F1復帰のホンダが組む「アストンマーティン」かつて「インドのチーム」だった!? 愛すべき中堅チームは急成長中

ホンダが新たにF1チーム「アストンマーティン」とタッグを組みます。一体どんなチームなのでしょうか。
ホンダは2026年に、四輪レースの世界最高峰・F1へ復帰します。2023年5月24日の発表では、5年ぶりとなるレース用ハイブリッドエンジンの供給先を「アストンマーティンF1」チームと明かしました。
このチーム、一体どんな歴史を辿ったチームなのでしょうか。
F1復帰のホンダが組む「アストンマーティン」かつて「インドの…の画像はこちら >>緑基調であるアストンマーティンのF1マシン(Photo BY COURTESY OF PIRELLI)。
F1に限らずモータースポーツの世界では、あるチームが撤退する際に設備や人材を丸ごと別組織へ売却し、名前を変えて運営続行するということが当たり前に行われます。
例えば、ここ最近までF1で絶対王者に君臨していた「メルセデスAMG」も、元をたどればホンダF1チーム。2008年にホンダが撤退するとチーム代表のロス・ブラウンがチームを買い受け、翌年には「ブラウンGP」というチーム名でいきなりチャンピオンを獲得してしまいます。さらに翌2010年にメルセデスが買収し、現在に至ります。
さて、F1チームとしての「アストンマーティン」の発祥は、1991年にF1参戦した「ジョーダン」にさかのぼります。実業家としてもやり手だったエディ・ジョーダンが立ち上げ、2005年に完全撤退するまで、291戦に出走し優勝4回・表彰台19台を獲得。フェラーリやウィリアムズ、マクラーレンなど名門チームにたまに割って入る、「中堅の星」という存在でした。4勝中3勝は無限ホンダエンジンを搭載して得たものです。
ジョーダンが撤退後、チームは「ミッドランド」「スパイカー」と1年ごとに参戦主体が交代し、2008年にインド人実業家のビジェイ・マリヤが所有する「フォース・インディア」になります。チーム国籍はインドですが、本拠地は英国・シルバーストーンで変わっていません。
この「フォース・インディア」時代も長く、2008年から2018年まで参戦し、表彰台は6回。やはり中堅チームとして堅実に、時に光る活躍を見せる存在となりました。現在のチャンピオンチームで、最近までホンダの供給先だった「レッドブル・レーシング」のドライバーのひとり、セルジオ・ペレスはこのフォース・インディアと後継チームに計7年所属。これまでの表彰台のほぼすべてはペレスが獲得したもので、まさにフォース・インディアにとって「功労者」でした。
フォース・インディアは長く経営不安がささやかれていましたが、それが決定的となったのが2018年で、チームそのものが消滅の危機に瀕していました。ペレスは率先してチーム存続に向けて働きかけ、チームは買収されて「レーシング・ポイント」という新体制で存続することとなりました。そして2020年アブダビGPではペレスが悲願の初優勝を達成。チームの歴史としては、ジョーダン時代の2003年第3戦ブラジルGP以来17年ぶりの快挙でした。
ところで、破綻寸前のフォース・インディアを救ってチーム買収したのは、カナダ人実業家のローレンス・ストロールです。もともと彼は「マイケル・コース」などファッション業界中心の経営に関与していましたが、息子のランスがレースの道を歩んだため、F1への夢に向けて支援を続けていました。
ランス・ストロールは2017年にウィリアムズからF1デビュー。資金援助でデビューしたとはいえ、落ち目のチームで史上最年少のデビュー年表彰台獲得者となるなど、才能の片鱗を見せていました。父ローレンスは2019年、買収したチームにさっそく息子を移籍させます。
ローレンス・ストロールは自動車メーカーとしてのアストンマーティンを買収済みで、2021年に満を持して自分のチームを「アストンマーティン」に改名。今に至るというわけです。
ホンダの記者会見で”いかにもやり手”なオーラ(?)を放っていたローレンス。所有者の立場からチームを指揮し、ルール上で可能な限りの資金を投入、さらに2度チャンピオンを経験しているフェルナンド・アロンソを獲得します。その甲斐あって、ことし2023年は”万年中堅チーム”が嘘のように、表彰台常連、ランキング2位のチームに飛躍しています。
そんな最中に発表された、ホンダのハイブリッドエンジン供給決定。前回の、5年連続チャンピオンの強豪「レッドブル」とのタッグが発表された時と比べて、「アストンマーティン?強いのそれ?」という反応が見られました。しかしチームの歴史と最近の「ものすごい急成長」を知るファンは、興奮を隠せない状況となっています。