「暇だしやってみるか!」と始めたら介護のイメージが変わった!資格を取りながら将来を拓く「介拓プログラム」は一石三鳥!?

深刻な人手不足に悩む介護業界と、不登校や貧困などで将来が見通せなくなった高校生。一見接点がなさそうな両者を結びつける、あるプログラムが2022年から始動しており、参加をきっかけに将来を切り拓く若者が増えているのだとか。そのプログラムの内容と、実際に利用した若者の声を取材しました。
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高校2年生の服部寛己さん(16歳)は、週4日2つの介護施設を掛け持ちで働いています。全く縁がなかった介護の世界に関わるきっかけは、2022年に始まった、ある「奨学制度」でした。
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その名も「介護で未来を拓く“介拓”プログラム」。不登校や貧困など様々な事情で将来が見通せなくなった若者に、介護現場で働いてお金を貯めてもらおうと、NPOや社会福祉法人が始めました。
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(介拓プロジェクト実行委員会・毛受芳高事務局長)「資格を取りながら自分の将来が拓けたら、そんなにいいことはないんじゃないかと。『一石三鳥』というかですね、①事業所の人材不足、②若者たちの進路選択、③奨学金の問題などを同時に解決できる」
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この奨学制度では、一番初級の資格「介護職員初任者研修」を取るための受講料約10万円や交通費などが全て支給され、働き先も紹介してもらえます。介拓プログラムで資格を取り、名古屋市守山区の住宅型有料老人ホーム「夢歌」で半年以上働いている服部さんは、食事や風呂の介助など身の回りのことを全て行います。

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服部さんが現在担当している、小池達也さん。小池さんは約8年前に脳梗塞で倒れ、体に重い麻痺が残りました。家族とは全くの音信不通だといいます。介護をしながら励ましてくれる服部さんの存在は、小池さんの心の支えです。
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(介拓奨学生・服部寛己さん)「小池さんのためになりたいなとか思う。元気になるために何ができるのかなと。娘さんと息子さんに直接会って、話してもらいたいなって思います」
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服部さんは、家に帰ると通信制高校のオンライン授業を受講。以前は将来が見えなくなった時期もありました。
(介拓奨学生・服部寛己さん)「もともと中学生の時、学校に行けていない期間があって。その時の原因が『人間関係』で…それでちょっと引きずったっていうのもあって、あんまり学校に行きたくなくなった」
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中学3年生で人間関係に悩んで不登校になり、その後、高校に入学も合わずに退学して、今の通信制高校へ。そんな時出会ったのが、「介拓プログラム」でした。
(介拓奨学生・服部寛己さん)「夏休み期間に学校のホームページで、『介拓奨学生プログラム』っていう研修を見つけて、『暇だしやってみるか!』っていう気軽なノリでやってみたら、すごく介護のイメージが変わって、今に至っているという感じです」
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3月にはこの制度を利用した1期生として、体験発表も行いました。
(介拓奨学生・服部寛己さん)「利用者さんの成長・変化を間近に見ることができるので、大変なこと以上にやりがいを感じられる仕事だと思いました。もっとたくさんの経験を積んで、自分のやりたいことにつながる資格を取りたい」

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苦手だった人との関わりにも自信を持てるようになり、介護の世界で本格的に働くことも視野に今は将来を模索しています。
(介拓奨学生・服部寛己さん)「いまは2つの事業所で働いているが、違う事業所とかも見学したりとか。今後は介護の仕事をより深く知ることができたらなと」
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この制度を利用した1期生は、服部さんを含め17人。その中には目標を見つけ、前に進む人もいます。愛知県東海市に住む岡谷若葉さん(18歳)も、介拓プログラムの1期生で貯めたお金を学費に、4月から写真の専門学校へ通っています。
岡谷さんが「写真で生きていく」と決めたきっかけは、初めてマニュアル撮影でうまく撮れた「夜桜」でした。この写真を撮った時、自分の将来が色鮮やかに見えたといいます。
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(介拓奨学生・岡谷若葉さん)「何回もここに来たんですよ。上手に撮れなくて『どうやって撮るんですか?』とか聞いたりして、設定を変えてみたらキレイに撮れた時とかにめちゃめちゃ楽しいなと思って。もっと写真を学びたいと思って。一番楽しいです。何してる時よりも写真撮ってる時が一番楽しい」
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小学生の時に親が離婚。中学3年間はほとんど学校へ行かず、高校も通信制でした。人との関わりが苦手だった岡谷さんにとって、介拓プログラムは自分を変えるきっかけに。カメラマンを目指しつつ今も週2回、介護施設でのアルバイトを続けています。
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(介拓奨学生・岡谷若葉さん)「金銭面も負担してくれるし、交通費も出してくれて友達もできたっていうので、すごく良かった。資格も取れたし、その後もバイトできているのもありがたいなって思う。人と関わるのが苦手だったりしたんですけど、いまもめちゃめちゃ明るいわけじゃないけど、『前より明るくなったね』って言われるくらいにはなった。それは介拓を経験して、友達ができたりとかしたので『介拓』のおかげだと思います」
コロナ禍で格差や子どもの貧困が広がる中、人とのつながりを学びながら、経済的な支援もする民間の奨学制度は、若者の将来を照らす灯りとなっています。
CBCテレビ「チャント!」5月2日放送より