フジテレビ10時間超会見「女性の意思を尊重」繰り返した局側 「女性の気持ち”をどう確認したのか?」記者の質問に港社長は…

元SMAPメンバーで、タレントの中居正広氏と女性とのトラブルに社員が関与していた疑惑がもたれているフジテレビと親会社のフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)は27日、都内の同社本社内で記者会見を開いた。
同疑惑について17日にも会見を開いたが、参加できるメディアを記者クラブ加盟社に絞ったことで批判を浴び、今回は参加メディアを限定しない形で行われた。また、前回の会見では許可されなかった動画撮影も一部解禁された。しかし、被害者や関係者のプライバシーを理由に、具体的な質疑を記者にさせず紛糾する場面もあり、会見は10時間を超える異例の長さとなった。
191媒体、437人の記者が参加、フジテレビは陳謝フルオープンで開催された今回は、1社あたりの参加人数の制限はあったが、ネットメディアやフリーランスの記者らも参加が可能となり、フジテレビによると191媒体、437人の記者が参加した。
筆者はちょうど受付開始時間に入り口に並んだが、少なくとも会見が開始される2時間前から入り口には行列ができていた。その後、玄関を通過するのに50分かかり、荷物検査と金属探知機のチェックを済ませ、受付を行った。筆者は事前に参加希望メールを送っていたが、事前に連絡をしていなかった記者らも入場を許可されていたようだった。
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会見会場の受付待機列に並ぶ記者ら(1月27日 都内/渋井哲也)

会見に出席したのは、嘉納修治フジHD兼フジテレビ会長と、港浩一フジテレビ社長兼フジHD取締役、遠藤龍之介フジテレビ副会長、金光修フジHD社長。また、事前の予定にはなかったが、清水賢治新社長も会見に同席した。フジサンケイグループ代表で、フジテレビ相談役の日枝久氏は会見に現れなかった。
冒頭で嘉納会長が「人権に対する意識の不足から、当事者女性に十分なケアができなかった。心よりおわび申し上げます」と謝罪し、辞任を公表した。
続けて港社長も「人権侵害が行われた可能性のある事案だが、中居氏に対して適切な検証を行わずに番組出演を継続してしまったことなど、振り返れば対応に至らない点があったと痛感している。そうした責任は私にある。私自身が人権への認識が甘かったことで、社のガバナンスを十分に機能させることができなかった。女性は長い療養期間を要することになり、希望されていた仕事への復帰がかなわなかった。女性の気持ちをくみきれず失望を抱かせてしまった。願わくば直接ご本人におわびしたいと考えている」などと陳謝し、27日付けで辞任したことを明らかにした。
なお28日のJNNの報道によれば、会見後、遠藤フジテレビ副会長も、第三者委員会の報告書が提出される3月末をめどに辞任する意向を示したという。
男性社員A「関与なし」判断司会を務めた上野陽一広報局長が「一連の経緯」を説明。それによると、中居氏と関係社員に聞き取りを行った結果、中居氏と女性とのトラブル(事案)が発生したのが2023年6月。同月、ある社員が女性と話をしている中で事案を把握したが、女性からは「事案を公にせず自然な形で復帰したい」との要望があったため、極めて機密性の高い事案として扱い、港社長らが把握したのは23年8月だったという。
中居氏に対して正式な聞き取り調査を行っていなかった理由については、「女性のケアに悪影響があるのではないかとの判断があった」というが、この間女性とは医師を通じたやりとりしかできていなかったとされる。
また、中居氏の番組出演が継続されていたことについて上野広報局長は「フジサンケイグループの人権方針に従えば、中居氏を調査すべきだった」と発言し、「この判断が適切だったかどうかは第三者委員会の調査に委ねる」とした。
なお、週刊誌報道では男性社員Aもトラブルに関わっていたとされたが、フジテレビが社員AのSMSやLINEの履歴を調べた結果、トラブルがあったとされる「特定日」には、社員Aの関与をうかがわせるものは確認できなかったとして、社員Aの関与を改めて否定した。この調査結果は第三者委員会に提出するという。
フジテレビは「女性の意思」どう確認した?質問のために手を挙げていた筆者を司会者が当てたのは、会見が始まった約8時間後。午前0時少し前だった。
筆者は、会見で港社長が、「(事案を)公にせず、仕事に復帰したいということが女性の最大の意思だった」など、「女性の意思」という言葉を繰り返していたことが気になっていた。社長の言い分が、「女性の意思に沿ったからこそ、コンプライアンス推進課への報告が遅れた」といった言い訳”に聞こえたのだ。
そのため筆者は、「女性の意思をどのように確認したのか?」を尋ねた。港社長は「女性の対応をしている限られた社員、治療をしている医者から確認をした」と回答。
しかし、人間の「意思」は、たとえば体調や気分でも変化するものだろう。そのため「何度、確認したのか?」と続けると、「(意思が変わったという)報告は受けていない」と答えた。つまり、会社は一度だけしか「女性の意思」を確認しなかった。
また週刊誌の取材に対し、女性は「港さんはトラブルについては一切会話に出さずに上機嫌で笑顔を浮かべて、五輪視察で訪れたパリの話ばかりしてきました。『この人は私が抱えるトラブルを知っているのか、知らないのか。どういう気持ちでいるんだろう』って。そして、最後まで謝罪はなかった」と語ったと報じられている。
筆者が「週刊誌報道と、港社長の認識の違いについてどう思うか?」と聞くと、「把握していた意思の内容と違っていたことで、フジテレビの対応が満足できるものではなかったんだな」と応じた。さらに筆者が「報道を受けてアクションはしたのか?」をただすと、港社長は「職場を離れたために、なかなか難しかった」と述べた。
ちなみに、記者会見では1人2問まで、個人特定がされないように質問をする、というルールが設定された。少しでも個人情報に関わると、司会から制止された。参加した記者からは「これでは質問できないじゃないか」「(この件を報じている)週刊誌の記事に書いてあるんだよ」などと不満の声も漏れたが、記者の技量も問われた会見だった。
会見は一時休憩を挟み、午前2時23分に終了した。当然終電もなく、会見の最後には記者席にも空席が目立っていた。司会の上野広報局長は、会見中、立ちっぱなしだった。