BATジャパンは、新デバイス発表会を開催。同社が展開する加熱式たばこ「glo(グロー)」ブランドの新スタンダードモデルとなる「glo HYPER(グロー・ハイパー)」および、リニューアルされたglo用たばこスティック「ラッキー・ストライク」9銘柄を発表した。
新デバイス発表会には、BATジャパン 社長のエマ・ディーン氏、BAT グローバル・ヘッド・オブ・加熱式プロダクトデザインのジョナソン・リスター氏、BAT グローバル・ヘッド・オブ・加熱式インサイト&フォーサイトのマーク・ローム氏が登壇した。
より良い明日の創造をスモークレスな世界の構築を通じて実現する」という企業パーパスを掲げ、スモークレスな代替品の提供を進めている同社。冒頭、ディーン氏が、BATのグローバルにおけるグループ戦略を解説した。
たばこの有害性の多くは、ニコチンではなく燃焼によるものであり、「成人の喫煙者には、非燃焼型の製品で喫煙を楽しんでいただくことによって、リスクを軽減する可能性を生むことができる」との見解から、非燃焼式製品の売上比率向上を目指すBAT。2030年までにBATの非燃焼式製品のユーザーを5,000万人にし、2035年には売上の半分を非燃焼式製品にするとの目標を掲げているが、実際、2024年上半期時点で、ユーザー数は2,640万人、売上比率は17.9%に達しているという。
世界では「たばこハームリダクション」として、たばこによるネガティブなインパクトを最小化する動きが進んでおり、スウェーデンでは嗅ぎたばこ「スヌース」の自由化を段階的に進めることで、紙巻たばこの喫煙率が5.6%とかなり低くなっている。また、イギリスではベイプ製品を禁煙ツールとして推奨することによって、紙巻たばこの喫煙率を12.2%と低減。こうした動きに対してBATは、科学的データでも有効と示されているような代替製品を提供し、ステークホルダーとのやり取りを続けることによって、たばこ害のリスクを軽減する可能性を追求している。
一方、日本市場では、日本のたばこ市場の40%以上が加熱式たばことなっており、2025年には紙巻たばこを上回ることが見込まれている。BATでは、紙巻たばこの代替品をマルチカテゴリーで展開しており、2016年の加熱式たばこ「glo」を皮切りに、2020年にはオーラルたばこ「VELO」、2023年にはベイプ製品の「VUSE」を投入。BATが展開する非燃焼系製品3カテゴリすべてが日本市場に投入されることになった。
昨年12月にプレミアムフラグシップとしてローンチした「glo HYPER pro」についても高い評価を得ているが、急成長する日本の加熱式たばこ市場におけるさらなる進化のために、洗練されたパープルとエレガントなピンクのツートンカラーが華やかな新カラー「パープルサファイア」を投入。さらに、たばこスティックにもプレミアムクオリティのブレンドで2つのSKUを提供するのに加えて、クリーン体験を向上させる「StickSeal(スティックシール)テクノロジー」を「neo」ブランドに採用。日本市場においてはクリーン、衛生といった観点が非常に重要であるというディーン氏は、「衛生に配慮した体験をデバイスとともに提供したい」と強調した。
今回、新たに投入される新「glo HYPER」は、「最新の現代的なお客様を念頭に、シンプルで満足の行く体験を提供したい」という、gloのデザイン責任者であるジョナソン・リスター氏。旗艦製品となる「glo HYPER pro」の最新テクノロジーを搭載しており、HEATBOOST(ヒートブースト)テクノロジーで300度の加熱を提供。直感的なLEDボタンによって、バッテリー残量や加熱時間などデバイスの使用状況を確認できるほか、TASET SELECT(テイスト・セレクト)ダイアルによって、スタンダードモードとブーストモードの2つの加熱モードを選択できる。
新「glo HYPER」は、「glo HYPER pro」と同様、スタンダードモードの加熱時間が20秒となっており、「glo HYPER Air」から10秒短縮。さらに、初期の温度を高めることで味わいを増幅し、即時の味覚的満足を実現する。またセッションの長さも4分30秒となっており、セッション後半においても安定した満足感を提供できるという。ブーストモードにおいても、立ち上がり時間が15秒と、「Air」に比べて5秒短縮。最高加熱温度も「Air」の265度から300度と35度アップしているので、センションを通じて安定した味わいを実現するという。
今後、新「glo HYPER」と「glo HYPER pro」は、HEATBOOSTテクノロジーを搭載した新glo HYPERシリーズとして並行展開。「どちらが良いというものではなく、選択肢を提供することが非常に大事」というリスター氏は、「より多くの方にgloの最高の体験を提供していくことを目指している」とした。
新たに「ラッキー・ストライク」ブランドに提供される「StickSealテクノロジー」については、加熱式たばこ市場における世界の消費者インサイト分析や市場予測を統括するマーク・ローム氏が紹介する。
「StickSealテクノロジー」は、たばこスティックの先端をシーリングすることで、たばこ葉のカスがデバイス内に落ちることを防ぐことで、掃除の手間を省くというもの。「ラッキー・ストライク」のクラシックなたばこらしいフレーバーを味わいながらも、掃除の煩わしさから解放される。
「日本の消費者からのインプットは、我々がgloのイノベーションを展開する上でも非常に重要」というローム氏。グローバルのトレンドは、シンプルかつスマートなプロダクトを求めるが、日本は特にきれいさなど衛生面も大事にしており、他の国と比較しても1.7倍ほど高くなっていることが、「StickSealテクノロジー」がまず日本市場で提供される大きな理由となっている。
「スティックの先端をシーリングすることで掃除の頻度を低減。味わいの満足度に加えて、掃除の煩わしさのない素晴らしい体験が提供できる」と胸を張るローム氏。「最大の市場である日本の皆様の声には常に耳を傾け続け、皆さんからヒントを得たイノベーションを投入し続ける」と約束した。
○■加熱式たばこデバイスの開発に与える日本市場の影響
発表会の後、あらためて新デバイスのポイントや日本市場の影響などを伺った。
「日本の皆様から学んだことを反映していくことが非常に大事」とあらためて強調するディーン氏。「日本の皆様に光るもの、響くものを作れば、グローバルでも成功できるという確信を持っている」と続ける。
それだけに、「日本の消費者が本当に求めていることを理解するのはすごく難しい」と、日本市場の難しさも痛感。その中で、間違いなく日本市場が求めているものが「衛生的なデバイス」であり、さらにフレーバーをいかに強化できるかが重要との見解を明かした。「もっと独自のフレーバーが日本市場にとって大事になっており、ベリーだけでなく、いろいろ新しい味を体験したいという方が増えてきている」という現状に対して、「それではどういったフレーバーをお届けする必要があるか。それがとても難しい課題であり、これから越えていくべき挑戦だと思う」と今後の展望を明かす。
新たなフレーバーの開発については、綿密な市場調査を行い、マーケットのセグメント分けを行っているというローム氏。「味の強いもの、弱いもの、たばこっぽいもの、たばこっぽさのないもの、様々なフレーバーを求める声があり、そのセグメンテーションが一番大事」だと話す。たばこ本来のテイストと、フレーバーのテイストのバランスを取りながら、微調整を重ねることで、新たなフレーバーを作り出している。ただし、長年たばこを作り続けていただけに、“たばこっぽくないフレーバー”というのは非常に難しいという。
ローム氏は、グローバルでは紙巻たばこにもフレーバーを求める市場があることから、その経験も活かしつつ、試行錯誤を繰り返し、「自分たち自身がとどまらないで進化し続けることが一番大事」との見解を示した。
「StickSealテクノロジー」についてローム氏は、“エスノグラフィースタディ”、すなわち行動様式の観察から生まれたものだという。「喫煙時だけでなく、その前後で何をやっているかも観察していくと、デバイスのクリーニングに、煩わしさやストレスを感じていることがわかります。これはたばこのデバイスに限らず、洗浄や掃除は面倒なこと」と話す。その改善策として、たばこスティックの先端をシーリングするという発想が生み出された。
たばこの先端をシーリングするという単純な発想でありながらも、実現するためにはいくつかのハードルを越える必要があった。まず第一のハードルが“製造ライン”。すでに出来上がっているラインを変更するのはかなり大変だったと振り返る。さらに、シーリングすることによって、満足度を損なってはいけないというハードル。「喫煙の体験を1ミリも損なうことなく、煩わしさを取り除く。どちらも妥協せずに実現する」ことこそが肝であるとローム氏は強調する。
一方、デバイスについて、「安定した味わいを提供できるようなパフォーマンスが重要ですが、皆さんにとって意味のあるイノベーションをもたらしていくことは難しく、やりがいのある部分」というディーン氏。
新しいイノベーション、材質、マーケット状況によって価格帯は決まってくるが、たくさんの人の手に届けるためには、手頃な価格の製品をマーケットに提供することが重要であり、なおかつ「価格が下がっても、品質を保ったまま提供することが大事」と付け加える。
「glo」デバイスのデザインは、「素晴らしいデザインは、素晴らしい体験ができる」という大前提から、複雑さをなくし、シンプルに使えることが非常に重要なポイントだと指摘するリスター氏。そしてそれは外見だけでなく、内部構造も含めた、こだわりのあるデザインが重要で、そのうえで独自性のあるものが大切であると続ける。
今後のデバイス展開について「体験がシンプルである必要がある」というローム氏。そして、「明日がどうなるかはなかなか想像できないので、私達は常に様々なチャンスに目を光らせている」と、行動様式を観察することの重要性を改めて強調。「テクノロジーはもちろん、サイズ感も吸い心地も重要であり、まだまだ改善の余地がある」と続ける。イノベーションは、お客様にとって意味のあるものを提供していかないといけない」との決意を示すと、リスター氏も「満足することはなく、常に改善、改良を考えています」と同意。ただし、「新glo HYPERシリーズ」については、「方向性としては合っていると思いますし、重要なステップを踏んでいる」との評価を与えた。
一方、「これまでの歴史を踏まえても、新glo HYPERシリーズはベストなデバイスだと思う」と高く評価するディーン氏だが、登場からおよそ10年で加熱式たばこが40%のシェアを獲得した日本市場のスピード感を警戒。それだけに「加熱式の製品開発においては、日本の消費者の皆さんが常に中心になっている」と改めて強調。「日本の喫煙者の皆さんに愛してもらえるようなものを作れたら、世界中で愛される証になるとチームのみんなにも言っています。まずは皆さんの心をつかみ、皆さんが求めるものを提供していきたい」と締めくくった。
新「glo HYPER」は、8月6日の発売予定で、価格は2,480円。カラーバリエーションは、グラファイト・ブラック、マラカイト・ティール、ローズ・ゴールドの3色が用意される。なお、「StickSealテクノロジー」を採用した「ラッキー・ストライク」9銘柄も同じ8月6日の発売予定で、価格は430円となっている。