【賃貸vs持ち家】年金受給者に聞く老後の住まいの実態調査

カシワバラ・コーポレーションはこのほど、老後の住まいを考えるきっかけづくりを目的に「老後の住まいに関する実態調査」を実施。また、2023年4月の税制改正におけるマンション長寿命化促進税制の創設を受け、「大規模修繕に関する実態調査」も併せて行った。

なお同調査は、全国の65歳以上の年金受給者である男女600名を対象にインターネットにて行われた。

※マンション長寿命化促進税制とは、管理計画の認定を受けたマンション等において、長寿命化工事が実施された場合に、その翌年度に課される建物部分の固定資産税額が減額される制度のこと。

持ち家に住む年金受給者300名に対し、「持ち家を購入する際に懸念していたこと」を質問したところ、1位は「住宅購入の費用負担が大きい」の38.0%に。

2位は「メンテナンスなどの維持費の負担が大きい」の35.7%という結果になり、住宅購入時(定年前)の懸念ポイントは、住宅購入時の費用がトップだった。

一方、「老後生活が始まってから感じた持ち家のデメリット」を聞いたところ、1位は「メンテナンスの維持費の負担が大きい」の26.7%、2位は「家族構成の変化による間取り余りができた」「固定資産税や火災保険料がかかる」が同率の18.0%に。持ち家購入時(定年前)の懸念と老後生活に感じたデメリットに差があることが明らかになった。

賃貸に住む年金受給者300名に「持ち家ではなく賃貸を契約する際に懸念していたこと」を尋ねたところ、1位は「老後も家賃を払い続けること」の50.0%となった。

2位は「高齢で契約更新できない可能性がある」の32.7%、3位は「高齢が理由で賃貸契約がしにくい可能性があること」の31.0%という結果となり、定年前、賃貸住宅に住むことを決めた際には老後の家賃負担と老後の引っ越しのしづらさを懸念していたことがわかった。

一方、「老後生活で感じた賃貸住宅のデメリット」を尋ねたところ、1位は「老後も家賃を払い続けること」の34.3%、続く2位は「家賃が上がる可能性があること」の20.0%、3位は「資産として残らないこと」の19.7%となり、老後の家賃負担がデメリットとして残っていることがわかった。

また、「高齢で契約更新できないことがあった」は11.7%、「高齢が理由で賃貸契約がしにくかった」は12.3%と減少し、実際の老後生活では、契約更新のしづらさや賃貸契約のしづらさをデメリットとして挙げる人は少ない結果となった。

持ち家に住む年金受給者300名に対し、「老後生活が始まってから感じた持ち家のメリット」を質問した。その結果、1位は「安定した居住環境が手に入る」の46.7%、続く2位は「ローン支払い完了後の出費が抑えられる」の32.7%、3位は「趣味や娯楽のために自由に空間が使える」が22.0%となった。住環境の充実や金銭面のメリットを挙げる人が多いことが明らかとなった。

一方、賃貸に住む年金受給者300名に対し、「老後生活が始まってから感じた賃貸生活のメリット」を聞いたところ、「持ち家でかかる各種税金がない」が32.7%の1位に。

続く2位は「家の修繕費用や手間がかからない」の31.7%、3位は「交通アクセスがよく移動がしやすい」が28.0%となり、税金や修繕費用などの金銭面のほか、交通機関までの利便性の良さがメリットに挙がった。

持ち家に住む年金受給者300名に対し、「老後に持ち家で生活することをおすすめしたいですか」と質問したところ、「とてもそう思う」が28.7%「ややそう思う」61.0%となり、約9割が持ち家での老後生活をおすすめしたいと思っていることが明らかとなった。

一方、賃貸に住む年金受給者300名に対し、「老後生活に賃貸住宅で生活することをおすすめしたいですか」を尋ねたところ、「とてもそう思う」が7.7%、「ややそう思う」が50.7%となった。

賃貸派の約6割が賃貸住宅での老後生活をおすすめしたいと思っていることがわかり、持ち家派と比較すると低い結果となった。

賃貸に住む年金受給者300名に「賃貸で懸念していたこと」を聞いたところ、32.7%が「高齢で契約更新できない可能性があること」、31.0%が「高齢が理由で賃貸契約を断られる可能性があること」を懸念していた。

一方、「年齢を理由に賃貸契約を断られた経験はあるか」質問をしたところ、3.3%の人が「ある」と回答。実際に高齢が理由で引っ越しがしにくい“老後の住宅難民”問題に直面している人がいることがわかった。

近年の高齢化や工事費の上昇により、マンションの大規模修繕の積立金不足が深刻な問題になっている。政府では、老朽化マンション修繕促進のため、一定の条件で修繕を行った場合に固定資産税を軽減する「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置」が2023年4月より新たに創設された。

※出典:「マンション長寿命化促進税制が創設されます!~マンションの長寿命化工事の実施に向けた管理組合の合意形成を支援します~」(国交省、 2022年l)

大規模修繕事業を手掛ける同社では、年金受給者のうちマンション購入者150名に対して、「マンションの大規模修繕」についてアンケートを実施。「マンションの大規模修繕費の値上がりの経験をしたことがあるか」質問したところ、70.7%の人があると回答し、多くの年金受給者がマンション大規模修繕費の値上げを経験していることが明らかとなった。

また、「修繕積立金の値上げは避けられないと感じているか」を聞いたところ、「とてもそう感じる」34.7%、「ややそう感じる」52.7%の87.4%の人が避けられないと思っていることが判明。大多数が大規模修繕の値上げについて諦めていることがわかった。

年金受給者のうちマンション購入者150名に対して「4月から一定の条件を満たすマンションの大規模修繕工事に減税が適用になる税制改正を知っているか」を尋ねたところ、78.7%の人が「知らない」と回答し、大規模修繕を後押しする減税措置の認知度は低いことが判明した。

また、「次の大規模修繕工事の予定を知っているか」を質問したところ、43.3%が「知らない」と回答し、大規模修繕に対する意識が低い実態が明らかになった。