『Apple Watch SE(第二世代)』。腕時計との“競合問題”を乗り越え、なぜまたアップルウォッチを買ったのか

先日、アップルウォッチを買った。
発売は昨年秋のものだし、最先端機能搭載のハイスペック機種でもないので、声高にドヤることではないが。買ったのは『Apple Watch SE(第二世代)』44mmケースのセルラーモデルである。

僕はガジェット好きの新しい物好きなので、アップルウォッチを手にするのもこれが最初ではない。
○■8年前に買った初代アップルウォッチは、半年も使わずに手放してしまった

2015年4月、発売と同時に初代アップルウォッチを購入しているのだ。
勇んで買った8年前の初代アップルウォッチはその後どうしたのかというと、実は半年も使わずに手放してしまった。
もちろん新奇性のあるガジェットだったので手にした当初は嬉しかったのだが、すぐに不満が募り、我が手元から早々に放追してしまったのだ。

不満点はいろいろあった。
でも、すでに過去のものとなっている製品のことを、今さら思い出してとやかく書き連ねても建設的ではないのでやめておこう。

僕が当時、アップルウォッチに対して感じた最大のデメリットは、ズバリ、“他の腕時計が使えなくなる”ということだった。
僕は昔から腕時計が好きで、機械式時計からチープカシオまでいくつも所有し、取っ替え引っ替えつけることを喜びとしていた。

一方、アップルウォッチだけではなくスマートウォッチ全般に言えるのは、身体のバイタルサインを含むライフログを取得することや、各種着信通知を随時受けることが大きな目的であるため、基本的に毎日毎日、充電中以外は常に装着していてこそ、その恩恵を味わえるということ。
だから必然的に、アップルウォッチを買うと同時に他の腕時計とはサヨナラしなければならない。

もちろんそのことは買う前に織り込み済みだったはずなのだが、初代アップルウォッチは僕にとって、他の腕時計をすっかり忘れさせてしまうほど魅力的なものではなかった。

は?

じゃあ、お前はなぜまた新しくアップルウォッチを買い直したのかと、訝しく思うだろう。
そう思われて当然だ。

デジタルの世界は日進月歩なので、8年前の初代と比べて現在のアップルウォッチが、機能的に大きく違うことは言うまでもない。
初代アップルウォッチにはできなかったのに、現在のアップルウォッチにできることは数多い。

だけど、アップルウォッチ(および他のスマートウォッチ)がいくら進化しても、僕が初代から感じていた“他の腕時計との競合”という最大の問題を解決できてはいない。
そしておそらく、これからさらに進化しても、未来永劫クリアできる問題ではないのだ。
○■活動量計は使いたくて、Xiaomiのリストバンドに鞍替えした数年間

初代アップルウォッチを使っていた頃、僕はまだ40代半ばだったが、その後アラフィフに突入。
成人病という言葉もいよいよ身近に感じるようになってきて、健康のためにきちんと体を動かすとともに、身体の状態を見える化して把握しておきたいと思うようになった。
そのための手っ取り早い手段はやはり、腕に活動量計を常時装着しておくことだ。

でも腕時計と共存不可能なアップルウォッチを再び買う気にはなれなかった。
そこで僕が目を向けたのが、リストバンド型の活動量計だった。
中国のXiomi(シャオミ)というメーカーの活動量計Mi Bandが、非常にお手頃価格なのに各種機能が充実、しかもバッテリーの持ちが大変長く、コスパ抜群で人気も高いことを知った。
そしてMi Bandを買った結果、なかなか気に入り、その後3代ほど使い続けることになった(呼び名は『Mi Band』から『Mi Smart Band』、『Smart Band』へと変遷したが、ややこしいのでMi Bandと呼びます)。

Mi Bandはスリムかつ軽量なので、他の腕時計と併用することもできた。
左腕に腕時計と重ねづけをしてもいいし、左には腕時計、右にはMi Bandという両刀使いをしても、そこまで大きな違和感はなかった。

だが、なんだかそれも次第にアホらしくなってきた。
Mi Bandにも時計機能はついているので、“ダブル腕時計”という非常に意味のない装備をしているように思えてしまうのだ。
じゃあ、どちらかに絞ろうと考えた結果、いつしか僕は普通の腕時計をあまりしなくなり、Mi Bandだけで生活するようになった。
すると…。そうなんです。今度はまたアップルウォッチが恋しくなってきたのです。
これはもうガジェット好きの性(さが)なので、一生こうした無限地獄から抜け出せないのだ。

基本的に活動量計メインであるMi Bandは、メール受信をはじめ多機能ではあるものの、やはりフルスペックのスマートウォッチと比べると、できることが少ない。
それに、腕にスリムなMi Bandだけをはめて生きていると、なんだか少し心許なく、物足りない感じがしていたのだ。
○■再びアップルウォッチユーザーに復帰してみたら、前とはだいぶ違っていた

そんなわけで購入した『Apple Watch SE(第二世代)』を、僕は現在フル活用している。
店頭で購入する際、最新の基軸商品である『Apple Watch Series 8』及びハイエンドな『Apple Watch Ultra』と迷った末、廉価版のSEにしたのは、初代アップルウォッチのことが頭をよぎり、「またすぐに嫌になって手放すかもしれないから、とりあえずコスパ重視でいこう」と考えたからだ。

しかし使い始めて約1カ月が経過した現在、今回のアップルウォッチを手放そうという気持ちはまったく起きていない。
それどころか、毎週のように新しいアプリを入れては試し、外見もカスタムしてどんどん愛着が増している。

機能についてはキリがないのでなるべくシンプルに書くが、特にどんなシチュエーションで最新アップルウォッチの良さを実感しているかというと、PayPayで買い物をするとき、ワンマイルの外出でラジオや音楽を聴くとき、そして詳細な睡眠ログをとるときだ。

アップルウォッチは利用者が多いので、サードパーティーのカスタムアイテムが充実しているのも嬉しい。
僕は蒸れやすいシリコン製の純正バンドは嫌いなので、買ってすぐにバンドをチェンジ。
普通の腕時計でも愛用している、ナイロン製のNATOベルトにした。

でも汗を吸うナイロンベルトは、つけっぱなしにするアップルウォッチでは、夏場は特に不潔なので、洗い替えが必要。
そこでパラコードを編んだゴツめのベルトを買い足した。

これに替えてみると、ベルト自体は無骨でかっこいいのだが、アップルウォッチ本体が貧弱に見えてバランスが悪い。
そこでさらに、本体を衝撃から守る用途のバンパーを追加で買ってみた。
このパラコード編みバンドとバンパーをつけると、アップルウォッチの存在感はグッと増し、もともとゴツい腕時計が好きだった僕にとっては、なかなか好みの雰囲気に仕上がった。

しばらくはNATOベルトとパラコード編みベルトを付け替えながら使っていこうと思っている。

アップルウォッチはフェイスのカスタムも容易だから、ベルトの色や雰囲気に合わせて、デザインを変化させると楽しい。
無個性だからアップルウォッチは嫌だと思っている人もいるようだが、最近は本当にたくさんのアクセサリーがリリースされているので、楽しみ方は無限大に感じる。

これほど入れ込んでいても、アップルウォッチはガジェットなので、数年も経つと機能的に世代遅れとなる。
そこが、一生物の機械式腕時計とは根本的に違うところであり、またその気楽さが良いところだったりもするのだろう。

アップルウォッチにしたが最後、もう普通の腕時計とは一生サヨナラと、深刻に考えることはないのだ。
何年後かの買い替えタイミングで、もしもアップルウォッチ熱が冷めていなければその時点での最新機種に乗り換えればいいし、飽きていたら大事に保管しておいた腕時計に戻せばいい。
そうやって軽く楽しむのが良いようです。

文・写真/佐藤誠二朗

佐藤誠二朗 さとうせいじろう 編集者/ライター、コラムニスト。1969年東京生まれ。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わり、2000~2009年は「smart」編集長。カルチャー、ファッションを中心にしながら、アウトドア、デュアルライフ、時事、エンタメ、旅行、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動中。著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』(集英社 2018)、『日本懐かしスニーカー大全』(辰巳出版 2020)、『オフィシャル・サブカルオヤジ・ハンドブック』(集英社 2021)。ほか編著書多数。 この著者の記事一覧はこちら