コロンビア空軍が、任務や訓練に必要な燃料や装備品が向こう2か月強までの分しかないという声明を発表しました。急な任務の影響もあるようですが、元々深刻な状態のようです。
コロンビア空軍は2023年5月17日、任務や訓練に必要な燃料や装備品が“7月31日までしかない”という声明を発表しました。
「燃料ないからもう飛べません!」空軍が異例の声明 整備も満足…の画像はこちら >>コロンビア防空の要であるイスラエル製戦闘機の「クフィル」(画像:コロンビア空軍)。
同国のカルロス・シルバ空軍副司令官は理由として、アマゾンでの先住民族支援作戦と、5月16日にグアビアレで発生した民間の墜落機捜索などに従事したことが影響しているとしています。元々これらの作戦は、空軍の予算として予定されていたものではなかったそうです。
しかし、今回の件はあくまでもきっかけにすぎません。
コロンビア空軍は、燃料費の高騰や部品不足により2021年以降、飛行時間が減少しています。そのためシルバ副司令官は、同国の下院第2委員会で「昨年は4万9000時間しか飛行できなかった。今年は5万4000時間飛行する必要があると計画したのにも関わらず、予算上では3万6500時間と見積もられている」と不満を述べ、「我々が飛行できるのは7月31日までだ。それ以降は燃料や部品の余裕がない」と警告しました。
こうなってしまったひとつの要因は、装備品や燃料などが、ほとんどがドルで購入されているため、市場為替レートの影響を強く受けることが挙げられます。最近はインフレ傾向が続いているということで、燃料費に至っては10年前の3倍近くになっていますが、予算はわずか2.6%増額したのみとのこと。また、コロンビア国内では2020年以降の新型コロナウイルスによる不況の影響も残っており、さらに状況は悪化していくという意見もあります。
コロンビア空軍が保有している航空機は、戦闘機や輸送機、ヘリコプターなどを合わせて408機あり、そのうち91機はメンテナンスに必要な部品などの不足で整備が満足にできない状態にあるとのことです。
南米では、たとえばアルゼンチン空軍が予算不足やイギリスの制裁などにより、超音速戦闘機の保有を2018年以降ゼロとしているなど、防衛事情が不安定な国が少なくありません。しかし、コロンビアにはそうできない理由があります。隣国ベネズエラと国境を巡る対立が続いているからです。
ベネズエラは2005年7月にロシアからSu-30戦闘機を購入しました。そのため、コロンビア空軍が保有する旧式の「クフィル」戦闘機では対抗できないと、F-16「ファイティング・ファルコン」やサーブ「グリペン」、ダッソー「ラファール」などの候補を出し、次期戦闘機を選定している最中でもありますが、現状では新鋭機を購入する以前の問題になっています。ちなみに、対立相手のベネズエラも経済破綻状態であるうえにアメリカから経済制裁を受けているということで、空軍が満足に動いているかは定かではないようです。