[社説]沖電値上げ公聴会 合理化徹底し幅圧縮を

物価高が生活を直撃している。節電による家計防衛にも限界がある。県民の暮らしや経済に大きな影響を与える電気料金の値上げは、できる限り圧縮すべきだ。
沖縄電力の電気料金値上げ申請を受け、利用者から意見を聞く経済産業省の公聴会が開かれた。
公聴会は値上げの内容が妥当かどうか審査する手続きの一つ。インターネットなどで募った意見も含め、今後の審査に反映されるという。
ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源価格の高騰や円安による燃料関連費の増加を理由に、沖電は4月から家庭や事業者向けの「規制料金」を平均43・81%引き上げるよう申請している。
国は電気料金を2割程度引き下げる負担軽減策を1月使用分から実施するが、この大幅値上げが決まれば効果は帳消しとなる。さらに支援は9月には縮小され、10月以降の対応は決まっていない。
秋以降、どれほどの額になるのか、請求書を見るのが怖い。
公聴会では「エネルギー自給率を上げてこなかった政府の失策だ」とし値上げに反対する意見、「明るい兆しが見え始めた県経済に冷や水を浴びせることにならないか」として段階的引き上げを求める意見などがあった。
ネットなどに寄せられた声は「生活困窮世帯にとっては死活問題」とさらに切実で、「給与水準を下げるべき」といった厳しい注文もあった。
重い負担をお願いする以上、寄せられた声を真摯(しんし)に受け止め、県民の理解を得るための説明責任を果たさなければならない。

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沖電は値上げ実施に向けて、人件費など経営効率化による年間136億円の低減策を示している。
公聴会で本永浩之社長は「経営努力で吸収できる範囲を超えている。苦渋の決断だ」と理解を求めた。
沖電は大手10電力で唯一原発を持たない。電源構成に占める化石燃料の割合が高く、燃料費高騰の影響も受けやすい。離島県で全国と電力系統がつながらず、規模が小さい高コスト構造でもある。
想定外の資源高、燃料費高騰で経営状況が厳しいのは理解する。
とはいえ県民所得の低さやコロナ禍で傷んだ経済の回復を考えると、大幅値上げを許容する環境にはない。
身を切る改革は十分なのか、合理化はきちんと進むのか。影響が大きいだけに、国には厳格な審査を求めたい。
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先週、県と県市長会、県町村会は連名で西村康稔経産相に「沖縄の特殊事情を踏まえた国の一律支援」を要請した。
電気は生活に欠かせない基礎的なインフラだ。料金が気になりエアコン使用をためらえば命に関わることもある。現行の国の負担軽減策が不十分である以上、その拡充が必要だ。
公聴会では「値上げはやむを得ない」としつつ、「カーボンニュートラルへの積極的な投資」を求める声もあった。
再生可能エネルギーの拡大も待ったなしの課題である。