変えるのが今日のキーワード「医療DX」。
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」(Digital Transformation 「Trans」が「X」と略される)の意味で、デジタル技術で仕事の仕組みを大きく変えることです。いまは別々に管理している医療データを全て共有することで、データのやり取りの手間を格段に減らし、集まるビッグデータによって、治療法や新薬の共同開発にも役立ちます。
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(藤田医科大学病院 白木良一病院長)「(患者に)時間を割いてケアができるとか、診察ができるとか、やっぱり最終的なゴールは、患者さんに対する治療とか診療のクオリティ(を上げる)、そういうものだと思う」
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藤田医科大学病院は他に先駆けて、この医療DXに取り組み始めています。まずは患者の手書きだった受付にタブレットを使い、入力した情報をそのまま電子カルテに反映させることで、今まで30分以上かかっていた手続きが、5分程度に短縮できます。
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また、救急搬送中に把握する患者の状態を、リアルタイムで病院でも把握することで、早い治療にもつなげる計画も。(藤田医科大学病院 大野孝生医師)「変化が激しい時代になってきていますが、可変的に患者さんのためにベストな医療を提供するという意味で、“医療DX”は有効だと思う」

最大の個人情報を扱うだけに、情報漏洩の危険性は極めて心配されますが、デジタル化の大波は押し寄せています。(藤田医科大学病院 白木良一病院長)「これは便利だと(国民に)思ってもらえることが大事ですし、安全性を担保していろいろなことに使ってもらえる仕組みを国が作っているので、そこにわれわれ医療業界もコミットして、“医療DX”を推し進めていきたい」
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(大石邦彦アンカーマン)世界的にはもうこの「医療DX」の流れが進んでいるんですが、これに乗り遅れますと、新薬の開発など国際的なプロジェクトに参加できなくなってしまう恐れがある。なので、国も2030年までに全国の医療機関でこのような形になるように、今取り組んでいる。
これ患者ファーストでいいことが多いように思いますけど、リスクないのかということなんですがこちらが心配。コンピュータウイルス。サイバー攻撃によってシステムが乗っ取られる恐れもあります。
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大阪の病院で実際起きています。そして患者さんの個人情報が、これによって流出してしまう恐れも十分考えられるわけなんですよね。医療DX。まだまだ超えなければならないハードルはいくつもあるわけなんですが、2020年から30年に向けて、そのハードルを一つ一つ越えていく必要があります。